機動戦士ガンダムRSD 第11話 選びし道
「ちょっ、ちょっと待ておい」
アスランは、何とかイザークの手を放させた。
「何だっていうんだいきなり」
アスランは、イザークにこんなことをされる筋合いはなかった。
「それは、こっちのセリフだアスラン。
俺達は、今無茶苦茶忙しいってのに地球に呼び出されて何かと思って来てみれば貴様の監視護衛だと?」
イザークは、事の経緯を言った。
アスランは、状況を呑めなかった。
「何でこの俺がそんな仕事の為に前線から呼び戻されなきゃならない」
イザークは、不機嫌に言った。
「監視護衛?」
アスランは、いまいちイザークが何を言っているか分からなかった。
「外出を希望してんだろ?
お前」
このままでは、らちが明かないとディアッカがしゃべり始めた。
「ディアッカ」
アスランは、ずっとイザークしか見えていなかったためディアッカに気付かなかった。
「久しぶり。
けどこんな時期だからいくら自国の軍人でも存在しない部隊の人間が勝手に本国内をウロウロは、出来ないんだろ」
ディアッカが状況をわかりやすく説明した。
「それは、聞いている。
誰か同行者が付くとは。
でもそれがお前?」
アスランは、イザークに確認した。
「そうだ」
そういうとイザークは、そっぽを向いた。
ディアッカは、相変わらずの2人の関係に安堵したというか情けないというか複雑な感じがした。
3人は、エレベーターに乗り下に降りていた。
「事情を知ってる誰かが仕組んだってことだよな」
ディアッカがそういうとアスランは、デュランダル大統領かザラ前大統領の顔を思い浮かべため息をついた。
1階に着くと3人は、エレベーターを降りた。
「それで何処行きたいんだよ」
ディアッカがアスランに外出先を聞いた。
「これで買い物とか言ったら俺は、お前を殺すぞ」
イザークの性格上冗談に聞こえないのが怖い。
「そんなんじゃないよ。
ただちょっとニコル達の墓参りさ」
それを聞いたイザークとディアッカは、立ち止まった。
「あまり来られないからな、街中には。
だから行っておきたいと思っただけなんだ」
アスランがそういうと3人は、再び歩き始めた。
※
3人は共同墓地に行きミゲル中尉とラスティ中尉の墓に花束を置き最後にニコル中尉の墓に花束を置き敬礼し弔った。
「積極的自衛権の行使。
やはりコロニー軍も動くのか」
アスランは、イザークからコロニー軍の動きを聞いた。
「仕方なかろう。
核まで撃たれてそれで何もしないというわけには、いかないだろう」
イザークがコロニー連邦共和国の内情を推測した。
「第一派攻撃の時も進撃に出たけどな、俺達は。
奴等は、間違いなくあれを地球を撃つ気だったと思うぜ」
ディアッカがコロニー軍が新型大量破壊兵器の使用目的を推測した。
「貴様は」
不意にイザークがアスランに質問した。
不意の質問にアスランは、驚いた。
「何をやっているんだこんな所で」
イザークの指摘で自分がなぜここに来たのか思い出した。
「オーブは?
どう動く?」
オーブ連合首長国の現代表であるカガリ・ユラ・アスハと個人的な繋がりを持つアスランは、国同士の垣根を超えて奥深くの情報まで知りえることができた。
そのためイザークは、オーブがどう動くのか気になっていた。
「首長達は、地球連合との同盟締結を強く望んでる。
それにカガリ自身は、地球連合との同盟は反対していない。
ただ宣戦布告し核攻撃を撃った国と同盟を結ぶことに心を痛めてる」
アスランは、オーブというよりカガリの状況を伝えた。
3人は、しばし沈黙した。
「前線に戻ってこい、アスラン」
イザークは、突然とんでもないことを言った。
思いがけない言葉にアスランは、驚いた。
「事情は、いろいろあるだろうが俺に任せろ。
だから通常部隊へ戻ってこい。
お前は」
イザークは、自分が軍法会議にかけられる事態になっても後を引き継いでくれるアスランを信頼してそういった。
「いや、しかし」
デュランダル大統領は、すでにその準備をしていると言いたかったが言葉にならなかった。
「俺だってこいつだって本当ならとっくに死んだはずの身だ」
イザークの説得にアスランがつけ入るすきがなかった。
「だがデュランダル議長は、こう言った。
『大人達の都合で始めた戦争に若者を送って死なせそこで誤ったのを罪と言って今また彼等を処分してしまったら一体誰が地球の明日を担うと言うのです。
辛い経験をした彼等達にこそ私は、平和な未来を築いてもらいたい』」
イザークがデュランダル大統領の弁明の言葉を言った。
「だから俺は、今も軍服を着ている。
それしか出来ることがないがそれでも何か出来るだろう。
地球や死んでいった仲間達の為に」
イザークは、今でも軍に身を置く理由を言った。
「イザーク」
アスランは、ものすごい覚悟で軍服を着てるのだと感心した。
「だからお前も何かしろ」
アスランは、ただ私怨に近い形で軍服を着ていた自分を恥ずかしく思った。
「それほどの力をただ無駄にする気か」
イザークは、とどめの質問をした。
アスランは、心の中で何かの決心が出来始めていた。
※
「全艦、軌道降下最終フェイズを発動する」
降下部隊の準備は、最終段階に入った。
※
宰相室では、ウナトがコロニー軍の宣言書に目を通していた。
そして全て目を通すとユウナに見せた。
「最早待ったなしですね」
ユウナは、それに軽く目を通すとそういった。
「大丈夫か?」
ウナトの心配の種は、カガリだった。
「カガリは、あのように見えてもそれほど馬鹿な娘ではありませんよ、父上。
まだ子供なだけで。
大丈夫です。
私がちゃんと説得しますよ。
結婚のこともあるしね。
いい加減今の自分の立場ってものを自覚してもらわないと」
ユウナは、楽観的だった。
※
キグナン少尉とシーサー少尉は、ア・バオア・クーへの上陸許可がでていたため上陸し繁華街を歩いていた。
「あそこにいるのは、ミサキ中尉じゃないか?」
キグナン少尉がミサキ中尉らしき人物を見つけシーサー少尉に確認させた。
「え?どこだ?」
シーサー少尉は、ミサキ中尉らしき人物を見つけられなかった。
「あの喫茶店のテラスに座ってる」
キグナン少尉は、そういいながらその人物を指さした。
「本当だ。
また甘いもの食べてるのか」
ミサキ中尉は、上陸前にドゴス・ギアの食堂でデザートを食べたばっかりなのをシーサー少尉も知っていたのであきれていた。
※
リーンフォースJrに待望のコロニー軍総司令部からの命令電文が来た。
「艦長」
通信長のストラー・ボヤージ少尉がマーカー艦長を呼んだ。
「どうした?」
マーカー艦長がストラー少尉に近づいた。
「総司令部からの暗号電文です」
ウルフ少尉は、興奮気味に報告した。
「解読できるか?」
マーカー艦長がストラー少尉に質問した。
「少々お待ちください」
ウルフ少尉が暗号を解読し始めた。
「『α艦隊は、明朝出航しマドラス基地に向かわれたし』とのことです」
作品名:機動戦士ガンダムRSD 第11話 選びし道 作家名:久世秀一