Einsamkeit
「手を離してもらえませんか、痛いですよ、ルート」
何を考えているのか、ルートはなかなかローデリヒの手を離そうとしない。窓から差し込む月の光で薄っすらと照らし出された室内で、ルートの頬に涙の跡がついているのが白く浮かび上がって見えた。
「ルート、あなた・・・泣いてたんですか」そっと指で涙の跡をぬぐってやる。
「・・・子供みたいですね」
ローデリヒの顔に思わず微笑みが浮かんだ。
「ただの夢ですよ、もうお休みなさい」
「・・・行くな」
握り締めた手の力が一瞬抜けたかと思ったら、またしっかりと握り直してきた。
きれいな薄いブルーの瞳が、じっとローデリヒの目を見つめている。
もうすでに酔いも醒めたのかとも見える真剣な眼差しだった。
見る間に薄いブルーの瞳にまた涙が溢れてきた。
「一人にしないでくれ・・・」と彼らしくもない、かすれた声でつぶやいた。
「私はフェリシアーノじゃありませんよ」
「分かってる・・・ローデリヒ」
こんな馬鹿なこと、ありえない。
私はフェリシアーノじゃない。何で・・・
でも・・・
「いいんですか?後悔しますよ、ルート」
返事はない。でもしっかりとローデリヒの腕を取った手も離さない。
またため息を一つついて、
ローデリヒは涙の跡にそっと口付けた。
「あなたがそういうのなら、私も遠慮しませんからね・・・覚悟なさい」
瞬きもせず、ルートの薄いブルーの瞳はローデリヒの紫水晶のような瞳をじっと見つめ返していた。
――本当にいいのですか?ローデリヒは再び心の中で問い掛けた。
後悔するのは・・・
作品名:Einsamkeit 作家名:maki