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黄金の太陽THE LEGEND OF SOL 24

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「ふん、分身しようが関係ない、全て斬り裂いてくれる!」
 センチネルは横薙に剣を振るった。しかし空気を斬ったかのように手応えがない。
 シンの姿は全て虚像であった。
「っ!?」
 センチネルは不意に、背後から殺気を感じ、後ろを振り返った。そこには分身の本体であるシンが斬りかかろうとしていた。
 シンとセンチネルの刃がぶつかり合う。
「うーん、まあ、ギリギリ正解にしてやるか。防がれちまったし」
 シンは飛び退き、再びセンチネルに問を与える。
「こんどのはちょっと難しいぜ? 問題その二、オレはどこから現れるでしょう?」
 シンは地面を蹴り、砂煙を上げると後ろに下がっていった。
 上る砂は、完全にシンの姿を隠すほどではない。逃げていく姿が見えるが、シンの行動はまるで読めない。
 故に、砂煙に細工をしたのではないかと思い、センチネルは追いかけなかった。
 シンは少し離れた後、逆手持ちした剣を持ち直し、剣に衝撃波を宿して無数の突きを放った。
「連突刃・射式!」
 突きが放たれると同時に、風の矢がいくつもセンチネルに向かった。ヒナが使った時と違い、両手による突きであるため、撃ち出される風の針はとてもかわせるものではない。
『スクランブル・ビーム!』
 センチネルは光線のエナジーで迎え撃った。風の矢は超高熱の光線の前に消えていった。
「……残念、今の答えは不正解だ!」
「なにっ!?」
 シンは、前から来る攻撃に気を取られるセンチネルの後ろに縮地し、センチネルの背中に刃を浴びせ、さらに蹴りつけた。
「ぐうっ!」
 センチネルは蹴り飛ばされ、地面を転がりながらも、何とか体勢を立て直す。
「今の場合は、オレが砂煙を上げたときに追いかけるのが正解だったぜ。砂煙に何かあるんじゃないかって、深読みして追わなかったのが失敗だったな」
 シンは自らの意図した事、それに対する答えを告げた。センチネルはまさしく、シンの言う通りの思考をしていた。
「すごい……」
 ヒナは思わず呟いた。
「ヒナさん?」
 メアリィはヒナの顔を覗く。
「あのセンチネルが地面を転げるなんて。あたしにできなかった事をやすやすと……。ふふ……、全てが見える眼を持ちながら情けないわ。シン、眼力じゃああたしに劣るのに……」
 一体どのような修行をしてきたのか、シンの能力は格段に成長していた。一月前、変装しながらヒナに挑んできた時とは大違いであった。
「シン、見せてもらうわよ。あなたの本質だけを見抜くのではなく、それに対してどうするのかをすぐに編み出す能力をね……!」
 ヒナがシンの戦いぶりに胸踊らせる間にも、センチネルとの戦いは続いていた。
「さあ、忍の問題はまだまだ続くぜ? 次のは読みを外したら、死んじまうかもなあ!?」
 シンは攻めかかった。しかし、前の二度の攻め口とうって変わり、一切の小細工なしに一直線に駆けていた。
 深読みすると、先ほどのような手にはまる可能性がある。ならばここは動かず素直に迎え撃つ、それがセンチネルの答えであった。
「はあっ!」
 センチネルは大きく踏み出し、シンを斬りつける。しかし、刃は紙一重届かなかった。
「思いきったような攻めだが、まだ迷っていたな?」
 シンはセンチネルの頭に手を当て、頭上に逆立ちした。そして倒立からの前転を行い、背後へと身を翻すかと思いきや、両足をセンチネルの首に巻き付けた。
「ぐっ!?」
 シンの大腿部が、センチネルの頸動脈を絞めつける。
「よっ、と!」
 シンは脚での絞めつけを緩めることなく、上体で勢いをつけて後方に宙返りした。
 センチネルは首を引かれ、背中から地面へ強かに打ち付けられる。
「ぐはあっ!」
 センチネルは肺に残る空気を全て押し出された。そして次の瞬間、眼前に迫ってきたのはシンの刃であった。
 シンはセンチネルの首に足を絡めたまま、刃を突き立てた。センチネルは首をしっかりと固定され、刃をかわす術がなかった。
 シンの剣はセンチネルの鉄仮面中央にある宝珠を打った。しかし砕くまでには至らず、僅かであるがひびを入れる。
 センチネルは反撃に剣を突き出すが、シンは首を絞める足をほどき、回転してセンチネルから離れていった。
 脚による絞め技から解放されたセンチネルは起き上がるが、長く、そして強く頸動脈を絞められていたため、ひどい立ちくらみを感じた。視界はまだ暗黒である。
「もらったぁ!」
 いまだ暗闇に支配される視界の先から、シンが飛んでくるのが見えた。
「くそっ……!」
 センチネルは一矢報いるべく剣を振った。
 バキン、と何かが壊れる音が辺りに高く響く。
 壊れたものは二つ。一つはセンチネルの鉄仮面にある宝珠、もう一つは、宙を舞うにび色の髪留め。
 シンの艶めく黒い、腰にも届くほどの長髪が、彼の背中に広がった。
 センチネルの鉄仮面に付いていたエナジー封じの宝珠が割れたことにより、変化を妨害していた力がなくなり、シンの双刀は本来の姿になった。
 漆黒と白銀の刃のうち、右手の白銀がセンチネルの鉄仮面を破っていた。
 センチネルは剣を突きだした。シンは後ろへと下がり、間合いから外れる。
 センチネルも割れた鉄仮面を抑えつつ離れた。
「ふん、そんな妙な仮面を後生大事に抑えやがって、その下はとんでもないブサイクなのか?」
 シンは長い髪を掬いながら言い放った。
「とんでもない、俺にとってもこの仮面は邪魔きわまりないものだ。むしろ壊してくれたことに礼を言おう」
「はんっ! だったらとっとと邪魔な仮面取り払ってその素顔見せてみな!」
「いいだろう……」
 センチネルは僅かに形を保っていた鉄仮面を完全に破壊し、縦に壊れた仮面を投げ捨てた。
 鉄仮面の中からは丸まっていた銀髪が広がり、色の白い素肌が露となった。眼はヒナやシンと同系統のエメラルド色である。センチネルは目鼻立ち整い、見るからに美しい顔をしていた。
 ただ一つ、彼の美貌を台無しにしているものがあった。それは両方の目尻から頬にかけて伝わった、赤茶色の血の痕のようなものである。
「綺麗……」
 シンの後ろから彼を見ていた女二人は、センチネルの本当の容姿に思わず魅了されていた。目尻に伝う血痕さえ一つの化粧の種類かと思われるほどに、センチネルは見目麗しい美男だった。
「……ほう、あんな鉄仮面被ってるもんだからどんなブサイク顔が現れるかと思ったら、ずいぶん綺麗な顔してるじゃねえか。しかもその眼、やっぱり力通眼か、センチネル!」
「ふん、センチネル、か。デュラハンの枷の外れた今、もうデモンズセンチネルを名乗る必要はなくなった。俺の本当の名を教えてやろう……」
「本当の名前、だと?」
 一呼吸ついてから、センチネルは名乗る。
「俺の名はヒース。かつて天界にて神々を守護する騎士団の副長だった男だ」
 センチネル改めヒースは、自らの過去と共に正体を明らかにした。
    ※※※
 大悪魔の配下として、デモンズセンチネルの役目を帯びていた騎士は、かつての天界の聖騎士であった。
 ヒースは、自らを縛り付ける枷たる仮面を破ってくれた礼として、シン達に彼の過去を話した。