ドラクエ:disorder 歪みゆく英雄譚の交錯 第2話
脱出までの制限時間はありません。死者の数も問いません。ただ、この世界より出ればいいのです。
ルールの詳細はゲームの冒頭で申し上げた通りです。このルールは今後の全てのゲームに適用されますので、どうか破る、忘れるなどされませぬよう、ご注意ください。
尚、この第一のゲーム【トライアングル】は1人の“犠牲者”と、その他11人が別行動をし
同時進行式で脱出を目指すゲームとなっております。
“犠牲者”はこちらで配慮をし選ばせていただきますが、他の方がご希望でしたら変更することも可能です。ただし、それはゲーム開始から3日以内に限らせていただきます。
追記 “犠牲者”が死ぬと、皆様側がゲームにおいて非常に不利な状況となります。
“犠牲者”は他の11人に情報などを伝える役目を担う他、体力、精神力ともに激しく浪費することとなるでしょう。変更される場合は、その辺りに自信のある方が努めることをお勧めします』」
・・・・・・・・・・・・・・・。
オレたちは暫く、誰も一言も喋らなかった。
ロト「・・・・・トライアングル・・・」
アベル「三角形という意味だね。・・・一体どういうゲームなんだろう」
アレフ「しかし・・・“犠牲者”のくだりが気になりますね」
サマル「1人だけ離れて行動するってことでしょ?・・・うぅ、ボクやだなあ・・・」
アレン「でも情報を伝える役目ってことは、通信機か何かが支給されるんじゃないのか?」
ムーン「そうとも言い切れませんわ。例えば・・・書き残しをして、時間差で手がかりを残さないといけないのかもしれませんし」
エイト「・・・そうだとしたら、かなり重大な役目になりますね」
オレはみんなの話に耳を傾けながらも、頭では違うことを考えていた。
・・・オレの隣にいるソロだが、さっきからずっと話に相槌を打つこともせず、さっきの扉をじっと見つめている。
不自然なほど落ち着き払っていて、まるで1人だけ周りとは違う世界にいるみたいだった。
ソロ「・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
レック「・・・・・なあ、話聞いてるか?」
ソロ「ん?・・・あぁ、聞いてるよ」
言いながらも、やっぱり視線を扉から離そうとはしない。
レック「そっちになんかあるのか?」
ソロ「いや、少し気になっただけだ」
オレはソロの視線の先にある扉を見てみた。
・・・別段変わったところは見られない。
その時、ソロがふと俯いて溜め息をついた。
その表情は今までとは違い、重く沈んだような・・・険しいものだった。
レック「・・・どうかしたのか?」
ソロ「・・・・・・・別に・・・・・・・・」
ソロは小さく掠れるような声で呟いたあと、こうつけ加えた。
・・・・・・・どうせ、言っても無駄だ。
オレがその言葉の意味を問おうとした瞬間、誰かに声をかけられた。
ロト「2人とも、行くぞ。とりあえず休憩できる場所を探すんだそうだ」
レック「あ・・・ああ、わかった」
ソロ「・・・・・・・。」
オレとソロは、もう移動し始めているみんなの後を追うようにして歩き出した。
1日目 03時37分 ―エイト―
ロトさんが呼びかけると、何か話しているようだった2人もついてきた。
アベルさんの提案で、僕たちはとりあえず休める場所を確保しに動き、屋敷の探索は後回しにすることにした。
僕たちは今、広間の奥―レックさんたちが見つけた鍵を使って扉を開け、廊下を進んでいる。
この屋敷はけっこう広い。
外から見た時はそれほどでもなかったが、見ると広間の隅に2階へ続く階段まであった。
アルス「モンスターがいたりは・・・しないよね?」
ナイン「魔物の気配は感じられませんので大丈夫だと思います。
・・・でも、何だか・・・」
アルス「?」
ナイン「何だかすごく邪悪な・・・・・・・・・悪意を感じるんです。
魔物の本能的な殺意とは違う・・・もっと複雑で入り組んだ、計算的な悪意・・・」
エイト「・・・じゃあやっぱりここも安全な場所ではないと?」
ナイン「そういうわけではないのですが・・・」
計算的な悪意・・・か。
トラップでも仕掛けてあるんだろうか。
エックス「・・・おい見てみろよ、また扉の前に何かあるぜ」
そう言って奥を指差す彼の視線の先には、さっき僕たちが開けたのとよく似た扉。
そしてその前に、またさっきと同じ小さな台のようなものが・・・。
アレン「今度は何だ?また紙みたいなのが置いてあるな」
アレフ「・・・行ってみましょう」
それは、無造作に引きちぎられた紙切れだった。
小さな字で文章が書かれている。
だがさっきの手紙とは違い、機械でプリントされたような整った文字ではなく
明らかに手書きの・・・それもだいぶ急いで書いたような字だった。
ムーン「何でしょう・・・」
レック「アレフ、読んでくれよ」
アレフ「・・・また私がですか・・・」
アレフさんは渋々といった感じでその紙切れを手に取ると、字を読み上げた。
アレフ「『これより1時間後、この屋敷の外に魔物が現れ始めるので注意。
探索の際はトラップに気をつけること。
特に赤黒い霧を見たら近づかないほうが良い。
鉄製の扉には鍵が掛かっているが、攻撃魔法等で破壊すれば開けられる。
ただしその先からは50分以内に戻ってくること。出られなくなる。
外の魔物については、炎系の魔法がよく効くので直接攻撃をするよりは
まとめて焼き払ったほうが早い。
HPは高くないが、触手で生命力を吸収するブラッディローズという魔物には要注意。出くわしたら、補助魔法を駆使して戦うかさもなくば逃げたほうが良い。
トライアングルの中心は多分かなりきつい。やるなら死ぬ気で挑め。
壁のスイッチは無闇に押さないように。2階にはまだ行くな』」
ロト「・・・・・・・これは・・・・・」
アルス「注意書き?あの手紙の続きかな」
アベル「でも、さっきの手紙とは文体が違うし・・・筆跡もかなり違う。
これはきっと、このゲームを仕組んだ連中が用意したものじゃないよ」
エックス「まあ、いくらなんでも親切すぎるもんな・・・」
確かにさっきの手紙と違って封筒に入っているどころか、ただの紙を破っただけのものだし・・・アベルさんの言ってることはきっと正しいだろう。
それとひとつ、気になる一文があった。
エイト「トライアングルの中心・・・って、何でしょうね。死ぬ気で挑めって・・」
アレフ「おそらくですが、“犠牲者”のことを指しているのではないでしょうか。
もしくは、越えなくては先に進めないトラップとか・・・」
レック「んー・・・オレは、これを書いたのが誰なのかが一番気になるんだけどなぁ」
ソロ「この屋敷には俺たち以外いないはずだ」
レック「え?」
ソロ「・・・目玉がそう言っていた」
・・・・・・・・・・?
僕の記憶にはあの目玉がそんなことを言っていた覚えはないんだけど・・・
・・・まあ、いいか。
レックさんも僕と同じことを考えてるみたいだった。
ソロ「・・・・・・・・アレフ、裏にも何か書いてあるみたいだぞ」
アレフ「あ・・・ああ、そのようですね」