世界最後の一日1
カポーン
と。フロならではの、独特な音がした。
日本が昔教えてくれた通り、汗を流し、体を洗ってから湯につかる。
「・・・はぁ・・・」
体が芯まで温まり、思わず瞼を閉じてしまう。
(日本と入りたかった・・・)
・・・・・・・・・・・・。
(いや、待て、何だ今の!?)
お湯が熱いのと違う意味で、顔が赤くなる。
「こんなときまで・・・。何考えてんだ俺・・・。・・・・・ばかぁ・・・・・。」
口元まで湯船に入れ、ぶくぶくと泡をたてる。
すると、その時だった。
「旦那、旦那、」
どこか聞き覚えのある声。
「お前は・・・・。」
「河童ですよ、久しぶりに山から降りてきやした。」
何百年も前に知り合い、その日に別れた日本の妖怪、河童。
「ああ、あの時は世話になったな」
「いえいえ、あっしらの方が世話になって・・・」
「そういえばお前は、」
そこで止まる。
こいつらは世界が終わることを知っているのか。
それを問おうとしたのだが、残酷だ。
あまりにも残酷すぎる。
教えてはいけない、そんな現実を知らずに終わりを迎えてほしい。
そう思ったのだが、おもむろに相手は口を開いた。
「知ってますぜ、旦那。」
「・・・・・・・・・っ」
「明日、この世界が終わるんでやんしょ?」
「お前・・・」
河童は、悲しげに天を仰いだ。
「あっしらも妖怪なんすから。それくらいのこと、察しがついてまさぁ」
「日本さんを・・・。どうか日本さんを頼みます。」
ああ見えて、臆病者ですから。
そう残して、河童は帰っていった。
「・・・・・・・。分かった、日本は・・・俺が守る・・・」
そう、俺は誓った。
誰が聞いているわけではない、一人の誓い。