興味と関心 前編
もともとはファッション誌を希望していた。
でも配属された先は少女誌だった。
興味の無い分野でも
興味を持たなくてはならない。
どんな男を魅力的に感じるかなんて
ほんというとよくわからない。
こんな私のアドバイスなんて
本当に漫画に役立ってるかどうか。
私はなぜここにいるのだろう。
時々そういうことを考えてしまう。
パーティーなんて向いてない場所にいると
余計に思ってしまう。
「鮫島。」
振り返ると編集長が立っていた。
見知らぬ若い子を連れて。
「今度改めて会わせるけど、
この子、君に担当してもらおうと思ってる
新人さんだから。ペンネームなんだっけ。」
「あっ、はいっ、田池より子ですっ
よろしくお願いします!」
オドオドした感じのその子は、
まだ高校生くらいだった。
「あ、よろしく…鮫島です。」
「池田先生みたいな壮大な歴史モノ
描きたいらしいよ。
ペンネームが物語ってるよね。」
あ…池田→田池ね…歴史モノ…
ふとまたあの男の顔がよぎった。
なぜこんなにも気にかかるのか。
しかも自分にまるきり興味のなさそうな男が。
パーティーだからといって
盛り上がるわけでもなく、
少し酔って家に帰り、化粧を落とした。
12時…
隣は何をしてるだろう。
「って、どうでもいいか。」
風呂に入って髪を乾かし、
布団に入った。
ドンドンドンッ
隣のドアが叩かれる音がした。
なんだよ。こんな夜中に。
「五月ぃっ開けてー」
女?
「つぼみ!お前、
こんな夜中に何しに来たんだよ。」
「いいっじゃん。ちょっとさぁ、
ここで飲み直そうかと思って。」
「はぁ?ゆきちゃんとこでもいけよ。」
「わー、ツレナイなー。
諭吉んとこはもう閉まってるし。」
「俺の家ももう閉店ですから。」
キィィ…
「ちょっと…うるさいんですけど。」
「あっ、すみません。すぐ黙らせますので。」
酔ってそうだが、綺麗な女の人が
あの男に絡んでいた。
「…彼女?」
ん?私は何を聞いてるんだろう。
痴話喧嘩には巻き込まれたくないのに。
「元カノでーす。」
「バカッ何言ってんだ。」
「どうでもいいけど静かにして。」
「あ、どうでした?パーティー。」
「…今この状況でそれ聞く?」
ホント失礼だな。
お前の頭は自分の要求だけか。
「ですね…」
「ナニナニ、五月、彼女できてんじゃない。
諭吉の結婚式でツバメちゃんと再会して
落ち込んでるかと思って来たのにさ。」
「余計なお世話だ。
それにこの人は彼女じゃなくて
お隣さんだから。ただの。」
ツバメ?
何、まだ女いんの?
ただのお隣さんという説明に
私はなぜだか少しムッとして、
「今私がいますから。
お引き取りください。」
私は自分でも信じられない台詞を
酔っ払ったその女に口走っていた。
「「え?!」」
名前も知らない、五月と呼ばれた男と私は、
同時に驚きの声をあげた。