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黄金の太陽THE LEGEND OF SOL 24

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 ヒナの姿は消えなかった。センチネルが剣を突き出したことによって、ヒナは急停止するより他なかったのだ。
 切っ先はヒナの鼻先に僅か触れるか否かの所に迫っていた。
「くっ!」
 仕方なくヒナは後退する。
「……やはりそうであったか。予想に過ぎんかったが、貴様の挙動で全て分かったぞ」
 センチネルは剣を下ろす。
「ふっ、さすがに二回も三回も同じ技くらってちゃあ分かるわよね……」
 ヒナは仕方がないといった様子である。
 ヒナは止刻法の弱点を少しでも軽減する方法を利用していた。
 万物の動き全てを止める極意である止刻法だが、効力を発揮するのはヒナの意思が術に向いている間のみであり、意識の対象を変えた瞬間に効果は切れる。
 動きを止めた対象へと接近し、攻撃せんとする時、意識は変わり、術は即座に停止する。しかし、ヒナの神速の居合いの前では、例え術が解けたとしても攻撃対象はヒナの攻撃に対処できず、一刀のもとに倒れるはずだった。
 しかし、センチネルは例外だった。術が解け、体が自由になった刹那にヒナの動きを読むことができた。
 そのためヒナは、センチネルとの間合いを詰めることで止刻法の及ぶ範囲を増やし、ヒナの意識が途切れたとしても、僅かの間のみ術の効果が及ぶようにしていたのだ。
 前方から急襲し、止刻法を放って背後に回って強力な一撃を見舞う。それはまるで、幻影のように姿を消し、そして現れる。ヒナの秘剣はセンチネルに見事に暴かれてしまった。
「そこまで分かるなんて、その仮面の下の眼、ますます見たくなったわ」
「ふん……、しかしどれも有効打とはならなかったな。貴様の剣は確かにすごいが、その細腕では威力が出んようだな」
 センチネルの言う通り、ヒナは非力であった。だからこそ的確に相手の急所をつく攻撃が必要であったのだ。
 センチネルは再生回復してしまった。
「やれやれ……、必死に攻撃したのに……」
 ほぼ元通りの姿に戻ったセンチネルを見て、ヒナはため息をつく。
 しかし、いつまでも落ち込んでいる暇はない。この技を見切られてしまった以上、ヒナは新たな攻め手を打たなければならない。
「ふん……、残念だったな。どうやらだいぶ気力が尽きてきているようだが、まだ続けるか?」
 センチネルの言う通り、ヒナの精神力はほとんど残っていなかった。
 ただでさえ精神力を大量消費する止刻法を、範囲まで広げて使用したために、残る力で止められる時間は連続で一分間が限度であった。
 止刻法が使えなくなってしまっては、ヒナに勝機はなくなる。次で決めなければ、ヒナは押し負け、そして待ち受けるは死である。
「こうなったら、本気の本気でぶつからなきゃいけないわね……」
 ヒナは構えた。
「行くわよセンチネル。これがあたしの超必殺技よ!」
 ヒナは気の錯乱を使って攻め入り、センチネルの八方へと気配を飛ばした。
「ふん! そんなものが通用すると思ったか!?」
 偽の気配に惑わされず、センチネルはヒナ本体を捉えた。
「止刻法!」
「なにっ!?」
 センチネルの右側面から近付いていたヒナは、抜刀するのではなく、指をさして止刻法を発動した。センチネルを含む、周りの時間が停止する。
「とうっ、はっ、えいっ、やあっ!」
 ヒナは時空と空間の合流点を飛び回りながら四方からセンチネルに斬りかかった。
「秘技・幻影四方刃!」
 ヒナが納刀した瞬間止刻法は解け、遅れてセンチネルはダメージを受けた。
「ぐはっ!」
 数による攻撃で一刀の威力の弱さを補う技であった。しかし、今の攻撃により、ヒナの方にも相当反動がかかった。
「まだだ……!」
 かなりの手負いとなったセンチネルであったが、やはり倒すまでには至らなかった。
「くっ、まだ倒れないの……!?」
 先ほど使用した止刻法はかなりの広範囲で、相当な精神力を消費した。最早、残り三十秒時間を止められるか否かも怪しい。
 センチネルはもう再生を始めている。迷っている時間はない。ここで一気に畳み掛けなければ、勝機は決して訪れないであろう。
「うっ!? うう……」
 ヒナは突然、ひどい目眩に襲われた。何とか倒れずにいられたが、視界は真っ暗になった。
 止刻法は体にも相当な負荷がかかってしまうもので、ヒナの体力も残り僅かであったのである。
「ふ、最早そこまでのようだな……」
 センチネルの回復は早く、間もなく全快しようとしていた。
「そうみたいね……。こうなれば残りの力で一気に行くわ!」
 センチネルが回復しきる前に、ヒナは一瞬で彼に詰め寄った。
 センチネルはまだ全快しておらず、その上ふらついたヒナに接近され、センチネルは驚いてしまった。
「止刻法!」
 ヒナの眼が激しく輝く。
 止刻法は発動した。残った時間は僅かで、無駄にはできない。
 ヒナは刀に風をまとわせて振り、何本もの剣閃を煌めかせる。そして間髪いれずにセンチネルの周りを六回すれ違い、六芒星の軌跡を後に残す。
 ヒナはセンチネルをすり抜け、納刀した。その瞬間術が解け、全ての時が動き出す。
「止刻・瞬散六星刃!」
 止刻法で止まっていた真空の刃と、センチネルの周りを回って与えた剣撃が遅れて彼に襲いかかった。
「うっ、くっ……!」
 ヒナは先ほどより強い目眩を感じ、片膝をついてしまった。例え再び止刻法を使えたとしても、今のヒナには十秒にも満たないであろう。
 これで仕損じていれば、ヒナの勝利は絶望的となる。
「があっ!」
 遅れてやってきた刃に、センチネルも膝をついていた。鎧が割れ、両肩にいくつも傷を作り、大量に出血している。
 ヒナは首を振り回し、目眩を強引に振り払った後、センチネルを見やった。
 かなりのダメージを与えたが、僅かに決定打とならなかった。しかし、後一太刀浴びせれば勝敗は決しようとしている。
「うう……」
 だがヒナにはもう、たった一振り剣を振ることもままならなかった。
「くっ……どうしたヒナよ。後一撃見舞えば、俺を倒せるぞ……?」
 センチネルはみるみるうちに再生していく。
「ふふ……、そうしたいのは山々だけど、さすがに辛いわ……。正直言って止刻法を甘く見てたわ……」
 止刻法を使うのに、かなりの体力を消耗してしまった。
 後一回でも止刻法を使えば、ヒナは間違いなく一切動けなくなる。しかし、ただ攻めようにも、やはり力がでない。脚が震え、手先も思うように動かせない。
「……困ったわね」
 どうにか立っているのがやっとのヒナに対し、センチネルはほとんど回復していた。
 最早ヒナは万策つきてしまった。
 しかしヒナは、諦めて倒される事を選ばず、しっかりと構える。
 右腰に刀を添え、左半身でほとんど背中を向けるような格好になり、翡翠色に輝く眼をセンチネルに向ける。
「何の真似だ、まさかまだやろうと言うのか?」
「…………」
 ヒナは一言も発することなく、ただセンチネルを見ていた。
「ふん、無駄なあがきは止めておけ。震えているではないか」
「……センチネル、あなたに本当の技を見せてあげるわ。そう、居合いの極意をね……」
 ヒナの言う居合いの極意、それは間合いに入ったものを一刀のもとに斬り捨てる、最大の待ちの技であった。