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同調率99%の少女(4) - 鎮守府Aの物語

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--- 4 カミングアウト




 無事に家についた那美恵は、時間を見るとすでに6時を回る頃だった。事前に連絡を入れていたおかげか、那美恵の母は那美恵が念のためドアのチャイムを鳴らすとすぐに出てきて娘の顔をマジマジと見つめた。娘が仕事とはいえ朝帰りをするなどと、心配に心配を重ねた表情でもって那美恵を抱きしめた。

「お母さん〜あたしは大丈夫だから。心配しないでって言ったでしょぉ?」

 いくら国(の末端の機関)の管理が行き届いたとされる職場とはいえ、怪物と戦う艦娘になって、夜通しで戦っている娘を心配しない親など絶対にいない。前日に提督から連絡を受けた那美恵の両親も、しぶしぶながらも了承した一家のうちの一つなのだった。
 とはいえ那美恵の両親、特に父親はそれほど心配していなかった。
 那美恵の父は昔歴史に名を残しかけた偉大な母親に育てられた息子であり、母親の性格をしっかり遺伝して無駄に明るくお調子者、それでいて母親を超えるなんでも出来るまさに"出来る男"だ。社会に出て、子供ができて脂の乗った年代になった彼は、今や仕事も家族サービスもバリバリこなすダンディなおじさまを地で行く人物となっている。
 那美恵は偉大な祖母、明るくお調子者で何でもできる父親の影響を多大に受けて育った。お調子者で気楽な性格、何でもそつなくこなしてしまう才能の遺伝のため、母親の心配などぞどこ吹く風な態度でこれまでの17年間過ごしてきた。父親はそんな娘の性格や能力をわかっているがゆえ、無駄な心配をしないで那美恵を信じて自由にさせている。

 これまで那美恵の母親は心配事といっても、せいぜい学校の行事で遅くなったり、休日に地域のボランティアなどで遠出するときにするくらいであったが、娘が艦娘になってからのこの3ヶ月近く、今までとは比べ物にならないほどの質と量の心配をすることになった。今回の泊まりでの出撃任務で、母親の心配は最高潮に達したのである。
 とはいえ娘が頑として譲らずやろうとしている艦娘の仕事を無下に反対するほど子供の意志を尊重しないわけではない。むしろお国のために働いていることが将来安定した生活の構築につながるかもと密かに期待をかけている。決して娘である那美恵には明かさないでいるが。

 親の役目としてとりあえず口をすっぱくしてクドクドと心配を口にする母親に那美恵はハイハイと適当に聞き流しつつ、家に入りサッとシャワーを浴びてまだ少し早い時間のために一眠りすることにした。
 今更娘のやることに反対はしないが、今日び戦死するなどという一般人の生活からはありえない死に方をしないでほしい、それだけが心の底から常にする最大限の心配であった。それから女の子であるので大変なところに傷をつけて将来に影響を残さないでほしいとも。

 一方の那美恵は朝の僅かな時間ではあるがすでに寝息を立てていた。護衛艦内での眠り、提督の車の中での眠りとは比較にならないほどの安心した眠りであった。
 そのため、普段学校へ行く時間ギリギリになっても起きてこないことを心配した母親がたたき起こしに来てようやくうっすら目を覚ますくらいである。

 完全に安心しきって深い眠りについていたため母親からうるさく言われても半分くらい眠っている那美恵。朝ごはんをのんびり食べながら、時計を見ると、普段なら家を出てだいぶ経つくらいの時間になっていることにようやく焦りを感じ始めた。まだしていなかった登校の準備を慌ててして学校のかばんを持ち、ボタンを留めきってないブレザーを羽織って家を飛び出していった。

 那美恵の家からは、地元の駅より電車で2駅のところが学校である。