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黄金の太陽THE LEGEND OF SOL 25

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 カロンは身を委ねるつもりだと言うが、ある器が決まった量しか入れられないように、ガルシアという器が小さければ壊れてしまう。
 それに、やはり罠の可能性も拭いきれなかった。
 これまで言っていたこと全てが虚言であり、力を貸すふりをして、死神らしくガルシアの魂を刈り取り、今の完全に乱れた仲間との連繋に付け入るのである。
 相手は得体の知れない化物じみた見た目である。そうした罠がある可能性も低くなかった。
「どうした、一体何を悩むことがある? 自慢するようじゃが、わしは死神の中でもかなりの力を持っているつもりじゃ。そんな力が手に入れば、主にとってよきことじゃろう?」
 ガルシアはまだ答えを出さない。
「いつまで悩んでいるつもり? 決められないのなら、私がその死神を斬るわよ」
 悩み、答えを決められないガルシアに、次第にしびれを切らし始めたのはメガエラである。
「兄さん、今回ばっかりは、私もメガエラに賛成するわ。そんな訳の分からない奴の力なんて必要ないわ」
 ジャスミンもすっかりカロンへと敵意を向けていた。
「まあまあ、落ち着き、メガエラさん、ジャスミンさん」
「きっとガルシアなりの考えはあるはずです。今は待ちましょう」
 アズールとピカードが血気にはやった二人を止めるものの、その勢いは止まるところを知らない。
 ガルシアに早急な決断が迫られた時だった。
「……よし、決めた」
 ガルシアはついに決断を下す。
「カロン、お前の力、存分に使わせてもらう」
 カロンを除く、その場にいた全ての者が驚きを見せる。
「ひゃーひゃひゃひゃ! ようやく決心が付いたようじゃの」
 カロンは大笑いである。
「兄さん、本気なの!? 相手はデュラハンの手下なのよ!?」
「ジャスミン、よく考えるんだ。デュラハンの力は全く分からない。正直な所本当に勝てるのか不安なほどにな。しかし、カロンという武器を得られれば、低い勝算も少しは上がる、そうは思わんか?」
「それは……」
 ジャスミンは言葉に窮する。
「そぉれ、そうと決まれば容赦せんぞい!」
 カロンは両手の長い爪をガルシアに向けて振りかざしてきた。
「きゃっ!?」
『サモンクロス・デーモン!』
 ガルシアは咄嗟にジャスミンの肩を掴んで引き寄せ、後ろに下げさせると同時に、黒魔術で魔物と融合した。
 ガルシアは、頑丈な体が自慢の魔物、デーモンと融合することで体を硬化させ、カロンの爪を防いだ。
「ほう、さすがじゃな、一瞬の判断でわしの攻撃を止められる魔物を選び、そして融合するとは……」
 カロンはゆらゆらと浮遊しながらガルシアから離れていく。同時にガルシアも融合を解除する。
「カロン、貴様どういうつもりだ! オレ達に力を貸すんじゃなかったのか!?」
 ジェラルドは、まるで犬が吠えかかるように怒鳴った。
「そうよ! やっぱりあなた敵だったのね!」
 ジャスミンも怒りをあらわにする。
 身を委ねる、などと宣いながら、カロンは攻撃してきた。意図を理解できない者からすれば当然の反応であった。
「まあ落ち着け、二人とも」
 敵意を示す二人を止めたのは、シンであった。
「シン、お前まで止めるのか!?」
「シン、あなた、まさか敵に味方するの!?」
 言葉によっては敵と見なす、と二人のカロンに対する敵意は一時、シンへと向けられる。
「そんなに睨むな、二人とも。オレの力通眼はかなりの精度がある。あのガイコツジジイに殺意はない。それにガルシアを見てみろ。あいつはちっとも慌ててないだろう?」
