【APH】無題ドキュメントⅢ
自分の失われた身体を取り戻さなければならない。まずはそこからだ。プルシャンブルーの軍服を身に纏い、颯爽と黒馬に跨ったプロイセンを見やり、子どもは眩しげに眼を細めた。
「無事で」
「おう。留守番、よろしくな」
手綱を取り、待たせていた騎兵隊の先陣に立ち、凱旋門をプロイセンは駆けてゆく。それを子どもは見送った。
第六次対仏同盟軍はナポレン率いるフランス軍を破り、パリに入城。
ナポレオンは捕らえられ、エルデ島追放される…。戦争終結後のヨーロッパの秩序再建と領土分割を目的とした会議は各国の利害が衝突して数ヶ月を経ても遅々として進行せず、「会議は踊る、されど進まず」と後に評されたウイーン会議最中、エルバ島に流されたナポレオンがパリに舞い戻り、帝位に着いた。危機感を抱いた各国は速やかに妥協し、イギリス・ロシア・オーストリア・スウェーデン・オランダ・ライン同盟・プロイセンで第七次対仏同盟を結成した。
同盟結成後、プロイセンは軍を、リニーへと率いた。
「…往生際の悪い」
プロイセンは煙る戦場に目を眇める。しかし、勢いづいたナポレオン軍に戦況は劣勢に立たされ、已む無くプロイセンは軍を引き、ナポレオンの別働隊の追撃を交わしつつ、ラ・ベル・アリアンスでナポレオン率いる軍と開戦しているイギリス・オランダ軍の来援へ急ぐ。別働隊とやり合うよりはナポレオン本隊を叩いた方が打撃を与えられるし、別働隊を潰すことに浪費する兵力はない。横槍が入らなければ合流する予定だったのだ。降りしきる雨の中、プロイセンは兵を叱咤し休む間もなく行軍を続け、戦場に到着する。
前夜からの雨でフランス軍は進軍を止めている。ウーグモンの城館に籠もったイギリスはまだ何とか持ちこたえているようだ。プロイセンはナポレオン軍右翼を撃破すべく、丘を下る。
作品名:【APH】無題ドキュメントⅢ 作家名:冬故