ドラクエ:disorder 歪みゆく英雄譚の交錯 第3話
レック「・・・・・ぃぃい痛ってえぇええぇええぇ!!!!!!!
痛てえじゃねーかこんにゃろおおおおおおおぉぉぉぉ!!!!!!!」
怪物に向かって、瀕死とは思えない大きさの声で叫んだ。
レック「お前なぁ!!殺すことが目的だからってそりゃねーだろいきなり何すんだよ!!
マジでびっくりしたんだからな!?痛いんだからな!?!?」
なんなら同じことやってやろうか!!
と物凄い剣幕でレックが怒鳴り散らした。
怪物は構わず、尚もレックを串刺しにしようと幾度も足先の刃を振り下ろすが
それが彼に当たることはなく。
レックはそれらすべてを完璧に見切って難なく避け、隙を見て高く飛び上がると
怪物の顔面に向かって手を突き出した。
レック「ギガデインッ!!!」
勇者であることの証とも言える聖なる雷が、異形の体を撃ち貫く。
目のくらむ光が消えた時には、怪物の頭は跡形もなく消えていた。
レック「そう同じ手が何度も食うかってんだ」
着地して得意げに言って見せたが、その時にはボロボロだった体までもが
元通りになっていた。
アルス「よかったぁ・・・レックさん、びっくりさせないでよね!」
レック「いやいや、死ぬかと思ったぜ。
ほんと不意打ちは卑怯だよな!ダメ、ゼッタイ!」
・・・全く驚かされてばかりだ。
もしかしたら彼が「大丈夫そうな気がしてきた」と言ったのも、
性格ではなくこの戦闘能力に自信があったからなのではと思えてきた。
エックス「レックこの野郎、ビビらせんじゃねーよ!
っつか、エイト大丈夫なのか!?」
ロト「ああ、たいした傷はない・・・気絶してるだけだ。
一応回復呪文もかけておいた」
アレン「・・・・・・・・!
ロト様!!」
アレンの呼びかけに振り返ると、なんとレックのギガデインで頭をブチ抜かれたはずの
怪物が悠然と起き上がり――
アルス「・・・嘘でしょ・・・!?」
ボコボコと傷の断面が赤黒く泡立ち、そこからどんどん頭が作られていくのだ。
エックス「・・・チッ・・・再生型か・・・。
面倒臭えんだよなあのタイプのモンスターは」
レック「ちょっなんだよアイツ!
早いとこエイト起こそうぜ!」
ロト「いや、それがだいぶ深く意識が飛んじまってるようでな・・・
しばらくは起きないだろう。多分毒かなんかでやられてる」
アルス「キアリーは?」
ロト「それもやったが、変化はなかった。
麻痺してはいないようだし・・・自然に目覚めるのを待つしかないだろう」
そうこうしているうちに、怪物の再生はどんどん進み・・・
とうとう出てきた時と変わらぬ無傷の状態にまで回復してしまった。
あたりに響く不快な咆哮は、その合図とも取れた。
アレン「・・・再生する暇も与えず、一気にブチ殺るしかないみたいだな」
レック「へっ、要はミンチにでもしちまえばいいんだろ!」
アルス「2人とも怖いことばっか言わないでよね・・・
ボク気持ち悪いの苦手なんだから」
倒れたエイトを庇うようにして立ち、俺たちは強化呪文と補助呪文を唱え直した。
怪物が奇声を上げながら、こちらに猛スピードで突進してくる。
レック「来やがれ・・・!」
レックが笑みを浮かべ、再びジゴスパークの詠唱を始める。
アレンが飛び上がるのと同時にエックスがジバリカをかけ、
アルスは手を翳してメラゾーマの火炎球を作り始める。
俺は身構えながらも、背後に倒れたままのエイトに視線を向けていた。
・・・何か、とてつもなく嫌な予感がするのだ。
エイトの体の状態に関してではなく、もっと別な意味で・・・・
こういう時に限って、人間の勘と言うのはよく当たるものだ。
・・・だが今はそんなことを考えている場合ではない。
ロト「クソッ・・・何だってんだ」
思わず小声でそう呟きながら、俺は
怪物に向き直りギガデインの詠唱を始めた。
━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─
━─━─━─━─━─ ━─━─
━─━─━─━─━
━─━─━
2日目 07時17分 ―サマル―
玄関でロト様たちと別れてから少し、ボクらは
おしゃべりをしながら廊下を歩いていた。
ここは不思議なところだ・・・。
外から見た時は全然広そうには見えなかったのに、
玄関ホールだけでも外観の2倍はありそうなくらい。
・・・それにしても・・・・
サマル「・・・ねえ、ゲームを進めるって・・・
一体何をすればいいんだろうね?」
ムーン「私に聞かれても・・・・・。
でも今はとりあえず、情報を集めるのが目的よ。
謎が多すぎるもの」
確かになあ。
休憩室に入る時のあれは、もうほんとに怖かった・・・・。
一体何なんだろう。
でも協力してくれてるんだし、別に文句があるわけじゃないんだけど。
サマル「なんか、もうちょっと優しく教えてくれないかなあ」
ムーン「? 何が?」
サマル「あーうん、いや・・・何でもないよ」
ボクたちは今、休憩室があった左側の廊下とは反対にある、
左右対称になった右側の廊下を進んでいる。
左側の廊下とは違って薄暗く、なんだか不気味な雰囲気が漂っている。
アレフ「灯りが点いていないですね・・・」
アベル「うん・・・・あ、でも」
アベルさんが火の灯っていないガラスのランプの見て、何か気づいたようだった。
アベル「ランプの蓋の上だけ、埃が薄くなってる。
この灯りは人の手によって意図的に消されているよ。それもずいぶん前に」
ナイン「本当ですね・・・」
見れば確かに、ランプの蓋にはうっすらと手形にも見える、
積み重なった埃の少ない部分があった。
なるほど。
アレフ「ランプが点いていないと奥がよく見えませんね。
壁や天井も見づらいですし・・・それが目的なのでしょうか」
ナイン「・・・僕たち、こっちの廊下に来たのは初めてですよね・・・」
・・・・・・・・・・・・・・。
みんなが少しの間、黙る。
ボクは静かになってしまったのがなんとなく不安で、みんなが思っているであろうことを考えなしに呟いていた。
サマル「・・・・・・・・・ソロさん、かな」
アベル「・・・正直言って、そうじゃなかったら逆に気味が悪いよね。
でも、彼だってここに来たのは僕らと同じで、ついさっきなわけだけど・・・」
ムーン「この蓋、痕を見る限りでは少なくとも一週間は前に動かされてますわ。
・・・でもまあ、そう見えるように細工をした可能性もありますわね」
サマル「一体何のために・・・」
アレフ「・・・試しに、明るくしてみましょうか?」
そうすればわかるかも知れませんよ、とアレフ様が笑った。
ナイン「え、できるんですか?」
アレフ「ええ、一定時間しか持ちませんが一応」
ムーン「暗くては足元も危険ですし、お願いいたしますわ」
アベル「うん。頼むよ」
アレフ「わかりました、では・・・レミーラ!」
アレフ様が手を翳すと、そこからふわっと光が広がって
廊下が明るくなった。
それと同時に、ボクたちは息を呑むことになった・・・。
アベル「あ・・・あれは・・・」
サマル「・・・・――っ・・・」
ボクはビクリと自分の肩が跳ねるのを感じて、思わず