伝えたい事
精神崩壊してしまう程、戦ったのだ。
カミーユは、精一杯出来る事をしたと言われても、もしあの時、百式の援護を出来ていれば、クワトロ大尉は戻ってきていたかもしれない。
そうすれば、こんな混沌とした状況にはなっていなかっただろう。
「俺が居なくても・・、アムロさんが居れば・・」
ハマーンとクワトロ大尉が直接戦う事はなかっただろうし、戦ったとしても、アムロの参戦で状況はかなり変わっていただろう。
みんな・・、エマさんも仲間達も、死ななかったかもしれない。
まだ若いのだ。
新しく何かを始めればいいと周囲から励まされるのだけれど、何かをするって、何をすればいいの?
何かが俺の中にはなく、空っぽでがらんどうで、振ってもカラカラという音すら出ないだろう程に、空虚な自分しか存在していない。
時間と体力が許す限り、住んでいる街中を泳ぐようにさまようだけの状態が続いていて、ファを心配させているのはわかっている。
わかっているけど逃げる様にさまよっている自分が情けなくて、
「ごめん・・ファ・・」
謝罪の言葉を呟いている。
気がつけばまた海まで来ていた。
どうして・・・俺は海に来てしまうのだろう。
青い色は懐かしい気持ちになるから好き・・なのだろうか。
自分が何を考えているのかも、正直分からない。
真っ赤な太陽が水平線に落ちていくのを見て、Mark-Ⅱで百式と地球へ落ちてきた時の事。
百式の金色に夕日が当たって綺麗だった事も思い出してしまう。
子供だったのだと・・思おうとして、いや・・・今もまだだ。
俺は子供でしかないのだ。
赤と金色の輝きが、だんだんと藍色に変わっていくのを眺めながら、気配を感じる。
暗く染まってゆく海を見下ろしながら、
「何故、宇宙に来てくれなかったのです?」
何もない空間に、俺から話しかける。
「何を言っても、言い訳にしかならない。何も・・君に、カミーユには言う事が出来ないよ」
砂浜を踏みしめる足音と高いどこか舌足らずに聞こえる声が答えてきた。
「言い訳なんか聞きたくないです。アムロさん」
それも良いわけだろうと考える俺に、
「そうだよね。それでも、謝りたかった。すまない。そして、君が返ってきてくれてよかったと思っているよ」
人影が近づいてきて、暖かい何かに頭を抱き込まれる。