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黄金の太陽THE LEGEND OF SOL 24

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 ヒナは、崩れ落ちるセンチネルの手を取り、捻りを加え回転し、センチネルの肘を曲げてそのまま前に投げ飛ばした。
 センチネルは背中から強かに地面に打ち付けられた。そこへヒナの追撃が襲いかかるが、横に転がって立ち上がり攻撃する。
 しかしヒナは攻撃をものともせず、センチネルの背後に移動し、半分刀を抜き、刃をセンチネルの背にぴたりと付けていた。
 センチネルは肘打ちしてヒナを退ける。ヒナにはかすりもしない。
 再び間合いが開き、両者にらみ合いとなった。
「ふふ……、すっかり翻弄されちゃってるわねぇ」
「貴様、一体何を……!?」
「その眼を使えばわかるでしょ。いや、これはやっぱり無理なのかしら?」
 ヒナは勿体ぶっている。
「よっ、と」
 徐に、自らの武器を真上に放り投げた。当然刀は、重力によって地面へと落ちていく。
「止刻法!」
 ヒナは目の前に向かって指をさし、エナジーとは違う力を放った。ヒナの瞳の奥の模様が一際輝きを放つ。
 すると空中に球体を成す、赤紫色をした異空間が広がり、刀がそこへ落ちると、まるで一瞬のうちに凍結したかのように空中に止まった。
「なんだ、それは……!?」
 センチネルは仮面越しでも分かるほどの驚きを見せた。
 エナジストであれば、手を触れることなく物体を浮かせることは、エナジーを使えば造作もない。しかし、ヒナの放っているものは全く違っていた。
 いくらエナジーで物を空中に止めようと、完全に動きを止めることはできない。多少であるが絶対に僅かな揺れが発生するのである。
 しかし、ヒナの力による空間は、その中に入り込んだもの全てを止めている。偶然入り込んだ塵も一切の動きを見せず、空間そのものが一つの化石のようになっていた。
 ヒナの作りし空間には、時が一切流れていないのである。
「ふう、これ以上はダメね。力の無駄遣い……」
 ヒナは放出していた力を止めた。化石や琥珀のように、時が止まっていた空間がもとに戻り、重力の法則に従って空間の中にあった物体が落下し始める。
 ヒナはその内の一つ、彼女の愛刀を手に取った。
「どう、驚いたでしょ?」
 ヒナは勾玉の模様の浮かぶ眼を向け、得意気に笑った。
「エナジーではない……、魔術の類ともまた違う。その力は一体なんだ?」
 センチネルの眼をもってしても、ヒナの技を見破ることはできなかった。
「……これは、あたし達の一族に代々伝わる秘技中の秘技。止刻法よ」
「止刻法だと、まさか本当に時を止められるのか?」
 先ほど眼前で起きた事象は、時間を止めるものなのではないか。センチネルに予測はできたが、とても信じられるものではなかった。
 本当に時間を止められるのならば、天地の理を覆すことに他ならない。人の身で天の理に干渉するなどできるはずがない、とセンチネルは思っていた。
「時間を止めるなど不可能だ、神以外にはな」
「確かに、時間をどうにかしようなんて、神様の領域よね……」
 ヒナは目元に手を当て、指の隙間から鮮やかに光る、緑の眼を覗かせた。
「……でも、この眼を使えばそんな事もできる。時の止めかたが映るからね。だけど、この力には限界があるわ」
 天眼を使い、時間を止める方法を知り得ても、それを行使するにはかなりの精神力を要した。いや、精神力というより、生命力を削ってしまうという方が正しい。
 力通眼、ならびに天眼は、視神経を使いすぎてしまう能力であり、使用の最中は視神経の酷使により、神経の繋がる脳にかなりの負担をかけてしまうことになるのだ。
 加えて止刻法は、エナジーとも魔術とも性質が異なるが、それら以上に精神力を必要とした。連続、断続問わず、止められる時間は修行を積んだヒナでも五分が限界であった。
「大きな弱点はあるけど、それを補って余りある力よ。だけど、五分という時間、精神力を保つためにも、うまく使わなければいけないわ……」
 ヒナは再び手で眼を覆う。
「……さて、種明かしも済んだことだし、続きをしましょうか!」
 ヒナが指の隙間から覗かせる眼を輝かせると、瞬間、センチネルの後方に移動した。そしてそのまま抜刀する。
「チィッ!」
 センチネルは回転しながら振り返り、攻撃から身を守る。
「止刻法!」
 ヒナは時間を止めることによって可能となる、時空と空間の合流点を跳ぶことで移動していた。
 力通眼を超えた特殊能力、天眼を使って、どの位置に止刻法を放てば最小限の移動ですむのか。そうしたものを見据え、ヒナは止刻法を効果的に使用していた。
 止刻法が解けるのは、ヒナの意識が別のものに向いた瞬間、すなわち、センチネルに斬りかかる時である。
「やあっ!」
 左側面からの斬り込み。
「とうっ!」
 斜め右からの奇襲。
「そこっ!」
 真っ正面から攻め入り、すれ違い様に斬りつけ、背後に回って斬りつける。
「くらいなさい!」
 ヒナはまるで、空を飛べるかのように空中を跳躍し、まさに縦横無尽にセンチネルに攻めかかっていた。
「ぐっ!」
 辺りの時間を止められるため動きを封じられ、センチネルはその体に刀傷を次々増やしていった。しかし、魔物となった時に得た自己再生能力によって、さほど深くない傷はすぐに癒えてしまう。
「本当に厄介な能力ね……!」
 力通眼に等しい力を持つセンチネルは、いかに時を止められ、動作を封じられようとも、術が解けた一瞬を読み、ヒナの攻撃を軽減していた。
 決定打を与えられぬ以上すぐに回復され、使用に制限のある止刻法を乱発していては、ヒナはセンチネルを倒しきれずに力がなくなってしまう。
 ヒナはこれまでに通算、一、二分ほど時間を止めている。止刻法が使えるのも、多くて残り三分の時間が限界であった。
ーーもっと止める時間を延ばさなきゃ、センチネルにまともなダメージは期待できそうにないわね……ーー
 ヒナは思い、攻め手を変えてみることにした。
 ヒナは構え、センチネルへと飛び込むように攻め寄せた。まっすぐで、なんの変鉄もない攻め方である。
 センチネルに受けられないはずがなかった。しかし。
「幻影刃!」
 ヒナはいつの間にかセンチネルの背後へと回り、抜刀していた。
「ぐっ、あ……!」
 センチネルは全く動きを読むことができなかった。いや、読めるはずがなかった。
 真っ直ぐに突っ込んでくるヒナが前から来たかと思いきや、瞬きする僅な瞬間に後ろに回られていた。
 幻影刃という名の通り、ヒナの姿がまさしく消えていたのだ。
 間合いを開けて納刀し、再びヒナは真っ直ぐ、そして狂いなく直進してきた。
 センチネルは、今度こそヒナのやっていることのからくりを暴いてやろうと集中する。
「幻影刃!」
「ぐああっ!」
 しかしそれは不可能であった。やはり暴く頃には背後に回られ斬られてしまう。
 ならば、とヒナが納刀する一瞬僅かの隙を突いてやろうと、振り向きざまに剣を振るった。
「幻影刃!」
 振り返った先にヒナはおらず、センチネルは斬られる。しかし振り向いた僅な瞬間に、センチネルは一つ発見した事があった。
 ヒナはやはり納刀と同時に下がり、再び突進してくる。
「幻影……!?」