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黄金の太陽THE LEGEND OF SOL 25

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「これにてロビンの魂は神のみもとへ逝きました。神のもとへ逝ったロビンに祝福を……。以上で葬儀は終わりとします」
 ふと、船室のドアが開いた。
「……葬儀とやらは終わったのかしら? ならいつまでもめそめそしてないで早くしなさい」
 メガエラは不躾に言い放つ。
「メガエラ殿、そのような言い方は……」
「人間は死んだら天界に逝く。そしてその天界には神ならいくらでもいるわ。一体どの神の所に逝くというのか、馬鹿げた儀式ね」
 メガエラは葬儀の存在そのものを否定するような物言いをする。
 それも仕方のないことだった。人間は死後、天界で天者となり、転生のときまで永い時を過ごす。天界では単なる天者が神に会うことなど殆んどありえない事と、メガエラは重々承知している。
 神の所へ逝った祝福とも言える人間の葬儀など、彼女には馬鹿らしい事だったのだ。
「メガエラ……、あなたには血も涙もないわ……!」
 幼馴染みであり、密かにロビンへ好意を寄せていたジャスミンは、メガエラへ憤りを見せる。
「ジャスミン、違うわ。私は事実を言ったまでよ。その子はもう天者になって二度と帰って……」
「黙りなさい! それ以上ロビンをけなすような事を言ったら、許さないわよ!」
 ジャスミンは泣き腫らした目でメガエラを睨んだ。大喧嘩になってもおかしくない雰囲気である。
「落ち着け、ジャスミン」
 ガルシアはいきり立つジャスミンを止めた。
「兄さん、なんで止めるの!? あんなふうに言われて兄さんは悔しくないの!?」
 ジャスミンの怒りは増すばかりであった。
「メガエラさん、確かに自分の言う通りやけど、オレらと人間の感覚を一緒にしたらあかん」
 アズールは、ロビンの死を嘆く者の気持ちを踏みにじるような言い方をしたメガエラを諭す。
「なによ、私は間違ったことを言ったかしら。こんな所でいつまでも腑抜けられてちゃ、デュラハンなんか倒せっこないじゃない!?」
 メガエラは何を言われても、言葉を撤回するつもりはないようだった。
「こうなったら、力ずくでも立ち直ってもらうわよ……!」
 ついには、メガエラは剣を取った。
「望むところよ、何がなんでもさっきの言葉、訂正してもらうわ!」
 ジャスミンはエナジーを身に纏った。
 仲間割れが始まり、一同は騒然とした。
「落ち着けと言うのが分からんのか!?」
 ガルシアは怒鳴り声をあげる。
「今はこのように仲間内で争っている場合ではないだろう! こんな事をしていて、ロビンが安心して眠れるわけがなかろう!?」
 ガルシアの怒鳴り声に驚いたのか、ジャスミンとメガエラは動きを止め、辺りは静寂に包まれた。
「今、俺達がすべきは、憎きデュラハンを討ち取り、世界の脅威を取り払うこと。そして安寧を取り戻した地で安らかに眠るのがロビンの望み、そうは思わぬか?」
 ガルシアの言葉に誤りはなかった。
 いくら願っても、どのような手を尽くしても、死んだ人間が生き返ることは決してない。
 ましてや、遺体の前で仲間割れを起こすなど、死人を更に悲しませる事となる。
「僕はガルシアの言う通りだと思いますよ」
 ピカードがガルシアの言葉に同意する。
「私もだ。私も天界の者ではあるが、人の子である皆の気持ちは分かる」
 ユピターは神子であるが、ガルシアに賛同を示す。しかし、彼はまた、メガエラの意見にも同意していた。
「しかし、メガエラ殿の言うことにも一理ある。大切な仲間を失った悲しみは分かるが、今は悲しみに暮れる時ではない、と私は思うのだ」
「そうねユピター、あたしもそう思う」
「姉貴、メガエラの肩を持つって言うのか!?」
 シンもメガエラに対して憤りを持っていた。
「ヒナさん、あんなひどい言い方されてどうして……!?」
「落ち着きなさい、イワン」
「ハモ姉さん……」
 シンとイワンは、それぞれ自らの姉に諭される。
「シン、イワン、よく考えてごらんなさい。確かにあたしも少しカチンと来たけど、大局を見ればメガエラの言う通りよ。あたし達がしなきゃいけないのは、こんな仲間割れなんかじゃない、デュラハンを倒すこと。……悲しむのも泣くのなんて、後ですればいいことじゃない……」
 ヒナは言いながら抑えきれず、涙を頬に伝わせた。
「ぐすっ、偉そうな事言いながらダメねあたし……」
 悲しみの連鎖に泣くヒナを見て、すっかり喧嘩腰になっていた二人は構えを解いた。
「……メガエラ、今はあなたの言葉を忘れるわ。ごめんなさい、むきになって」
 ジャスミンはエナジーを解除する。
「フン、分かればいいのよ、分かれば……」
 メガエラも剣を空間から消滅させた。
「まっ、まあ、私ももう少し言葉を選ぶべきだったわね。だから私も謝っておくわ。……悪かったわね」
 メガエラは歯切れ悪く謝った。
「あのメガエラさんが、謝るやと……!?」
 まるで世界の終わりを目にしたように驚いたのは、アズールである。
「メガエラさん、どしたん、頭でも打ったんか!?」
「なっ、違うわよ! デュラハンの次に倒すべき相手、ジャスミンにいつまでも腑抜けられてちゃおもしろくないから、さっさと元気になってもらいたいだけよ!」
 メガエラは早口で説明する。
「元気になって……!?」
 アズールは更に驚かされた。彼の知っているメガエラであれば、絶対に他人をいたわるような言葉は使わないからである。
「だから……!」
 メガエラは言葉が続かない。
「お二方、何を言い争っているのか知らぬが、その辺にしていただけないか?」
 ユピターが口を挟んだ。
 メガエラは気が付くと、すっかり感傷から覚めたガルシア達の視線が、自身に集まっていた。
 メガエラは苦し紛れに言い放つ。
「もう、みんな腑抜けてないでさっさとデュラハンを倒しに行くわよ!」
    ※※※
 ロビンの小さな葬儀を終え、ガルシア達は仇敵、デュラハンのもとへ向かうべく作戦会議を兼ねて話し合いをしていた。
 もとより、デュラハンを倒しうる戦力にならないハモは、この場に留まり、ロビンの亡骸を守る役目を担った。
「あたしもここに残るわ」
 不意に言い出したのはヒナであった。
「姉貴、何を言ってんだよ!? 相手はとんでもない力を持つ奴だ、姉貴ほどの使い手に抜けられたら……」
「シン、今のあたしは戦えないわ」
 シンは気が付いた。ヒナは、ヒースとの戦いによって剣を破損しており、今彼女の腰には何も差されていない。
 加えて体に大きな反動が帰ってくる技を多用した事により、見た目に異常はないが、しばらく全力で動けないほどにヒナの筋肉、神経は傷付いていた。
「分かったかしら、剣のない剣士なんてなんの役にも立たないわ。おまけにあたしには強いエナジーは使えない。対人用の体術もデュラハンに通じるはずがない。体もボロボロで、はっきり言って足手まといなのよ、あたしは」
 ヒナには天眼という特殊能力がある。止刻法という大技もある。しかし、それらは技自体で相手をどうこうできるわけでなく、武器がなければ大した役に立たない。
 同じ能力を持つシンにはよく分かった。