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同調率99%の少女(4) - 鎮守府Aの物語

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「会長、今日はギリギリの登校でしたね。どうしたんすか?」

 お昼休み、生徒会室でヘタっている那美恵を見て男女二人いる書記のうち、男子生徒が尋ねた。彼は教室の窓際から、走って登校してきた那美恵を見ていたのだ。
 彼は三戸基助、書記だ。軽い口ぶりと態度でひょうひょうとしたところがあるが、那美恵からの信頼は厚く、気を許す男子生徒の一人だ。

「うん。ちょっとね〜昨日から泊まりで艦娘の仕事でさ。今朝帰ってきたの。」
「え!?会長艦娘やってるんすか!?」
「そーだよ。」
「よくなれましたね……あれなれる人少ないって聞きますけど?」
 三戸が質問をした。

 世間一般的な認識はそうなのか、と那美恵は思った。実際艦娘の試験を受けに行くと、試験が難しいから競争率が高いというよりも、最終試験である艤装との同調のチェックで、波長が合わずに合格できない受験者がほとんどなために競争率が高いという結果となる。
 ただ、世間ではどのみち競争率が高い職業・仕事・イベント事と認識されているのだった。

 実情を事細かに話そうと思ったが、疲れていたのでその場では適当な返事だけして、那美恵は机の上でへたり続けた。
「……うん。まぁね〜。でも面白いよ〜。いろんな人と出会えるし、ストレス発散になるしいろいろ優待もらえるし。まぁ戦うのは大変だけどね……」
「ストレス発散になるっていってるわりには今の会長疲れてるじゃないっすかw」

 三戸の鋭いツッコミに那美恵は彼の肩を軽く叩き、少し甘えた感じでぐずって返す。
「う゛う〜!昨日今日は特別なの!正しい手順踏んどけばホントなら今日休めるはずだったのに〜!完全にあたしのミスだよぉ〜。 三戸くんあたしを癒やせよ〜!」
普段に輪をかけてボディタッチをしてくる生徒会長たる那美恵につっつかれてドギマギする三戸は反応に困りつつも、
「ははっ、触り返していいなら触っちゃいますけど?」
と言い返し、那美恵からの無言の自発的な拒絶を得た。

 那美恵はその後もう一人の書記、女子生徒に向かっても愚痴を漏らした。
「ねぇわこちゃんどー思う!?あたし今の生活続いたら過労死しちゃいますよ?」

「はぁ、そう言われましても……そうなんですかとしか……。」
 向かい側に座っているわこちゃんこと、もう一人の書記兼会計で女子生徒の毛内和子は前頭部につけた髪留めあたりの髪を撫でていじりしつつ、適当に相槌を打った。三戸と同じ書記の彼女は物静かな性格だが、仕事などやるべきことに関してはキビキビ動く少女だ。三戸と同じくらいに那美恵の信頼は厚い。

「それにしてもミスって言いますけど意外っすね。会長なら艦娘というのになっても完璧にバリバリ活躍して周りの人巻き込んで引っ張っていってるイメージありますけど。」
「あ、さりげなくひどいこと言われてる気がするー。三戸君から見てあたしってどういうイメージなの〜?」
「いやいや。会長はミスとは無縁な人なのに何かあったのかなっていう心配をしてまして……。」
 三戸は照れながら那美恵をフォローするかのように返す。

「あたしだってミスの一つや二つするよ〜。今回のはミスっていうよりも、あたしの努力が足りなかったからで……あ、となるとやっぱりミスでいいのかな?」
 那美恵の言い訳と自己問答をなんとなくただ眺めている書記の二人。那美恵は時折クネクネと身体をひねったりしかめっ面をするなどして、傍から見ると何を考えてやっているのかわかりづらいアクションを起こしている。三戸と和子も会長である那美恵を最初見た時は頭の弱い人か!?と思ったが、それはまったく的外れの感想であることをすぐ後に知った。
 二人は生徒会に入り、那美恵の巧みなまでの仕事っぷり・人さばきを目の当たりにして、一瞬で考えを改めてさらにそれを飛び越えて那美恵の性格や振る舞いにも心酔するようになった。あの性格や振る舞いも、慣れれば別段鼻につくわけでもなく、本気でイラッとするわけでもない。きっと天才であるがゆえの表裏一体の行動なのだろうとあきらめにも似た感覚を覚えたのだった。

「ホントに何かあったんですか?私達で良ければ伺いますよ?」
 と和子は心底心配そうに那美恵を見つめる。
「おぉ!?マジ〜?」
「完璧な会長が見るからに弱気を吐いていれば、どうしても気になります。」

 最初はあの会長のことだから、特に話半分で聞いていてもいいだろうと和子はなんとなく思っていたが、ガチでやるときと普段のおちゃらけのどちらなのか判別がつかなかっため、気になってきたのだった。
 それはもう一人の書記の三戸も同じ様子だった。
 二人が興味を向けてきたのでシメシメと思い、那美恵は話を持ちかけてみた。

「せっかく艦娘やってるってカミングアウトしたんだし、ちょっといいかな、みんな。放課後時間ある? 話したいことあるの。」
「俺は別にかまいませんよ。」
「私もです。どのみち生徒会室には来ますので。」
 那美恵の提案に快く承諾する三戸と和子。
「あとは副会長かぁ〜。ま、同じクラスだからあたしの口から言っておくよ。二人はじゃあちゃんと放課後、お願いね。」
「「わかりました。」」

 約束を取り付けると那美恵は再びぐったりとだらしなく机に突っ伏した。その様子をみた和子は無駄とわかってはいたが一応注意してみた。

「会長…そんなふうに机にビッタリ頬を当ててるとだらしないですよ。それから顔に跡ついちゃいますよ。」
 和子の心配は一応受け取りつつ、突っ伏したまま手をひらひらさせて適当な相槌を打った。