風と風鈴
銀「俺、さ。………先生を助けられなかったあの日から、あいつらの顔を上手く見れねぇんだ。戦ってるときは平気なんだけど、こうやって生活してるときはどうも駄目なんだ」
辰「それは、どうしてじゃ?」
銀「最初は、先生を救えなかった罪悪感なだけだと思った。けど、日が経つにつれてどんどん怖くなってきたんだ。いつかお前らまで失うんじゃねぇかって…。俺のせいで、誰かを死なせるんじゃないかって」
辰「銀時…」
銀「でもそんな事言えねぇし、あいつらは今まで通り…いや、それ以上に俺と接してくるし、だから最近は避けるようになっちまって」
震わせ、次第に独り言から悲痛な叫びへと変わる
銀「んな事考えてたら、やっぱり俺は独りで戦ってる方がいいんじゃねぇかとか、大事な奴ほど近くに居ちゃいけねぇんじゃねえかって思って…っ」
辰「……っ」
銀「たぶん俺、次誰かを失ったら……耐えられねぇ…っ。離れた方が良いってわかってるのに、お前らの傍から離れられねぇんだ……」
ポタポタと落ちてくる雫が、抱きしめている辰馬の着物を濡らしていく
銀「俺は……もう誰も失いたくねぇ……っ」
辰「銀時…」
銀「…いま、俺の顔見るなよ……頼むから…」
辰「…大丈夫じゃよ」
あるれ出る涙が止まるまで銀時をひたすら抱きしめていた…―――。
――――――
―――
銀時が落ち着きを取り戻したころ、陽は傾き始めていた。
あいも変わらず”ちりん、ちりん”と綺麗な音を響かせている。
銀「なんか……茶飲みたくなってきたな…」
辰「ならわしが淹れて…」
桂「茶ならここにある」
高「ついでに菓子もな」
えっ と振り返ると少し離れたところにお茶を持った桂と、銀時の好きそうな甘い和菓子を持っている高杉の姿があった。
辰「おまんら…いつからそこに」
桂「たった今だ」
言いながら茶と菓子を床に置き、近くに座る
高「おい、銀時」
銀「っ…、なに?」
ふと銀時が顔を上げるとそこには鼻や頬に白い粉が付いている高杉の仏頂面があった…
銀「……ぷ……っ、あはははは!なんだその顔…!」
辰「こりゃ…まっことかわええ顔しとるのお…っ、あははは!!」
高「…なんで俺は笑われてんだ。…キレていいのか?」
桂「これを見てみろ」
何故か懐から鏡を出してきた
高「なんだ鏡なんか出し………!?!?」
桂「お前の顔は見事に粉まみれだ。ざまあみろ。ハッハッハ」
高「てめぇヅラ!!何でさっき言わなかったんだ!!」
桂「面白いからに決まっているだろう」
高「意味わからねぇ…!」
桂「現に銀時も笑っているではないか」
笑いすぎて涙が出ている銀時と辰馬の姿を見てガコーーーンと辰馬の頭を殴った
辰「いっ………!?なんでわしだけ!?」
高「むかついたから。ついでに言うと銀時にベタベタしてるのも気に入らねぇ今すぐ俺と代われ」
辰「い・や・じゃ」
見せつけるようにギュッと抱きしめなおす
銀「……あ、あのさ、その菓子食ってもいいのか?」
桂「ああもちろんだ。お前のために作って来たんだからな」
銀「…作った?」
辰「おんしらが…か?」
桂「まあ主に高杉が、だがな」
高「……悪いかよ」
辰「じゃからおまん、顔が粉まみれに…」
銀「なんだよ…それ。普通に嬉しいんだけど…」
高「…美味いかどうかは分からねえが、とりあえず食え」
桂「味は大丈夫だろ。あれだけ味見を…」
高「お前は余計な事を言うな」
銀「んじゃ遠慮なく…」
パクッと手に取った団子を食べてみるとこれがまたすごく美味しい…
銀「これ…本当にお前らが作ったのか…!?すっげぇ美味い…!」
桂「そうだろうそうだろう。何せ高杉が頑張ったからな」
高「お前も一緒に作ったろ」
辰「こりゃあ…ほんに美味いぜよ」
銀「な!?美味いだろ!…なんつーか…俺好みの味…」
高「……そりゃ偶然だ。よかったな」
桂「ほら、どんどん食べるといい。こっちの草餅もなかなか…」
銀「あ…本当だ、美味い…!」
嬉しそうに食べながらみんなで茶を飲む。
何気ない日常だが、銀時にとっては何よりも仲間の優しさが嬉しかった。
しかし、辰馬だけはいつものような笑顔ではなかった……。