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【APH】無題ドキュメントⅣ

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「ハッ、お前の手元にいて神聖ローマはどうなった?ヴェストファーレン条約後、神聖ローマの姿を見た奴はいねぇ。なあ、オーストリア、神聖ローマはどこに行ったんだ?消えたのか、まだ生きているのか?知っているなら、言ってみろよ」
テーブルに身を乗り出し、プロイセンはオーストリアの紫を見据える。紫は高貴な色だと言う。その紫は赤に怯んだように色を変えた。
「…昔からそうだ。自分の保身のためなら、平気でお前は色んなものを切り捨て、妥協する」
「あなたに言われたくありません!」
「俺は自分の保身のために大事なものを捨てたことはない」
保身に走り大事なものを失うくらいなら、自分が犠牲になった方が万倍マシだと思う。…だから、自分はこの時代に生き残っているのだ。信念を失った者は淘汰されていく。
「…っ!」
唇を噛んだオーストリアに溜飲を下げ、プロイセンは身を引いた。
「…なあ、あの死亡診断書な条約後、お前のところの上司がナポ公に脅されて退位して、…その160年間、生きながらにして死んでいくってのはどんな気持ちだったんだろうな?」





 子どもは夜になるとひどく魘され、夜中に悲鳴を上げた。その悲鳴に部屋に駆けつければ、見開いた瞳一杯に絶望を映し、小さく開かれた唇からは延々と引き攣れた叫びが漏れる。
 その小さく震えるその子どもを抱きしめてやれば、漸く、子どもは我に返ったように暗い瞳を向け、

「…マリア」

と、古く懐かしい名で自分を呼んだ。
「…久しぶりだな。神聖ローマ」
「…ああ。…イタリアで一度会ったな」
「覚えてんのか?」
「…覚えてる。お前の姿は異端だったから…」
暗い瞳を瞬かせ、神聖ローマは僅かに微笑んだ。
「お前が羨ましかった。お前は何にも縛られず、自由だった。オーストリアはお前を野蛮だといったが、その奔放な野蛮さが羨ましかった…そうすれば、あの子も…」
「あの子?」
「…あの子…。あれ?…誰、だった…んだろう…大事な…あんなに…大好き…だったのに…」
瞬いた瞳の色が変わる。幼かった自分が初めて見たどこまでも青く晴れた異国の空の色。その色が浮かび、急速に褪せていく。

「…もう、寝ろ。そばにいてやるから」

うつらと閉じかけたその瞳に声を掛けてやると、子どもは小さく頷いて目蓋をそろりと落した。緩やかに聴こえ始めた寝息にプロイセンは小さく、呟く。
作品名:【APH】無題ドキュメントⅣ 作家名:冬故