プロポーズ
馬村は就職してから一人暮らしをしていた。
301号室。
ピンポーン
「やっほー」
「おう。」
引き出物の赤飯を一緒につつきながら、
おじさんの結婚式がどうだったか
奥さんの一葉さんがどんな人か
いろいろ喋った。
「オマエよく食いながらしゃべれるな。」
「え?そう?…あ。」
「今日、先生に会ったよ。」
またいつものくせで、
あったことをペロッと喋ってしまった。
別に何もないので
隠すことじゃないけれど、
馬村が未だに先生のことを気にしてるのは
何となく知っている。
どうやったら気にならなくなるのか、
わたしにはわからない。
言わない方がよかったのか。
いやいや、隠すのも変だし。
「え……で?」
そうだよね、で?、だよね。
「うん。元気そうだったよ。」
「…それだけかよ。」
「うん。一言あいさつしただけだし。」
これはホントだ。
「しあわせなんだな。」
そう聞かれた。から、
「はい。」
と答えた。
本当に幸せなんだ。
馬村の手をとったのは間違いじゃなかった。
そう、ほんとに思う。
その気持ちも、何の気なしに言ってしまった。
すぐに、あ、恥ずかしいこと言ったな、
と思ったら、馬村も少し顔が赤くなってて、
余計に恥ずかしくなった。
「おじさん、すぐにハネムーンに行ったけど、
帰ってきたら一葉さんと住むだろうから、
私もアパート探さないとなぁ。」
残った赤飯をさらいながらつぶやくと、
馬村が「…なんで?」と聞いてきた。
「え?なんでって…おじゃまじゃん?私。」
「なんで別にアパート借りんだよ。」
「は?だってこっちで働いてるんだから
実家に帰れないじゃん。
…馬村もいるし。」
「だから。っ、なんでわかんねえんだよ。」
馬村の言ってることがよくわからない。
馬村は真っ赤な顔をしていた。
「ここに住めばいいだろ?」
……。
住む?
ここに?
「ええええええええっ?!」