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黄金の太陽THE LEGEND OF SOL 25

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「スターマジシャン、ビーストサマナー、そしてデモンズセンチネル……、我が配下を打ち倒した事は褒めおこう、人間どもよ……」
 デュラハンの言葉は続く。
「だが、奴らは所詮捨て駒にすぎん! 暗黒錬金術の完成、その為の礎を築きさえすれば後はどうなろうが知ったことではない!」
 デュラハンは自らの配下だったもの、一見寵愛していたようなシレーネさえも、自らの野望の手駒でしかなかったと言い切った。
「むしろ貴様らには少し感謝しているくらいだ。我が手に堕ちながら、まだ我を討たんとしていたヒースを倒してくれたのだからな」
 この言葉は、シンとユピターの怒りを買った。
「貴様、ヒースを愚弄するか……!」
「ふざけるんじゃねえ! あいつが、ヒースがどれだけ苦しんできたと思ってやがる!?」
「ふはは、憎悪の念に駆られた者など、魔物と同じ! 故に憎しみから来る力を利用させてもらった。過去の大戦においてはなかなかの働きをしてくれたぞ?」
 シンは双刀を抜き、飛び上がって空中のデュラハンへと振るった。このデュラハンに攻撃したところで無駄なことと分かっていたが、それでも斬りつけずにはいられなかった。
「ふん、血の気の多い連中だ……」
 デュラハンは今度は、一同の背後へと出現する。
「我はアネモス神殿の最奥にいる。死に急ぎたくば来るがいい。その小僧のもとに、貴様らもすぐに送ってやろう……」
 デュラハンの姿は霧へと消えていった。
「デュラハンめ……!」
 シンは地に下りた。
「上等だぜデュラハンの野郎、ロビンの仇は必ず討つ!」
「ああ……、絶対に生かしておかねえ!」
「……デュラハンを倒してイリスを助ける。それが私の使命……!」
「ヒースを陥れ、そして侮辱した罪、必ずあがなってもらう!」
 シン、ジェラルド、メガエラ、そしてユピターの四名はすぐにでもデュラハンと戦う姿勢であった。
「……待つんだ四人とも」
 血気にはやるシン達を、ガルシアが止める。
「何を待つことがある、ガルシア!? すぐにデュラハンの所にカチコミをかける。これが今できる最善の事だろう!?」
「落ち着くんだ、みんな。そんな怒りに任せた特攻は蛮勇だ。絶対に奴には勝てない」
 ガルシアは宥めるが、怒りに満ちたシン達を止めるには至らない。
「目の前でロビン殺されて臆病風に吹かれたか!? だったらいい、お前達はそこでずっと恐怖に震えてろ! デュラハンはオレ達が必ずぶっ飛ばす!」
 シン達はすぐに駆け出そうとしている。
「待てというのが分からないのか!?」
 ガルシアは怒鳴り声を上げる。
「ソルブレードを使えるロビンは死に、かつてデュラハンを封印するまでに至ったというイリスもいない。奴を倒す希望はほぼ絶たれてしまった。だからこそ、今は落ち着いて足並みを揃えるのだ。奴はこれまで戦ってきた敵の中でも底が知れない。怒りに身を任せていては、返り討ちにあうのは必然だ」
「っ! それは……」
 シンは言葉に窮してしまう。
「あたしも……」
 ヒナが言う。
「あたしも、ガルシアの意見に賛成よ。さっき出てきたデュラハンは分身体だった。分身でもその力は読みきれなかった。天眼の能力を持つあたしでさえよ……」
 ヒナの天眼をもってしても、デュラハンの力は未知数であった。今のまるで統率のとれていないシン達が当たった所で、勝てる可能性は皆無である。
「それに、俺達全員が討伐に向かっては、誰がロビンの骸を守ると言うのだ……?」
 幼馴染みの急死を前にしたことで、本当はガルシアもジェラルドらと同じく、すぐにでもデュラハンを倒しに行きたい気持ちであった。
 しかしそれ以上に、ガルシアの悲しみは大きかった。
 幼い頃から共に育ち、三年前の事故で死別することになったかと思いきや、ガルシアの奇跡的生還により再びで会うことができた。
 目的の違いから一度は敵対したものの、ついには和解し、こうして今日のこの日まで共に旅してきた。
 三年という長い時を経て再会できた親友が、デュラハンの凶刃にて死亡してしまった。
 ガルシアは悲しく、そして悔しかった。
「くっ……」
 ガルシアはロビンとのこれまでを思い返し、目にため込んだ涙をこぼした。
 瞳孔を開ききり、事切れるロビンの目を閉じてやった。開いたままの口も塞いでやり、まるで静かに眠っているかのような姿にした。
「……ハモ殿、この辺りにロビンを安置できる場所はないだろうか?」
「ここはギアナ村の跡地です。だから私の家もあるはずなのですが……」
 瘴気の根源を絶ち、ギアナ村だけでなく世界の瘴気は消え去ったが、壊れたものまでは修復されるはずがなかった。
 ハモの家も例外なく、一際強い瘴気によって腐食していた。
「残念ですが、私の家も……」
「あの、確かここから西の海に、ロビン達が乗っていたレムリアの船がありましたよね?」
 ピカードが言うと、皆思い出した。
 翼を取り付けられた船は、ピカードがウェイアードの調査のため、レムリアを出た時のレムリアの船だった。
 アテカ大陸の西に停泊しているのは、ロビン達が今は亡きトレビの支配者バビより受けた船であった。
 その船は、かつて一行がレムリアへ向けて、翼のある船で飛び立った時、マーズ灯台を灯して全てを終わらせた後にピカードが回収する約束で停めていたものだった。
「海上にあったのなら、多分ギアナ村ほど瘴気の影響は受けていないはずです。それに、停泊の際エナジーの動力は生きたままにしておきました」
 一度、ピカードはレムリアの船の動力源である黒水晶を奪われた時、ピカードの船はエナジーを失い、動かないばかりか魔物の巣窟にされてしまっていた。
 それを防ぐためにも、ピカードは船の動力部をそのままにしておいたのだった。
『プリディクト』
 ハモは予知のエナジーを使い、ここより西の様子を見た。
 絢爛豪華なレムリアの船は、確かに西の入り江に無事な姿で停泊していた。そこならば、デュラハンの居城となったアネモス神殿の近くにいるよりはだいぶ安全であると思われた。
「ピカードの言う船は、どうやら無事のようです」
 ハモはエナジーを解除し、今見えた船の様子を皆に伝えた。
「それはよかった。ではすぐにでも向かおう。ロビンが硬直し始めてきた……」
 それを聞いたガルシアは、すぐに船に向かうことにした。
 デュラハンへ特攻を考えていた者達もひとまず落ち着きを取り戻した。
「そう、だよな。ロビンを弔うのが先だよな。オレ達、ちょっと頭に血が上ってたな……」
「……騎士たる者、殉じた仲間がいればまずは葬送するもの。私は憎しみのあまり大切な事を忘れていたようだ」
「……ジャスミンが行かないんなら、仕方ないわね……」
「ロビンとヒースのためにも、デュラハンは確実に仕留めなければ。そのためには、やっぱり足並み揃えなきゃ勝ち目はないか……」
 仲間を殺され、血気にはやっていた者達も、今は出るべきではないと悟った。
「すまない、ガルシア。さっきは悪いことを言った」
 シンは怒りのあまりに、弾みで放った暴言を詫びる。
「気にしないでくれ、俺の方もつい怒鳴ってしまった。俺も謝ろう、悪かった。それでは船へと向かおうか……」