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伝えたい事

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甘いヘレンヘレンと機械油の混じったアムロさんの匂いと体温に、どうしてだか安心と懐かしさ・・寂しさ、悲しさ・・辛かったと今まで押し込めてきた感情が溢れるように出てきて、涙が出てきた。
意識を取り戻して初めて子供みたいに俺は声をあげて号泣していたのだ。
俺は・・・苦しかった。
それを思い出したようだ。
アムロさんに抱かれて、アムロさんを責める事が出来て・・やっと・・辛かった事を認める事が出来た。
辛い事はたくさん・・海の水の様にある
姉のようだったエマさんの死を看取った時の事。
カツが死んだ時の憤り、フォウの後に出会った強化人間のロザミア、俺を兄と慕ってくれたのに救えなかった。
フォウ・・、俺の名前を良い名前だと好きだと言ってくれた子。
ロザミアは・・、俺の事をお兄ちゃんと呼んで、無邪気に慕ってくれた子だった。
フォウもロザミアも大人でしっかりした所があったのに、反面、不安定な精神と無邪気な純粋性を併せ持っていた。
強化人間の不安定さだったのだろう。
俺を助けてくれたのに、俺は何も、・・何も2人にしてやれずに死なせただけだ。
訳の分からない事を怒鳴りながら、獣の様に泣き叫び続けた俺の体をしっかり抱きしめ続け、背中を撫でてくれた手の温かさに、
「・・すみません・・」
我に返って、謝る。
アムロさんにも事情があったのに、それを知っている俺が責めてどうする。
「カミーユが辛い思いをしていたのは、俺達の所為だ。無理に我慢しなくてもいい」
がさついた掌が潮風と涙でべたべたする頬に触れてきた。
「無理はしていないです。アムロさんは宇宙(そら)に行くのでしょう? 俺ももう大丈夫、大人になりました。また戦えます。一緒に連れていってください」
ブライト艦長とアムロさんで、新しい連邦軍の組織、ロンドベルを立ち上げた事を知り、ずっと気持ちが落ち着かず言葉にして、初めて俺は何を望んでいたのか自覚した。
ファに守られて、優しい日々を過ごしていても、物足りなかったのか。
戦いたいわけではないけれど、何もせずに生きて行く事も無理だった。
「カミーユは戦いたいわけじゃないよね」
「はい」
「ロンドベルに入隊したいって事だよね」
「そうです」
「し・・・クワトロの事は、カミーユの責任じゃない。どうしようもなかった事だ」
見抜かれていたか、
「俺も連れていってください」
「駄目だ。君を連れてはいけない」
「どうして? クワトロ大尉は生きているのでしょう? クワトロ大尉を止める為に、アムロさんはロンドベルを立ち上げたのでしょう? 俺も一緒に・・・、大尉を助けられなかったのは、俺も同じです!」
こんなに長く目を合わせて話した事はなかった事を思い出した。
「ファはどうする」
ファ・・俺が、再び戦いに行くと知れば、彼女は泣くだろう。
共に行くにしても、置いてゆくにしても・・、どちらも俺のエゴに巻き込んでしまう。
ファは何も悪くはないのに、俺の所為でいつも悲しい思いをさせてしまう。

作品名:伝えたい事 作家名:かえで