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黄金の太陽THE LEGEND OF SOL 24

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 しかしセンチネルの剣は、ヒナが八の字を描くように振った剣によって左右に弾かれ、大きな隙をさらしてしまうこととなった。
「やあっ!」
 両手を広げてがら空きとなったセンチネルの胸を、ヒナは間一文に斬りつけた。
 刃は狂いなくセンチネルの胸元を斬り、大きなダメージを与えた。
「ぐ、うっ……」
 斬られて血の滴る胸を抑えながら、センチネルは地に膝を突く。
 ヒナは納刀せず、切っ先をセンチネルに突き付けた。
「勝負あり、かしら……?」
 ヒナは笑みを浮かべる。
「なるほど、なかなかやるようだな……」
 突如としてセンチネルは立ち上がり、刃を突き出してきた。
「うっ!?」
 センチネルがまだ立てるとは思わず、ヒナはかわしきれずに右肩を掠められた。会心の一撃を与え、確かな手応えを感じていたために対処できなかったのだ。
 ヒナは飛び退き、ひとまず距離をとって納刀した。そして斬られた肩に触れる。
 傷はそれほど深くなかったが、多少出血していた。
「どうして……!?」
「ずいぶん不思議そうだな? 確かに人が相手であれば致命傷に近い傷だ。だが俺は違う……」
 センチネルは胸の傷から手を離した。ヒナが与えた強力な一撃による傷はもう塞がっていた。その前に与えた風の刃の傷も、まるで何事もなかったかのように消えている。
「今や瘴気の中で生きられるのは魔物のみ。貴様ならば、これだけ言えば理解できよう?」
 センチネルは最初に言っていた。
 これより先、デュラハンの潜むアネモス神殿へと続く道は、最早魔界と変わらないほどの瘴気に満ちていた。それは、そこの空気を吸っただけで、普通の人間であれば一瞬で腐敗するほどである。
 そんな場所の守護を任せられているセンチネルの体は、人と同じものであるはずがなかった。
「センチネル、まさかあなた……」
 ヒナの予想は大方当たっていた。
「そうだ、俺の体は魔物と変わらない。デュラハンに魔物の体を与えられた。奴と同じく、傷が瞬く間に塞がる体にな」
 センチネルは魔物と化していた。それもガイアロックの魔龍、オロチと同じように、再生能力が極端なまでに備わっている類のものだった。
「それはずいぶんと厄介ね……。小技じゃまともに傷も与えられないばかりか、半端な攻撃じゃ倒れてくれないんだから……」
 自然回復が異常なまでに高まる能力がどれほど厄介か、故郷で同じような敵を相手取った時に、ヒナは痛感していた。
 小さなダメージではすぐに回復され、致命傷に僅かに届かなくても悉く修復される。倒すためには完全な致命傷を与えるより他ない。
 加えて、オロチの時は太陽という明確な弱点があったが、センチネルにはこれといった弱点は存在しない。
 回復できないほどの深傷を追わせるしか倒す方法はなかった。
「さて、では次はこちらから行くぞ!」
 回復しきったセンチネルは反撃に出た。切っ先をまっすぐ向け、ヒナに突きを放つ。
 かわせぬ速さではなかった。しかし。
「そちらか!」
 突き技を出し、直進しかできないはずが、センチネルはヒナが避けた先へと急転換した。
「っ!?」
 ヒナは避けるのは無理、と本能で察知し、反射的に抜刀してセンチネルの剣を弾き返した。
 センチネルは弾かれた勢いのまま、後方に宙返りし、同時にヒナの胸元に蹴りを放ち、背中に魔法の翼を出現させて飛翔した。
「げほっ、ごほっ……!」
