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黄金の太陽THE LEGEND OF SOL 24

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「あたしはもう、ここから一歩も動かないわ。蜘蛛のように、間合いという網に、あなたという獲物がかかるのを待つ……」
 ヒナは構えたまま、緑の鋭い眼光をセンチネルに向け続けた。
「ふん、ならば捕らえてみせよ! 俺の剣を!」
 回復しきったセンチネルは、切っ先をヒナへと向け、エナジーを解き放った。
 風のエナジーがセンチネルを中心に旋風を起こし、ごうごう音を立てて渦巻き、更にパリパリと電撃が弾ける。
 弾ける電撃はセンチネルの剣を包み込み、バチバチと帯電する雷の刃と化した。
「行くぞ……!」
 センチネルは背中に翼を広げた。
「ライトニング・スラスト!」
 雷雲を煌めく落雷のごとく轟音を上げ、センチネルは全身を電気に包んで超高速で突進した。その速さはまさしく雷である。
「…………」
 ヒナは、音をも超える速度で向かい来るセンチネルを前にしても、視線をそらすことなく、また微動だにもせずセンチネルを見続けた。
 常人にはとても、今のセンチネルを捉えることなどできない。しかし、ヒナの眼、天眼にはしかと彼の姿が映っていた。
 そして時の流れをも見通す眼は、センチネルの刃の向かう先をも読み取った。
「見切ったわ!」
 ヒナはかっ、と目を見開いた。瞳の奥に浮かぶ、翡翠の勾玉の模様が具現化し、瞬間、ヒナの周りの時が止まった。
 ヒナを貫かんとするセンチネルが止刻の領域に入り込むと、その動きの一切が止まる。同時にヒナは、センチネルの剣を確実に破壊できる弱点を見切った。
「最終奥義……!」
 ヒナは刀に全力を込め、天眼を通して見えるセンチネル、そして弱点部分が煌めく剣先に狙いを定める。
 向かい来る相手の刃を弾き砕き、相手の力そのものを全て返す技。
「破刃・衝返刃!」
 ヒナは全身に衝撃波を纏い、その身を矢のように、そして光の瞬くごとく一瞬で抜刀して駆け抜けた。
 ヒナの進んだ後には光輝く真っ直ぐな軌跡が残り、空中にはヒナが叩き割った刃の破片が、ダイヤモンドダストの現象のように、軌跡の光を反射してきらきら光って散っていた。
 ヒナとセンチネルは、遠間に背中合わせとなった。そして僅な時間差の後、片方が血を噴き上げて倒れた。
「……愚かな」
 センチネルには傷一つなかった。
「ぐっ、ふぅ……!」
 ヒナは脇腹から血を流し、口元も大量の血で染めた。
 ヒナの両手から何かが音を立てて地面に転がった。それはヒナの刀の鞘と、刀身が粉々に砕け散った刀の柄である。どうやら先ほどの技で剣を壊したのは、ヒナの方であったようだ。
 ヒナはそのまま力なく地に膝をつく。
「ヒナさん!」
 ずっと二人の戦いを見守っていたメアリィが叫んだ。そして急いで駆け寄ろうとする。
「来ないでっ!」
 ヒナが叫ぶと、メアリィは足を止めてしまった。ごふっ、とヒナは叫んだ弾みで更に口から血を出した。
「くっ、うっ……。ダメ、ね……、動けない……」
 ヒナは何とか立ち上がろうとするものの、指先にすら力が入らない。
「自ら死地に飛び込むとは、最終奥義などと宣うものだからどのようなものかと思えば……」
 センチネルはゆっくりとヒナへ歩み寄ってきた。そして本来なら砕けたはずの剣を向ける。
「いや、最後の手段として相討ちにしようとしたのか? 例え俺の剣が当たったとしても、貴様は致命傷に至らないような動きだった。その証拠に貴様の傷、串刺しは避けられている」
