興味と関心 前編
「あ、おはようございます。」
「今日は休みで?」
次の日もまたドアの外でバッタリ会った。
この間まで顔も知らない隣人だったのに。
「日曜なので。コンビニでも行こうかと。
有紀子さんは仕事ですか?」
「一応休みですが、私もコンビニへ…。」
「買うものあったらついでに買ってきますよ。」
「いくつですか?」
「はい?」
「獅子尾…さんの年齢。」
「え、なんで。」
「ずっと敬語だから年上だったら
敬語やめてもらおうかと。」
「えー…29です…」
「じゃあ敬語止めてください。」
「え、オレ年上?」
「まぁいいじゃないですか。」
「ふ…じゃあ、有紀子。
何買って来て欲しい?」
「呼び捨て…」
「あ、名前の呼び捨ては違うか!」
獅子尾は自分の言葉に
慌てたようだ。
これって計算?
「獅子尾さん、
天然タラシって言われません?」
「は?!言われませんよ!」
自覚なしか。
「行ってから選びたいので私も行きます。」
「え、あ…はい。じゃあ、一緒に。」
2人でコンビニまで歩きながら
編集の仕事あるあるな話をした。
「ん。」
店内に入りカゴを掴むと、獅子尾は
私のカゴを自然に持ってくれた。
こういうのに普通女子は
キュンキュンくるのだろう。
「ダサイ人は無理しないでください。」
「え?!ダサイ人…って何その認定。
無理してそうに見える?」
「ナチュラルにそれとか
女子高生にモテそうですね。」
「いやいや、ないから。」
モテても不器用だったら
昨夜みたいな話になるんだな。
いやいやと言いながらも結局
獅子尾はカゴを持ってくれたままだ。
私たちは各々の買いたいものをかごに入れて
レジに並んだ。
待っている途中で
「昼の予定は?」と聞かれた。
「何にも。」
「パスタ食べない?トマトの。」
「え?獅子尾さんが作るんですか?」
「うん。オレうまいよ。
学生ん時こればっか作ってたから。」
「…じゃあ、いただきます…」
「じゃ、トマト缶とベーコンと…」
パスタの材料を買って2人で帰る。
「買ったもの冷蔵庫に入れてきます。」
そう言って一旦私は自分の部屋に帰った。
どうして私を誘うんだろう。
魂胆がよくわからない。
「…暇潰しかな。」
そうして私はパスタのお礼に
安物だけどワインを持って
獅子尾の部屋のチャイムを押した。
「悪い、勝手に入っていいからー」
部屋のドアを開けると
ジャージャーと何かを炒める音がする。
「これ、ワイン。よかったら…」
「えっ、気を遣わなくてよかったのに。」