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同調率99%の少女(4) - 鎮守府Aの物語

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 提督の運転する車が進むこと50〜60分ほど。早朝の道路は空いていてスムーズだったが、それでも海上自衛隊の施設のある地から鎮守府Aのところまではそれなりに距離があるため、そのくらいはかかっていた。
 鎮守府Aに着く頃には午前5時を回りそうな時間帯になっていた。
 安心しきって爆睡していた6人を提督はそうっと起こし、車から降りるよう促す。6人は寝ぼけまなこで車を降り、しばらくその場で頭をふらふらさせながら棒立ちしていた。

 提督は艤装をのせたまま車を工廠まで動かし、そこで荷降ろしした。提督とともに夜勤をしていた整備士の数人は提督が来たことに気づくとすぐに近寄り、提督から艦娘たちの艤装を受け取って運びだした。

「時雨の艤装はほぼ大破か。夕立のと村雨の艤装は魚雷発射管がない。五月雨のは…なんだこれ?内部に少し浸水してる? みなさん、詳しいチェックお願いできますか?」
 見た目でざっと判断した提督は整備士にその後のメンテナンスを任せることにした。整備士たちは「はい。」と快く返事をしてそれぞれの艤装を運び入れて工廠内に戻っていった。
 なお、工廠長たる人物の姿は、まだなかった。



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 先に鎮守府の本館の前まで戻ってきていた那珂たちは、やっと(物理的・精神的に)重荷がおりたことで安心している。

 が、のんびりしていられない二人がいる。那珂と五十鈴だ。提督が本館の前まで戻ってきたので二人は駆け寄って行って提督に話をした。

「提督。五月雨ちゃんたちは学校休めるって本当なの?」
「ん?あぁ、そうだよ。学生艦娘は出撃任務のあとは学校の授業半日免除か、泊まり込なら全休できるんだ。あ!お前たち……!」
 那珂たちに説明しながら、提督はハッと気づいた。

「そうよ。私達は普通の艦娘としているから休みなんてもらえないのよね?」と五十鈴も確認する。
「あちゃーそうか、そうだったわ。普通の艦娘にはそんな待遇ないんだよ。職業艦娘と学生艦娘はあるんだけどな。君たちも相当疲れているだろ? 休みたいよなぁ……」
 五十鈴の確認に提督は答えつつ、那珂と五十鈴の体調や気持ちを心配し始める。

 提督は那珂こと光主那美恵、五十鈴こと五十嵐凛花の着任の形態について簡単に説明した。
「普通の艦娘の人だと、職場や学校、親御さんに言う権利とか権限は俺にはないんだよ。だから本人が学校や職場に相談してやりくりしてもらうしかないんだ。」
 提督の権力ではどうにもならないことがわかると、五十鈴も那珂も休めるかもという一筋の希望はすぐに諦め、今日いかにして学校に行くかという思考に切り替える。

「まぁ、仕方ないです。私は普通に学校に行きます。一度家に帰りたいけど、電車が……」
「あたしは割と近いからいいけど、五十鈴ちゃんどうするの?」
「いやまぁ、普通に電車でしょ。」

 3人が思案してあれこれ話していると、その様子が気になったのか五月雨たちが話しかけてきた。
「あの……提督?もしかして那珂さんたちって。」
 五月雨が想像したことを口にすると、提督は正解とばかりに頷いた。五月雨は那珂と五十鈴のことを自分のことにように心配し始めた。

「お二人これからおうちに帰るにしても、まだ電車動いてないんじゃないですか?」
「そ〜そ〜。それが問題なんだよねぇ。」
 那珂は五月雨の心配に頷いて問題点をハッキリとさせた。

 
「とりあえずご両親にはそれぞれ連絡してくれ。始発がまだ始まっていないから途中まで俺が二人を運ぶよ。」
 提督は那珂と五十鈴にそう言うと、五月雨の方を向いて頼み事をした。
「五月雨たちは学校休みだから、まだ鎮守府にいられるだろ?」
「はい。」
「じゃあ俺二人を送ってくるから、その間4人で留守を頼む。」
「わかりました。お任せ下さい!」

 五月雨の元気な返事を聞いた提督は彼女らの喜ぶ補足をした。
「そうだ。待機室の冷蔵庫に全員分のジュースとお菓子とパンを買ってあるんだ。」

「えーー!?てーとくさん優しぃー!!大好き!!」
夕立は手をパタパタさせてはしゃいで喜びを全身で表した。隣にいた時雨は夕立をなだめて落ち着かせて提督に感謝の言葉を述べる。
「ありがとうございます提督。あとでいただきます。」

「喜んでもらえて何より。那珂と五十鈴の分のジュースを誰か取ってきてくれないか?二人はこれから帰るから、せめて飲み物だけでも、な?」
 時雨たち全員に向かってお願いをしつつ、手前にいた那珂と五十鈴に対しウィンクをした。

「あ、じゃあ私取ってきますぅ。」
 そう言って素早く本館に入って行ったのは村雨だ。

「提督は優しいね〜。これから帰るあたしたちにもくれるなんて。ありがと。」
「ありがとうございます、感謝するわ提督。」
 那珂はわざとらしく腕を組んでおどけながら最後は素の声質で感謝の言葉を伝える。五十鈴は提督の仕草と優しさに照れまくったのち、横髪をクルクルいじくりながら冷静を装いながら感謝を伝えた。

「まぁ、ホントは全員鎮守府で休憩して各自適当な時間に解散するものだとばかり思っていたんだけどな。那珂たちの事情まできちんと考慮できていなかった俺が悪いといえば悪いんだ。次このような出撃任務があるときはきちんと考えてあげるよ。」

「いやぁ、あたしたちも着任時の注意事項とか制度のことちゃんと見てなかったのが悪いんだし、提督のせいだけじゃないよ。もうあたしたちも気にしてないから、提督もあまり考えすぎないでね?」
「あぁ、そう言ってくれると助かるよ。」

 しばらくして那珂と五十鈴の分のジュースの缶を持って村雨が戻ってきた。村雨は那珂たち二人に缶を手渡し、別れの挨拶を交わした。

「気をつけて行ってきてくださいね。」
「うん、ありがとね村雨ちゃん。」

 そして提督と那珂、五十鈴は本館の玄関口から離れ、正門に向かって歩き出した。数m離れたところで提督は大きめの声で再び五月雨たち4人に念押しした。

「それじゃあ、留守を頼んだぞー!」

「はーい!いってら〜」
「わかりました。」
「お疲れ様でしたぁ。」
「3人ともお気をつけてー!」
 夕立、時雨、村雨、五月雨はそれぞれ返事をした。