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同調率99%の少女(5) - 鎮守府Aの物語

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 外の出撃用水路に着いた那珂は水路の脇のスロープから降りていく。スロープの先には水路、小型の湾へとすぐに流れ出る。スロープから足を出す前に那珂は同調を始めた。三千花らは一体いつ同調するのかワクワクしながら待っていた。傍から見ると、艦娘が同調し始めたかどうかはわからないので三千花らは全く気づいていない。
 那珂は三千花らがきっとわからないだろうと察して、足を水路に浮かべる直前に上に向かって手を振って叫んだ。

「みっちゃーん、みんな〜! もう同調し始めたから、水に足をつけまーす! スロープ途中まで降りてきていいから、ちゃんと撮影してねー!」
「え?もう同調してるの? ……全然わからなかったわよ!」
 少しだけ文句を言いながら、三千花ら3人はスロープを降りて途中まで進んだ。那珂とは1m弱離れている。

 近くのスピーカーから明石の声が発せられた。
「第一水路、艤装装着者、ゲート、オールグリーン。軽巡洋艦那珂、それでは発進して下さい。」
 そのあと、提督の声も響いてきた。
「軽巡那珂、暁の水平線に勝利を。」
 那珂も真面目にその言葉を反芻する。
「暁の水平線に勝利を。」
 それは、鎮守府Aでは出撃時にたまに言われる、いわば旅の安全を祈る行為と同様のものである。掛け声をかけるのは何も提督に限ったことではなく、気になる人がいればその都度誰かがする流れである。

 那珂の足元に、波紋が立ち始める。ボートなどでモーターのあたりでよく見る波紋だ。波紋がある程度湧き上がったあと、それらはすべて静かに消え去った。すると那珂は水面をまるでアイススケートをするかのようにスイ〜っと進み始めた。三千花らにとって(一般人や艦娘自体も)その仕組みはわからないが、その艤装が人間を船なしで海上を自在に移動させる素晴らしい機械なのだと改めて思い知った瞬間だった。

「もっとすごい出撃かと思ったけど、これはこれで不思議な感じで感動だ……」
 三戸は目を輝かせて、そのすべてをデジカメで撮影し続ける。
「会長、スケート選手みたいで素敵です。」
 和子は頬を少し赤らめて羨望の眼差しで那珂を見ている。
 やがてスロープのところからは那珂が見えなくなったので三千花は見える場所に行こうと二人を促して駆け出す。3人はスロープを上がりきると、工廠のほうとは逆の海に向かって水路沿いを走っていき、工廠の敷地を出て那珂が見える位置にたどり着いた。

「お〜い!みっちゃーん!」
 水路を出て海岸線から少し離れたところで那珂は三千花たちに手を振った直後、思い切りしゃがんで力を溜めるような仕草をして、そして掛け声とともに飛び上がった。

「う〜〜〜てりゃーーー!!」

 艤装との同調により脚力も向上していた彼女は常人よりも、しかも常識で考えれば人間がジャンプすることなどありえない海面からジャンプした。その跳躍力と高さに、三千花たちはみな那珂のいる空中に向けて首を引いて見上げる。

「は、ははは……会長すげぇや。なんだあれ。」
「あんなに高くジャンプするなんて……普通の人間では考えられませんね……。」
「ちょっとなみえったら、いくら艦娘になってるからってはしゃぎ過ぎのレベルを超えてるわよ……。」
 三戸、和子、そして三千花は目の前で行われた艦娘らしいアクションその2を見て、呆れと感心が混じった感情を持って感想を口にしあった。
 そして那珂はゆっくり、そして少しずつ加速して海面に勢い良く着水した。

「あ、会長パンツ丸見えだわ〜〜」
 何気なく三戸がつぶやいたその一言に素早く反応した三千花と和子はギロリと睨みつけた。
「っと思ったけど見てません見てませんー」
 三千花ははぁ……と溜息を一つつき、那珂に向かって大声で注意した。
「ちょっとーーーー!!なみえーーー!!あんたの見えてるわよーーーー!ここからだとーーー!」
 あえて何が、というのは友人の名誉のためにも三千花は言うのをやめておいた。着水して方向転換した那珂は三千花の言うことがわからなかったのでそのままサラリと流すことにした。そのため那珂の本日の下着は、三千花・和子・三戸など、極々一部の秘密となった。

 三千花らが工廠とは逆の海沿いの道路脇に姿を表したのを確認し、那珂はスィ〜と小船かサーフィンように近寄り三千花らに手を振った。お返しにと三千花、三戸、和子の3人も手を振り返し、三戸と和子は手に持っていたデジカメやタブレットを掲げて撮影しているという意思表示をする。
 3人のうしろにはいつの間にか提督と明石も来ていた。
「さ、存分に撮影してくれ。彼女が艦娘の正しい知識を普及するための礎になるなら俺にとっても、彼女にとっても願ってもないことのはずだ。」
 そう言って提督が指さした先にいる少女の水上移動とその立ち居振る舞いはそのすべてが優雅で美しく、その場にいた全員にとってその少女が夢見たアイドルそのもの、注目を浴びるにふさわしい存在に見えた。