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黄金の太陽THE LEGEND OF SOL 24

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 シンは乱れる風の刃を一点集中させ、指先からヒースに向けていくつも放った。
 爆発のエナジーから身を守った直後に風の刃を放たれ、ヒースは避けることができない。一点に集中する力に押し返されてしまう。
「ヒース、お前は哀れな奴だ。思わず目を背けたくなるほどにな。だけど、オレは見過ごさない。お前を憎しみの底から救いだしてやる……」
 シンは一度武器を納め、両手で印を結んで詠唱した。
『忍封・天眼乱解』
 まるで古流呪術の呪文のようなものを口にした瞬間、シンの体から風のエレメンタルを象徴する紫のオーラが、陽炎のごとく揺らめき始めた。
 シンの変化はそれだけに止まらない。
 シンの瞳に、ヒナのような翡翠の勾玉の模様が現れた。天眼と呼ばれる、力通眼の更に上を行く洞察力を得られる眼が顕現したのである。
 しかし、能力は同じながら、シンの眼はヒナと大きく違っていた。
 翡翠の勾玉のような紋様は、右目にしか現れていなかった。
 幼い頃から力通眼の能力を持っていた天才のヒナと違い、シンはごく最近にようやく力通眼を使えるようになったのだ。
 そのため、両目に天眼を宿すには修行すべき時が短すぎたのであった。
「ヒース、お前に言っておくことがある……」
 シンは刀を抜いた。しかし、抜いたのは片方の漆黒の刃であり、白銀のほうは納めたまま、柄に右手を添えるだけである。
「忍者といえど、逃げ切れなくなれば戦いは避けられん。忍が忍ぶことを止めたとき、乱れた存在となり、目の前の敵を全力で殺しにかかる……」
 暗殺や諜報を得意とする忍がその姿を見られた時、取るべき行動は二つに一つ、自分が死ぬか、相手を殺すかである。
「ふっ、言うなれば忍者ならぬ乱者ってとこか? まあ、名前なんかどうでもいい。オレはこれからお前をぶっ殺しにかかる、それだけだ……!」
 シンは翡翠色に輝く目でにらんだ。
「……ふん、良いだろう……」
 一度は取り乱したヒースであったが、落ち着きを取り戻し、ソルブレードとカタストロフを構え直す。
「俺の方も肩慣らしは十分だ。こちらも全力で潰してやる……」
 二つの剣をクロスさせて精神集中すると、ヒースもシンのようにオーラを纏い始めた。カタストロフとソルブレードの色を混ぜたかのような灰色のオーラが、ヒースの背後から立ち上る。
「行くぞ、シン、死して俺の糧となるがいい!」
 ヒースは啖呵を切ると、一瞬にしてシンに攻めかかる。
 シンは残像を残してヒースの後ろを取る。しかしヒースはそれに対応し、後ろに剣を振るった。
 空中であっても自由に動けるシンは、後ろに滑るように下がり、ヒースとの距離を開いた。
「ヒース、悪いが一気に決めさせてもらうぞ!」
 シンは漆黒の刃を扇状に動かした。するとその軌道に、何本もの短剣が出現する。
 シンはそれらを両手の指の間に挟み込むように握った。
「行くぞ!」
 シンは地を滑り、空中を縦横無尽に飛びながら、ヒースの周りに黒の短剣を放って回った。
 しかし、ゆうに百本を超えるほどの短剣を放っていて、黒い軌跡がいくつもヒースの前を過ぎているというのに、それらのうち一本もヒースを狙っていなかった。シンやヒナのような能力を持つヒースには分かる。
 やがてシンはヒースの目の前に姿を現した。
「ふん、何をしている?」
 ヒースは挑発するように言った。これに薄ら笑いを浮かべてシンは答える。
「何をされたか分からない、か。大層な力を持っていながらもお前の目は節穴か?」
「何……?」
 ヒースはふと、頭上を見上げた。そして驚愕する。
「これは……!?」
 ヒースを中心とする空中には、シンが放ったであろう黒の短剣が宙に縛り付けられているかのように止まっていた。その様はまるで、烏の大群が空を飛んでいるかのようである。
「今ごろ気づいたか、だがもう遅い!」
 シンは左手の漆黒の刃を投げた。ヒースの手前に突き刺さった瞬間、烏が大群で襲いかかるかのように、空中の短剣が押し寄せた。
「止刻法・テンサウザンドダガース!」
 シンの放った合計一万本の短剣が、ヒースへと一気に降りかかった。
「くっ!『レジストスフィア』!」
 ヒースは先にメアリィにもかけたエナジーを発動し、球体のバリアに包まれた。
「はっ! そんな薄っぺらいバリアでいつまで耐えられるかな!?」
 シンが投げた短剣は、一本一本の威力は低いものの、一万も集まれば十分すぎる破壊力を持っていた。
 約五百本、全体の十分の一にも満たないうちに、ヒースのエナジーによる障壁は悲鳴をあげ始める。
 ピシピシとひびが入り、バリアはついに破れてしまった。防壁を失ったヒースに、まだ九千本以上残る大量の短剣が飛んでくる。
『プリズミック・ビーム!』
 ヒースが次に取った防御手段は、プリズムに当たった光のごとく乱反射する光線を放ち、辺り一帯に照射することによって迫り来る短剣を焼き尽くすことだった。
 しかし、ヒースの出しうる光線の本数に反してシンの放った短剣の数があまりに多いため、乱反射する光線の隙間から短剣が飛んできた。
『レイデストラクト!』
 更にヒースは、自らを中心に電流渦巻く磁気嵐を発生させる。元々エナジーを拡散できるヒースは、自らに向けてエナジーを発動しても無傷でいられた。
 こうした様々な迎撃法を取ることで、シンの放った短剣は千を切った。全体の十分の九を防いだが、それでも千という数は、受ければ大きなダメージは免れない。
 あらゆる手を尽くしても全て防ぐことはできなかった。ヒースにはもう、ダメージを逃れる術はないように思われた。
「はああっ!」
 しかし、ヒースは最後のあがきとして、全身にエナジーを纏った。それは攻撃を防ぎきるには小さすぎたが、何もしないよりはマシであった。
「くっ……!」
 最後に残った百本ほどはまともに受けてしまったが、ヒースはシンの放った一万本の短剣を何とかしのぎきることができた。
「ほう……」
 シンは不思議な力で手元に戻る漆黒の刃を取り、少し驚きつつも小さく笑った。
「あれを受けて立っていられるとは、全く、恐れ入ったぜ」
 ヒースは自己再生を始めていた。再生の追い付く限りは倒れることはない。しかし逆を言えば、再生が追い付かないほどの痛手を受ければ助からない。
 シンの技は、そうした自己再生能力の弱点を上手く突いたものであった。
「ふん……、いきなり大技で来たものだな……」
「言ったはずだぜ、全力でお前をぶっ殺しに行くってな!」
 シンは再び漆黒の刃を扇状に振った。またしても出現した黒の短剣を、指の間にはさむように持つ。
 同じ技を繰り出すか、とヒースは警戒し、シンから距離を取った。あれをもう一度受ければ今度は助かる保証はなかった。
「バカめ、そっちに逃げたな!」
 シンは黒の短剣と共に漆黒の刃を放った。合計五本の刃が飛び、それらはヒースの手前に刺さる。
「ふっ、どこを狙って……っ!?」
 突如、ヒースは全身に激しい痺れを感じ、指一本動かせなくなった。
 シンはその隙を逃さず、一瞬にして間合いを詰め、ヒースとすれ違いざまに白銀の刃を抜刀した。
「縮地法・シャドウバインドスラッシュ!」