「ごほっ……、確かにあなたの剣の弱点を突いたはずなのに、壊れないなんて……、どうして……?」
「この剣は貴様らの持つようなものとは全く違う。軟弱な鉄などではできていない。ふん……冥土の土産に教えておいてやろう。この剣は比喩などではなく、ある者の魂でできているのだ。それがただの鉄に負けるはずがない」
 ヒナはセンチネルの言葉の意味を理解できなかった。しかし、これだけはよく分かる。どうあがいても、もうヒナに勝機は得られない。死の予感がすぐそこまで迫っているのが分かる。
「……ふっふふ……、お手上げね……。間違ってもあなたに勝てないわ……」
 ヒナは皮肉めいた笑い声を上げた。剣どころか、戦う力そのものが、ヒナにはもう残っていなかった。
「全力で戦って、負けたんだから……、命乞いは、しないわ……。さっさと斬りなさい……」
「ふん……」
 センチネルは鼻先で笑う。
「ずいぶんと面妖な技をもっていたが、幕切れは呆気ないものだな。貴様との戦いはなかなか得るものが多かった、最後に礼を言っておくぞ。では……」
 センチネルは剣を振り上げた。
「死ね!」
 そしてセンチネルの剣はヒナの首を飛ばす。そのはずだった。
『アイスホーン!』
 不意に、センチネルへ向けて大きな氷柱が飛んだ。
「ちっ!」
 センチネルは振り下ろす剣を止め、後ろに飛び退く。氷柱はセンチネルを外れ、地面に落ちて砕けた。
 そしてヒナの前に少女が立ちはだかった。
「メアリィ!?」
 ヒナが驚いている間に、メアリィは魔杖を手に取り、先端をセンチネルに向ける。
「死なせません、絶対に……!」
 不慣れながらも、ヒナから手解きを受けた杖術で、メアリィは果敢にもセンチネルへ攻めかかった。
「ダメ! あなたがセンチネルに勝てるはずが……!」
「やああっ!」
 ヒナの制止もむなしく、メアリィは魔杖を振るった。
 メアリィは、一度肩に杖を担ぎ上げ、腰を捻って回転の力を生み出し、右手で杖を遠くに放るように振った。遠心力も加わった一撃は、先端部であれば物を切ることもできる強力な攻撃である。
 センチネルは動かなかった。いや、避けようともしなかった。
 杖の軌道上に剣を立てる事により、杖に加わった力自体で杖を分断させた。
「小賢しい!」
 センチネルは切っ先を突き付けた。剣先はメアリィに触れることなく、先に彼がメアリィに纏わせたエナジーの防御を打ち砕いた。
「きゃっ!」
 メアリィは弾みで尻餅をつく。
「貴様のような雑魚を斬ったところで何の得にもならん。そこで大人しくしていろ」
 センチネルはメアリィを足でどかし、再びヒナにとどめを刺すべく歩き出す。
「……させません!」
 メアリィは立ち上がり、ヒナの前で両手を広げた。
「メア、リィ……!」
 ヒナは苦しげに声を上げる。脇腹の傷による大量出血で意識が朦朧としていた。
「そこをどけ」
「お断りですっ!」
 センチネルは剣をメアリィの顔の横めがけて突き出した。切っ先がメアリィの頬を掠め、少し血が流れる。
「次は本気で殺す。そこをどけ」
 メアリィは大きく首を横に振る。
「どんなに脅されようと、私はここを動きません! 私は誰も死なせたくない!」
「……ぬう……!」
 目の前に立ち塞がるのは、全くの無力な少女である。センチネルがその気になれば、ヒナごと簡単に一太刀で斬ることができる。
 しかし、センチネルはどういうわけか刃を動かせなかった。
 今、目の前で両手を広げるメアリィの姿に、センチネルのよく知る少女がちらついてしかたがなかったのだ。
 初めて彼女に会った時、センチネルは驚きを隠しきれなかった。メアリィの髪の色、そして優しさの溢れる瞳の中に見え隠れする強き心は、まさにセンチネルの知る少女のものそのものであった。