ドラクエ:disorder 歪みゆく英雄譚の交錯 第1話
『ソレハコノ世界デノ、生存率ダ。オ前タチノ状況ヤ気持チデ大キク上下スル。生存者全員ノソレガ100ニ達シタ場合、ソノ瞬間コノゲームハ終了トナル。ソレマデニ死ンダ者モ含メ、オ前タチハ全員元ノ世界ニ還ルコトガデキル』
・・・・・!!
『死ンダ者ヲ蘇ラセルコトハ禁止スル。蘇生類ノ魔法ハスベテ封印シタ。
・・・ソシテ勝チ残ッタ最後ノヒトリニハ栄光ガ訪レル。ドノヨウナモノデモヒトツダケ、願イガ叶ウノダ』
・・・何・・・!?
『サア、ゲームヲ始メヨウ。全員デ元ノ世界ニ還ル道ヲ選ブカ、ソレトモ己ノ願望ヲ刃トスルカ。
助ケ合ウモ殺シ合ウモ、オ前タチ次第ダ。ゲームスタート』
目玉が言い終わった瞬間、カッと目の前が真っ白になった。
・・・・・・意識が薄れていく。
___助け合うも殺し合うも、お前たち次第だ_________
・・・ふざけるな、誰が殺し合いなどするものか。
俺は絶対、自分のために誰かを殺すなんてことはしない。必ず俺たちは全員で、このわけのわからない世界から出て帰るんだ。
薄れゆく意識の中、俺はそう決心し、念じた。
だがそれと同時に、小さな不安も生まれた。
俺がその不安の原因を探そうとする前に、俺の意識は途絶えた______
1st stage Blood Garden
1日目 01時00分 ―レック―
いきなり知らないところで目が覚めて、気味の悪い目玉みたいなやつにゲームだかなんだかの説明をされ、気がつくとまた変なところにいた。
・・・体がひどく重い。
とりあえず深呼吸をしようと思って空気を吸い込んだ途端、オレを凄まじい吐き気が襲った。
レック「うぇっ・・・!?が、げほッ」
両手で口を抑えて咳き込む。乾いた血のような不快な匂いが鼻の奥まで広がっている。
レック「く、はっ・・・はぁっ・・・はぁ・・・」
なるべく鼻で息をしないようにしながら顔を上げると、そこには目を疑うような景色が広がっていた・・・・・・・・。
レック「・・・・んだよ、コレ・・・」
よろけながら立ち上がり、呆然とする。
周りにいる奴らも同じような顔をしていた。
血のような色をした禍々しい空。漆黒の雲。
紫色の枯れ木には血管のようなものが巻きつき、ところどころ、血にも見える赤い樹液が滴っている。
どうやらオレたちがいるのは高い崖の上のようで、その異様な世界を一望することができた。
どっかの地獄みたいなデカい血の池やら、さっきの木が集まった気持ち悪い森やら、赤い液体が広範囲にブチまけられたどす黒い草原みたいなのもある。
唯一そんな血液天国に侵食されてないのが、すみっこにある小さな屋敷。
遠いのでよくは見えないが柵に囲われているようで、その中だけはキレイなもんだった。
・・・しっかし、とにかく匂いがひどいな。
長くいると肺をやられちまうような気がしてならない。
「・・・ぅ・・・ん・・・」
となりに倒れてる奴がうめき声をあげた。
・・・あの真っ暗なところで、具合が悪そうだったので声をかけた奴だ。
そいつはうつぶせている状態から肘を使って起き上がろうとしたが、案の定
次の瞬間にはさっきのオレと同じように激しく咳き込み出した。
レック「・・・おい、大丈夫か?」
聞くと、苦しそうに肩で息をしながらそいつは力なく頷いた。
・・・うーん、大丈夫そうには見えねえんだけどな。
レック「ほら、肩貸してやるから。しっかりしろ」
「・・・・・・・・・・。」
とても1人では立てそうにないので、しゃがみ込んでそいつの手を取り自分の肩に回す。
レック「・・・いくぞ。よっ・・・うぉ?」
一緒に立ち上がった時、オレは思わず変な声を上げてしまった。
そいつの体がびっくりするぐらい軽かったからだ。
背はオレより少し高いぐらいなのに・・・ちょっと心配になるぐらい軽かった。
それと、手が異様に冷たい。
・・・こいつ、本当に大丈夫なのか?
レック「平気か?・・・おーい?」
背中をポンポンと叩いてやると、虚ろだった目がはっと気付いたように開かれた。
「・・・・・あ・・・ご、ごめん」
あわててオレから離れて頭を下げた。
・・・今目が覚めた感じなのかな?
レック「いいってことよ。体は大丈夫か?」
「ああ、まあ・・・」
レック「そっか、よかったよかった」
「・・・・・・・ここは・・・・・?」
レック「さあなぁ。たぶんみんなわかんねえんじゃねえの」
「・・・・・・・・・。」
そいつは片手で喉元を抑え、顔をしかめた。
そりゃあこんな空気じゃ、気分が悪くなって当然だ。
・・・あ、そういえば・・・
レック「なあ、そういやまだ名前聞いてなかったよな。オレはレック、お前は?」
「・・・・ソロ」
レック「へえ、珍しい名前だな。・・・お前さあ、ちゃんと栄養とってるか?」
ソロ「え?」
レック「いや、さっきスゲー軽かったからさ。体重いくつよ?オレ63はあんぞ?」
ソロはちょっと困ったような顔をしている。
・・・オレってよく周りから馴れ馴れしいって言われるけど、やっぱそうなのかな。
ソロ「俺もそれくらいだと思うけど・・・」
レック「うっそだー」
ソロ「・・・フフッ」
レック「ん?どした?」
ソロ「いや・・・明るい奴だなあと思って」
レック「だろ?よく言われるよ」
オレがそう言って笑うと、ソロも小さく笑った。
1日目 01時16分 ―ロト―
・・・一体何なんだ、ここは・・・・・・。鉄のような不快な匂いが鼻をつく。
・・・あまりここの空気を吸いたくないな。
それにしても、こんなところで殺し合いをしろと言うのか?
まったく・・・・何もかもふざけてやがる。
一刻も早くここから出たい。
1日目 01時15分 ―サマル―
・・・・うぅ、気持ち悪い・・・・・・・・・。
さっきからわけわかんないことばっかだし、なんなのこれ!?
せっかくアレンやムーンたちもいたのに、声をかけるひますらなかった。
それに、頭がぼーっとしててもしかしたら見間違えたのかもしれないけど・・・
・・・・・・・・ロト様が、いた。
絵本で読んで憧れた、伝説の勇者様。
まさかロト様もこのゲームに・・・?
ボクは立ち上がって、周りを見渡す。
・・・・・・・・!!
・・・間違いない。
肖像画で見た通りの、ロト様が・・・・・・・・・
サマル「・・・・・・嘘・・・本物の・・・・・」
目が釘付けになる。
全部、肖像画の通りの。
ずっと憧れてた、一回でいいから会ってみたいと思ってた・・・ロト様が・・・・・・!
「・・・サマル!!」
「!」
聞き覚えのある声。
振り返ると、見覚えのある仲間たちの姿。一気に体が軽くなったような気がした。
アレンとムーン・・・・・・・。
アレン「大丈夫か!?」
サマル「アレン・・・!」
駆け寄ってくるアレンに思わず抱きつく。
ムーンも息を切らして走ってきた。
ムーン「よかったですわ・・・本当によかった・・・」
ボクたちは少しの間、お互いの無事を喜び合った。
3人並んで話しているとアレンがふと顔を上げ、