興味と関心 前編
「や、いつもビールいただいたり
ごちそうになったりしてますから…」
「キミも敬語禁止。」
「え。」
「オレだけ敬語禁止にされるのは
不公平だから。」
「あとオレのこういうのは迷惑料だから。
気を遣う必要ナシ。
いろいろしてもらうと、
また返さないといけないデショ。
別にオレはそれでもいーけどね。」
「迷惑料…」
何を私は期待していたんだろう。
さっき「どういうつもりで誘うのか」
という自問に対する、
獅子尾の答えにガッカリしている
自分がいた。
そりゃそうだ。
下心があれば二晩も夜2人でいるのに
何もしないなんてことはないだろう。
まぁ、最初の夜は酔い潰れていたが。
それとも私が誘えば
この男は誘いに乗るのか。
「できた。」
私のそんなモヤモヤもおかまいなしに
獅子尾はパスタを手際よく
皿に盛り付け始めた。
「わたし…帰ります。」
「え…えっ?!」
私はバタバタと玄関に向かって靴を履き始めた。
「帰るって急になんで?!」
「なんでもないです。」
恥ずかしい。
いたたまれない。
期待してた自分が。
何の期待もしてない獅子尾が。
「有紀子!」
獅子尾が私の手を掴む。
「何なんですか!
恋人でもないのに
呼び捨てにしないでください!」
「あ、ごめん。」
獅子尾は掴んだ私の手をパッと離した。
「何か気に障ったなら謝るから」
「だから一緒に食べながら話そう?」
そんな縋るような目で…
「あ、違うわ。ごめん。」
は?違うって何が!
「…オレが君と一緒にいたいから
パスタ一緒に食べてください。」
ああ、もうダメかもしれない。