 二人はガルシアを見た。シンの言う通り、ガルシアには戸惑いが一切みられず、融合を解いた後も落ち着き払っている。
 そしてシンはカロンを見据える。
「あのガイコツジジイ、本当にガルシアに力を与えるつもりだな。さっきの攻撃には殺気は感じられなかった。まるでガルシアを試そうとしたように……」
 ひゃひゃひゃ、とカロンは相変わらず声のない笑いを上げる。
「なるほど、シンといったかの? 主の目はさながら千里眼じゃの。女のような顔をしながら、戦いになれているようじゃな、しっかりと本質を見ておる」
「ふん、ぬかせ……」
 カロンの言葉に対し、シンは不機嫌そうに目を背ける。
 ガルシアには、精密な判断能力があり、あの状況下において的確な魔物を召喚した。そして瞬時に融合を果たす事でカロンの攻撃を受け止めた。これによってガルシアに十分足り得る魔力がある事も分かった。
 後はカロンを宿すだけの器がガルシアにあるかどうか、それを推し量るだけである。
「大体の事はさっきの反応で分かったわい。タナトスの力を発するのだ。わしの全力を見せてくれよう!」
 ガルシアは小さく笑う。
「ふっ、ならば示してみせよ!」
 ガルシアは漆黒の魔導書を開き、高らかに詠唱した。
「地獄の眷属召喚、『サモン・タナトス』!」
 魔導書の挿し絵が実体化し、幾重にも及ぶ布を身に纏い、獣の頭蓋骨をかぶる死神、タナトスがその姿を現す。
「魔との融合、『サモンクロス・タナトス』!」
 タナトスはガルシアに重なり、ガルシアと一体化した。
 デーモンの時とは違い、見た目に大きな変化はないが、ガルシアに死神の力が宿った。
 ガルシアが死神の力を得ると、カロンは全力をもってガルシアに当たる。
「行くぞ、これに耐えきれるか!?」
 カロンが念じると、辺りが強風に包まれる。
 風はどんどん勢力を増していき、激しく渦巻く竜巻と化した。カロンは自らが作り出した竜巻に、暗黒の力を纏わせる。
 カロンの力を宿した竜巻は、漆黒の渦になった。
「冥府の業風、『カース・サイクロン』!」
 カロンは魔術で作り出した竜巻を、ガルシア達に向けて放った。
「ぐっ……! 何だこれは、吸い込まれそうだ……!」
「こんのやろう……!」
 ジェラルド達は踏ん張り、強烈な吸引力を持つ竜巻に巻き込まれまいとした。しかし、地面に根を張るつもりで足に力を入れても、その体は少しずつ竜巻へと引き寄せられていく。
「ひゃひゃひゃ……! その竜巻は呪詛の込められた竜巻じゃ。それはあらゆるものを引き込み、命を吸い取るぞ!」
 カロンの竜巻に引き寄せられた者には死が待ち受けている。それを聞かされた仲間達は、更に力を込めて踏ん張りを効かせた。
 しかしそれでも、仲間達は竜巻へと引き込まれていく。
 そんな竜巻を前にしても、ガルシアだけはそれをまるでものともしていなかった。
 白いガウンの裾をめくられ、髪を激しく乱されても、その場にまるで岩が立つように全く微動だにしていなかった。
「ガルシア!?」
 その身を大岩のごとく不動のものにしていたガルシアが、自らカロンの引き起こした竜巻に近付き始めた。
「何をしてるのだ、死ぬ気か!?」
「兄さん!」
 ユピターやジャスミン、その他の仲間達がガルシアへと叫ぶが、ガルシアはただ黙って前に進むだけである。
 ついにガルシアは、竜巻をすぐ目の前にする距離まで到達した。すると突然に、あたかも薪を火にくべるように、魔導書を竜巻へと投げ込んだ。
 その瞬間、信じがたい現象が皆の前に引き起こされる。
 強風の中、無惨にも振り乱され、引き裂かれようかと思われた魔導書ネクロノミコンは、竜巻の中心部に浮遊した。