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不釣り合いな僕達 零

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八方斎は、庄左ヱ門の両手を包み込むように握り、膝を折って床にしゃがみ込んだ。

「おねがーい、ワシの悩みを聞いてー!

想定外の手の感触、想定外の八方斎の声音、そして想定外の台詞。
思わず目を開いて視線を前方の床…八方斎の顔がある方に向けるとインパクトの強い八方斎の顔についている二つの瞳が小動物のような円らな黒い眼で庄左ヱ門を見上げていた。

「……は?

聞き返すと八方斎はずいっと庄左ヱ門に顔を近付けて同じ台詞を繰り返した。

「庄左ヱ門くんに、ワシの悩みを聞いてほしいのー!

ばっと八方斎の手を振り払い、庄左ヱ門は声を荒げた。

「何言ってるんだ…!そんなこと…。
「わー!しーっ、しー!
「むぐ…!

手で口を塞がれたが、八方斎の口に人差し指を当てる仕草とその慌てぶりに拍子抜けする。

「外にいるドクタケ忍者には庄左ヱ門くんをドクたまに勧誘するつもりで連れてきたことになってるんだよ。それと関係ないことを大声で叫ばれるとワシが困るんだよー!

(ぼくは八方斎が困ろうが関係ないよー!

抵抗する気にもなれず、大人しくしているとそっと口から手が離れてまた手を握られた。

「庄左ヱ門くんはワシの話を聞くだけでいいの!このことはドクタケの誰にも内緒、忍術学園の誰にも内緒。ワシと庄左ヱ門くんだけの秘密。
「なんでまた…?
「大人にはいろいろあるんだよ…。ヒマそーな乱太郎、きり丸、しんべヱの頭の悪い三人組より頭が良くて頼りになる庄左ヱ門くんに聞いてもらいたくてね。
「はあ…。
「お願いだよ、ドクタケ忍者隊首領としてではなくて、一人の稗田八方斎の悩み相談として聞いてくれよぅー。
「そんなこと言われても…。

下手に出ているのか上から目線なのかよくわからない八方斎の態度に、庄左ヱ門は凛とした眉をハの字にして困り果てた。
だが、相手は一応忍者の頭。
どんな手を隠しているのかわからない。

「忍者は裏をかくものでしょ。油断させておいてぼくに何か…、
「しないしない!ぜぇーったいしない!この後も小屋からこっそり逃がしてあげるつもりだから!
「本当…?

疑いの目でじっと睨むと、八方斎は顔の前で手を合わせ祈るように頼み込む。
仕方ないという風にため息をつくと、庄左ヱ門は床に腰を下ろした。

「遅くなると家族が心配するから、少しだけだよ。
「あぁ…!ありがとう、庄左ヱ門くん!

その言葉を聞いた八方斎はぱーっと瞳を輝かせ、少年のようににこにこ笑って礼を言った。

とても面倒なことになってしまったと庄左ヱ門は思いながら、八方斎のドクタケの殿様への文句や忍者隊からの評価を気にしていることや他の城の忍者隊が出てきたことによる自身の人気の低下についてを適当に相槌を打ちつつ聞き流していた。

「はぁー…。すっきりしたー。
「もう終わり?
「うん、今日の分はもういいかな?
「今日の分!?
「あー、いやいや!何でもない、何でもない。

ぐーっと伸びをした八方斎を見てさっさと帰りたかった庄左ヱ門は、八方斎の言葉に耳を疑った。
こんなことが何度もあってはたまらない。

「これっきりだよ!当たり前じゃないか!
「わー!待ってくれ、庄左ヱ門くん…!声が大きいって…。
「ぼくは八方斎がどうなったって知らないし。今相談されたこと、ここで大声で叫んで外にいるドクタケ忍者に聞かせたってぼくには…、
「…庄左ヱ門くん。

急に声音が低くなった八方斎の様子に、庄左ヱ門は言葉を詰まらせた。

「あまり大人を甘く見るんじゃない。君がそう言うなら、ワシだって手段を変えるまでだ。本当にドクたまになるまでここに何日でも閉じ込めておくことだってできる。
「…っ。

八方斎の手が肩にかかり、庄左ヱ門は一瞬で恐怖に支配された。
涙を出すまいときゅっと唇を噛んでいると、

ふさっ…と

庄左ヱ門の体が八方斎の腕の中に収まった。
その腕の温もりに庄左ヱ門は何故か安心感を覚えた。

「怖がらせてごめんね。本当はそんなことしたくないから…。本当に、ワシが我慢できなくなった時、ちょっとの間でいいから、またこうして会ってほしい。

これは五車の術の何だろうかと、一瞬冷静に考えてしまった庄左ヱ門だったが、またため息をついて八方斎に答えた。

「ぼくなんかに、泣く子も黙るドクタケ忍者隊首領の相談役が、務まるなら…。
「……。ありがとう。

その感謝の言葉で八方斎は庄左ヱ門から離れた。
作品名:不釣り合いな僕達 零 作家名:KeI