【APH】無題ドキュメントⅢ
イギリスの持ち堪えていた中央の前哨拠点ラ・エイ・サントが陥落。イギリス軍にとどめを刺すべくナポレオンは、最後の切り札とも言うべき老親衛隊の投入を命じる。しかし、この老親衛隊の攻撃は、イギリス近衛部隊の激しい射撃の前に撃退される。無敵を謳われた老親衛隊の敗北を目の当たりにしたフランス軍部隊の士気は著しく低下。プロイセン軍が右翼を撃破し、ナポレオン軍の側面へ猛攻をかけた。これに呼応してイギリス軍も反撃し、フランス軍は全面的な潰走に移る。最後まで戦場に残った老親衛隊は味方の退却を勇敢に援護したが、最終的には包囲され、降伏勧告を蹴ったために多くが壮絶な戦死を遂げた。プロイセン軍参謀長は強行軍と会戦で疲弊した部隊を叱咤して夜通しの追撃を行い、フランス軍を完全に崩壊させた。
「…終わったな」
「…あぁ。…疲れたぜ」
戦場となった平野を見渡し、プロイセンとイギリスは息を吐く。まだ逃げたナポレオンを追い、追撃に出ている隊を除き、他の兵は負傷した者の救助や死者の遺体の収容にと忙しく、動いていた。
「…俺もだ」
ぽつりと呟き、イギリスは気の張り詰めた戦況より開放され、疲れの残る澱んだ目を向け、壁へと凭れた。
「…お前、来んの遅ぇんだよ。後少し遅かったら思い切り、ヤバかったじゃねぇか」
「うるせー。ナポ公が別働隊用意してるなんて思わなかったんだよ。お陰で追撃振り切るのに時間掛かったんだ。…ったく、やり方があのヘタレフランスの上司だとはマジで思えないぜ」
「あー、それは言えるな。あそこの上司は今まであんなに軍略に長けた奴はいなかったかんな」
長いことフランスとは海を挟み対立してきたイギリスは吐き捨てるようにそう言い、溜息を吐いた。
「…酒が飲みたい」
「だな。浴びるほど、ビール飲みてー」
「俺は浴びるほど、スコッチが飲みたい。…っーか、飲む。フランスのクソ野郎をやっつけた祝杯を上げるぞ。お前も付き合えよ。プロイセン」
ニヤリと笑った元ヤン海賊紳士にプロイセンは溜息を返す。
「気が向いたらな」
こうして、ラ・ベル・アリアンスの戦いで、フランス革命戦争から二十年に及ぶ戦争は終結を迎えた。
ナポレオンは再び、流罪となり、フランスはルイ18世が国王に復位。第二次パリ条約の締結。その際、イギリス・オーストリア・ロシア・プロイセンの間で四国同盟(神聖同盟)が結成された。
作品名:【APH】無題ドキュメントⅢ 作家名:冬故