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伝説の超ニート トロもず
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ドラクエ:disorder 歪みゆく英雄譚の交錯 第3話

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レック「そうかあ?なんかオレ、案外大丈夫そうな気がしてきたぜ」

エイト「・・・あのですねぇ・・・」

ロト「まあまあ。
確かに予想してたよりは弱かったかも知れないが、
やっぱり俺もここで油断するのは賢いとは言えないと思うぞ」

アルス「うん、注意書きにあったブラッディローズってやつも
きっと今のじゃないだろうしね」

アレン「ロト様の仰る通りだ。
もしこの世界の化け物どもがみんなこの程度なら
俺が出向く間でもない」

エックス「ま、今のはウォーミングアップとでも思っとこうぜ」


僕たちは再び歩き出した。
化け物の死体に目をやると、茎のぱっくりと裂けた切り口から、言葉では表現しがたいグロテスクなゼリーのようなモノがはみ出ている。
さらにその奥からは、白く濁ったドロドロの液体が溢れてきていて・・・
とても気分の良くなるものではなかった。

目をそらし、腹の奥から湧き上がってくる吐き気を咳払いでなんとか押し殺して
顔を上げた。

エイト「・・・・・はぁ」

レック「お前、大丈夫か?
さっきからなんか体調悪そうだな」

エイト「いえ、気分が優れないのは皆さん同じでしょう。
僕は・・・その、ああいったものに耐性がないだけで。
お気遣いは無用です」

レック「あー・・・あれはキモいわ」

僕が目線でさっきの傷口を示すと、それを見てレックさんも顔を顰めた。

レック「・・・・ん、・・・あれ?」

するといきなり、レックさんが何かに気付いたように動きを止め、
傷口を凝視し始めた。
そして化け物の死体に歩み寄っていく。

エイト「レックさん?」

エックス「・・・ん?
・・・レック、何やってんだ?」

レック「いや・・・なんか、今・・・」

レックさんは身を屈めて傷口を覗き込んでいる。
・・・よくあんな悍ましいモノを直視できるな。

エイト「あの、何かありまし・・・ぅっ?」

レックさんのほうに歩いていくと、突然左手の甲にピリっと軽い痛みが走った。

エイト「・・・・・・・・・!?」

見てみると、数字がいっそう強く点滅するように青白い光を発している。
そして何より驚いたのは、その数字が23.6から11.5に変わっていたことだ。

エイト「(な・・・これって)」

・・・まずいんじゃ。
レックさんも同じことがあったらしく、自分の左手を見つめている。
後ろを振り返ると、エックスさんたちは不思議そうに僕とレックさんを見ているだけだ。
その時、少し前にいるレックさんの左手の数字が、一瞬だけ見えた。

エイト「―――ッッ」

体が一気に冷たくなるのを感じた。
・・・見間違いでなければ、レックさんの生存率は今・・・

・・・・・・・・・・・・・2.9。

ざわっと悪寒が走る。
嫌な予感がする。
僕は考えるよりも早く叫んでいた。

エイト「レックさん!危ないです、そこを離れてください!!」

レック「・・・・・・・え」


ドンッ。

鈍い音が響き、レックさんの体が消え・・・・・・
・・・いや。違う。
あまりにも一瞬の出来事だったので把握するのに時間がかかってしまった。

エイト「・・・――!!」

エックス「な・・・あ・・・ッ!?!?」


グゴオオオオオオオオオオオオオ・・・・・・・・ッ


さっきの化け物たちのそれとは比べ物にならないくらい、大きく
低く重い、腹の底に響くような咆哮。

レックさんが覗いていた傷口から、赤黒い肉でできているかのような
長い触手らしきモノが突き出て、空へと向かっている。
だがそれには2つの関節のようなものがあり、触手というよりは・・・腕。

伸びたそれの先には、悲痛な叫び声を上げながら宙に浮かぶレックさんの姿がある。
その背中からは―――まるで鎌の先ように鋭く尖り、緑色ではなく
真っ赤な・・・すなわち人間の血で濡れ、不気味に黒光りするものが
突き出ていた・・・・・。

アルス「うわああああああぁぁぁ!!レックさん!!!!」

アレン「ぐ・・・っ、化け物め・・・!!」

ズリュッ・・・・ジュグッ、グシャア!!!


腕が出ている傷口が裂け、その中からまた1本
同じ腕が出てくる。

そして次に出てきたのは、巨大な球体。
グロテスクな肉塊のようなそれには大小様々な無数の目があり、
下の方にまるで草むらのように細い歯がびっしりと生えた
悍ましい口が開いている。

ロト「・・・ッ・・・!!!」

エイト「・・・・・うぁ・・・ぐ」

視界がぐらりと揺れる。
力が抜け、がくんと地面に両手と膝をついてしまう。
今日何度目かもわからぬ吐き気がこみ上げてくる感覚に、気を失いそうになる。

やがて体を支えていた腕からも力が消え失せ、僕は化け物の真下にいるにも関わらず無様に倒れ込んでしまった。

エイト「ぅぐ・・・が、げぐぁ・・・・・・っ」

手足が痺れて動かない。
内蔵を圧迫され押し潰されるような猛烈な痛みが感覚を支配し、
意識が遠のいていく。

その時、頭の上で何かが空気を切る音がした。



2日目 07時40分 ―ロト―


倒したはずの花の死骸から、突然何かが飛び出してきた。
それは目の前にいたレックの体を貫き、宙吊りにしている・・・・・。

ソイツは俺たちの5倍の大きさはあり、足のないサソリのような構造の・・・
2本の前足と、胴体から繋がった大きな1本の後ろ足からなる
なんとも禍々しい姿をしている。

俺たちがあまりの事に動けずにいると、ソイツは後ろの1本だけで体を支え
空いている方の前足を高く振り上げた。

ロト「・・・――っ」

真下にいたエイトが突然膝を落とし、四つん這いになったかと思うと
そのまま倒れてしまった・・・!

怪物はそのエイトめがけて、鋭く尖った前足を振り下ろした!

ロト「!!!」


俺は弾かれたように地面を蹴り走り出す。
流れる景色がまるでスローモーションのように見えた。

――ドゴォッ!!

間一髪のところで俺はエイトの体を抱き起こして突き飛ばし
怪物の足が彼の胴を貫くことを防いだ。

勢いで俺は地面に転がりエイトは吹っ飛んで崩れ落ちたが、
体に穴が開くよりははるかにマシだ。

怪物は獲物を仕留められなかったのが悔しいのか、
巨大な口を大きく開け無数の目を見開いて咆哮した。
そして地面に突き刺さった足を引き抜くと、もう片方の
足――つまりレックが刺さったままの足を自分の後方に振りかぶる。

そしてとてつもない速さで、何度も何度もレックを地面に叩きつけ始めたのだ。

俺が起き上がると、怪物の足先の刃から抜け宙に放り出されたレックの体が、
血を噴き出しながら地面に落ちたところだった。

俺は歯を食いしばり、ボロ雑巾のようになったレックを見つめていた。
だが数秒後、俺は言葉をなくして目を瞠ることになる。

なぜならそれは、とっくに全身の骨など粉砕され内蔵も零れ落ち生きているはずのない彼が、
・・・立ち上がって見せたからだ。

ロト「・・・・・・!?」

体に開いていたはずの穴もいつの間にか消えている。
一体いつ回復呪文などかける余裕があったと言うのか。

そして血だらけのまま両手を握り締め、遠目からでもわかる程ブルブルと
震わせて・・・・・