【APH】無題ドキュメントⅢ
漸くの平和を手に入れ、プロイセンはベルリンへと戻った。…が、休む暇もなく忙しい。
「あー、嫌だ嫌だ!」
プロイセンの目の下に出来た隈は黒々とし、充血した目は更に赤い。身体に縦横に巻かれた包帯に血が滲むことが無くなって来ただけマシかと思うことにし、未だ痛む身体を酷使し、終わりの見えない仕事に励む。
正統主義を基に、フランス革命以前の状態を復活させ、大国の勢力均衡を図る。神聖同盟、四国同盟らの列強を中心に、体制を維持するために自由主義・国民主義運動を抑圧し、各国の協調、国家間の諸問題の解決に外交努力する。
ウィーン議定書に基づき、ナポレオン主体のライン同盟の解体やら、組まれた四国同盟の調印やら、議定書に基づきオーストリアと協調体制をとるべく、オーストリアを盟主としたドイツ連邦発足に向け、プロイセンは奔走する日々が続いていた。
しかし、あの腐れ坊ちゃんと連邦だ?…ハン、冗談じゃねぇ!!
開戦しては、降伏し和約を結び、殆ど対仏同盟においてお世辞にも役に立ったとは言えない、寧ろ足を引っ張ったと言ってもいいオーストリアを連邦の盟主とすることになったのだが、オーストリアが大きな顔をするのが目に見えて、プロイセンの気に食わない。しかし、上司が決めることに口出し出きるはずもない。
「…まあ、いいさ。俺んところにはルッツがいるしな。坊ちゃんが大きな顔出来んのも。今のウチだぜ。ケセセ!」
そう思わなければ国などやっていけない。プロイセンは空疎に笑い、書斎のテーブルに山積みとなった書類の束を引き寄せ、目を通していく。文句を言おうにもどうにもならないし、仕事は増えるばかりだ。なら、無心に目の前のものを片付けるに限る。書類に次から次へと目を通し、サインを書き殴る作業を繰り返していると、控えめにドアがノックされる。その音にまた書類かと赤い目を向け、入れと怒鳴るとドアがそろりと伺うように開いた。
「…兄さん?」
ドアを開いたのは、ベルリンで出会った国の子ども。相変わらず天使のように可愛い。プロイセンは尖っていた心が緩むのを感じ、羽根ペンを投げると、両腕を広げた。
「ルッツ、久しぶりだな。こっちに来い」
そう言ってやれば、迷うことなく子どもはたたっとプロイセンの元まで駆け寄って来ると、遠慮を見せつつも嬉しそうにプロイセンに抱きついてきた。
作品名:【APH】無題ドキュメントⅢ 作家名:冬故