 胸に強打を受けて尻餅をつき、ヒナは咳き込んだ。
 ヒナは息をするのも苦しい状態となりながらも、空に飛んでいったセンチネルから目を離さなかった。
 センチネルが空中で、エナジーを発動しようとしているのが見えた。
『レイデストラクト!』
 センチネルは放射状に電流を放った。
「くうっ……!」
 ヒナは後転しながら立ち上がり、飛んでくる電気を跳ね回ってかわした。
 センチネルのエナジーが止むのを見計らって、ヒナも反撃に回る。
「天・飛燕刃!」
 ヒナは縦横二回抜刀し、十字の刃を放った。
 センチネルは容易く避け、切っ先を真下に急降下してきた。
「ヘブンズ・スラスト!」
 落下の勢いを受け、センチネルの突きの威力は鋼も砕くほどのものになっていた。
 ヒナは、突きが地に届く前に回避し、動きの止まったセンチネルに斬りかかった。しかし、高速の抜刀術はセンチネルにかすりもせず、下がられてしまった。
 大きく空振りしてしまい、隙を見せてしまうヒナに、センチネルの刃が襲いかかる。
 ヒナはその攻撃を、右手の鞘を八の字に振って受け流し、もう一度左の刀を振るって牽制した。
ーーなんて無駄のない動きなの……!?ーー
 これまでの打ち合いに比べると、センチネルの動きにはまるで無駄がない。それどころか、翼を広げた事で空でも自在に動けるようになり、機敏さがかなり増していた。
 本領発揮、といったところか、ヒナは思う。しかしヒナは慌てない。
「ふふ……、かなりやるじゃない、センチネル」
 敵が全力を上げるなら、こちらも全身全霊をもって応じるのみである。
「お互い小手調べはここまでにしましょう」
「ふん、小手調べ、か……」
 センチネルは余裕である。
「そろそろ、本気を出させてもらうわ。天眼のヒナの本気をね……!」
 ヒナは目を閉じ、目蓋を手で覆った。
 精神を集中し、視神経を研ぎ澄ますと、目蓋を覆った指の隙間から鮮やかな緑の輝きが漏れた。
 しばらくしてからヒナは手を離した。同時に目蓋を開くと、瞳は輝かんばかりの澄んだ翡翠色に変化し、瞳の奥にはまさに翡翠の勾玉のような模様まで浮かんでいた。
「……待たせたわね。これがお待ちかね、力通眼を超えた眼、その名も天眼よ」
 ヒナは緑に煌めく瞳でセンチネルを見据える。
「天眼か。しかし見たところ、ただエナジーを発動したときのように光っているだけのようだが?」
「ふふふ、見た目で判断しないでほしいわね。まあ、確かにあなたの言う通り地味だけど、性能はそうとう上がっているわよ」
 ヒナの視界には、普通の眼では絶対に捉えられないものまで見えていた。
 空気中を漂う塵、センチネルから無意識に放出されるエナジーの波動、そして。
「あたしには見える。時の流れさえも。そして時空と空間の合流点もね……」
 力通眼を超えた天眼は、あらゆるものの理を見ることができた。それはまるで、天から地上を見下ろす神の眼のようであった。
「まあ、ごちゃごちゃ言っても分からないわよね。来なさい、あたしに見える全てをあなたにぶつけて上げるわ!」
 ヒナは居合いの構えを取り、鮮やかな緑に光る眼をセンチネルに向ける。
「ふん、では遠慮なく行くぞ!」
 センチネルは一瞬で攻め、ヒナに斬りかかった。
「ふふ、どこを狙っているの?」
「なっ!?」
 ヒナはどういうわけか、センチネルの右隣に立っていた。間髪入れずにヒナは抜刀し、横薙ぎに振る。
 センチネルは吹き飛ばされ、地面を二転三転した。
「ぐっ……」
 どうにか体勢を立て直すが、その先には既にヒナが立っていた。
「流転・転影刃!」
 ヒナはすれ違いざまに抜刀し、センチネルの背後で二太刀目の逆袈裟斬りを放った。
「なにっ……ぐあっ!」