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不釣り合いな僕達 一

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子供の自分が飛び出したところで、二人のプロの忍者には敵わない。
あの庄左ヱ門ですら簡単に捕まってしまう相手なのだから。
しかし自分の失態で捕まった庄左ヱ門がこれ以上ひどい目に合うのは耐えられなかった。

(そうだ!誰か大人を呼べば…。

しぶ鬼はそっとその場から駆け出した。
相手は忍者だ、大人が来れば目立つことを避けるために忍者達は退散するのではないか。
ここはしぶ鬼がよく遊びに来る森。
どの方角に行けば人が通りそうな道に出られるのかは熟知している。
やがて獣道から普通の山道に出たところで、しぶ鬼は懐から何かを地面に撒いて山を下った。
誰でもいい、誰か大人に会えさえすれば、庄左ヱ門は助かる…!
ほとんど山を下りきったところで、しぶ鬼が出会ったのは、

「おおー、しぶ鬼ではないか。

きゃー!

「は、八方斎校長せんせー!!
「三行前の『きゃー!』はなんだよ!

しぶ鬼にとっては、学校の校長である稗田八方斎だった。
ドクタケ忍者隊の首領がなぜこんなところにいるのかと考えるより前に、本来の目的を思い出したしぶ鬼は『お約束』におかんむりな八方斎の袖を引っ張った。

「それどころじゃないですよ、校長先生!実は…。
「それどころって…。
「あっ…。

だがしぶ鬼の歩みは止まった。
ここで出会う大人が八方斎であったことは、しぶ鬼の中でだいぶ計算が狂った。
庄左ヱ門を助けるために、呼んだ大人には『友達が悪い奴に襲われている』と言って駆けつけてもらうつもりだった。
しかしそれをドクたまと忍たまが仲良くしていることを秘密にしているドクタケ忍者で、更に忍術学園に対抗心剥き出しのドクタケ忍術教室の校長に言ってしまうのはまずい。
しぶ鬼と庄左ヱ門が会っていることが知れれば、もうドクたまと忍たまは仲良く遊べなくなるかもしれない。
それだけではなく、庄左ヱ門は今敵忍者によって抵抗できない状態にある。
しぶ鬼が噂で聞いたところによると、八方斎は優秀な忍たまである庄左ヱ門を優秀なドクタケ忍者にしようとさらってはドクたまになるように説得しているらしい(脅すのではなく説得というところが八方斎らしいとしぶ鬼は思った)。
そんなことを考えている八方斎が、忍者を追っ払った後、身動きの取れない庄左ヱ門をそのまま見過ごすだろうか。

(どうしよう…。庄左ヱ門は助けたい…、でもどうすれば……!

「なんだ?それどころじゃない、と慌てていたようだが。
「え、えーっと…。

(ごめん!庄左ヱ門…!

「この先にぼくが撒いた五色米があります!そこから右手に真っ直ぐ進んだところで、最近ドクタケ忍者になりたいって言ってた忍者が、ドクタケと仲の悪い城の忍者と会って話している現場を見てしまいました!
「ぬぁにー!?
「校長先生!早く行かないと逃げられちゃいます!

とりあえず八方斎を現場に向かわせることを考えて、しぶ鬼は叫ぶように言った。
庄左ヱ門のことを言わなければ、しぶ鬼へのお咎めはなくなる。
自分勝手なのは承知だが、これ以上時間を無駄にすれば庄左ヱ門の身が危ない。

「やはりあいつは間者だったか…!しぶ鬼、よくやったぞ。危ないからしぶ鬼はついて来ちゃ駄目だ。
「は…はい!
「しぶ鬼はドクタケ忍者を連れてきてくれ。向こうの河原で風鬼達がピクニック…じゃなくて、特別訓練を行っている。ワシからの命令だと言えば来るはずだ。
「わかりました。校長先生、気を付けてください!

そしてしぶ鬼は八方斎に背を向けて走り出した。
これで、しぶ鬼は庄左ヱ門を忍者からは助けたが、八方斎の手に渡したようなものだ。

(ごめん、庄左ヱ門…。でも、ぼく…いぶ鬼のこともあるし、まだ忍術学園の忍たまとは遊びたい…!怒られたくない、責められたくない…。だから…、……あれ?

そこでしぶ鬼はとある可能性に行きつくことに気付いた。

(八方斎校長先生が、庄左ヱ門を助ける条件として、ドクたまになる、と要求したら……?

今まで誰にも内緒にして庄左ヱ門と遊んでいたのは、彼が『忍術学園の忍たま』だからだった。
それがもし、庄左ヱ門が『ドクたま』になったとすれば、

(もう内緒にしなくても、いつでも庄左ヱ門と遊べる。それだけじゃない、一緒に勉強だって…!

だがしぶ鬼は、思い出す。

深追いを止めようとしてくれた庄左ヱ門を。
わざと見つかって身代わりになった庄左ヱ門を。
責められても口を閉ざしていた庄左ヱ門を。

(やっぱり…庄左ヱ門を助けなきゃ…!

しぶ鬼は来た道を引き返した。



「ん?あれは…。
作品名:不釣り合いな僕達 一 作家名:KeI