ドラクエ:disorder 歪みゆく英雄譚の交錯 第4話
―――それだからこんなことになるんだよ・・・弱虫
―――・・・・お前如きに俺の何がわかる
―――わかんないよ。なんにも。だから何?また同じ事繰り返すの?
―――・・・・・・・・・
―――・・・レックはもう、気づいてるよ。早くしないときっとこっちが殺される
―――あいつは自分のことしか考えられないような人間じゃない
―――でも、ダメだったじゃん。ほら、サマル殺されたよ?エイトも
―――・・・だからお前は子供なんだよ・・・いつまで経っても
―――もう聞き飽きたよ、それ
―――・・・・・・いつまで俺に付き纏う気だ・・・?お前は・・・これ以上俺から何を奪えば気が済むんだ・・・何もかも俺に押し付けて、台無しにして
―――よく言うよ、勝手に飛び出していったくせにさ。迷惑してるのはこっちなんだよ
―――誰が半殺しにしろっつったよ!!邪魔してんのはお前だろッ・・・・ぐ・・・!
どうしてそんな風になっちまったんだよ・・・!
―――君のせいでしょ?僕は何もしてない。ただ、いただけ
―――お前みたいなガキに・・・何も知ろうとしないで
―――・・・もうね、わかってるんだよ。君が傍観者じゃないってことはね――
2日目 07時42分 ―エイト―
全身に大きな揺れと強い衝撃を感じ、僕は我に返った。
途端、耳を貫く怪物の咆哮と地響きのような轟音。
頭痛と耳鳴りが酷い。
肺が爆発しそうだ。
最悪な気分で目覚めた僕は、しかし必死で今の状況を把握しようとぼやけた頭を回転させる。
・・・喉が痛い。くそ、足が言う事を聞かない。
一体僕はどれくらいの間、気絶していたのだろうか。
アレン「エイト、気がついたか!」
エイト「ぁ・・・アレンさん」
駆け寄ってきたアレンさんは血だらけだった。だけど走ることに支障がないところを見ると、致命傷ではないらしい・・・もしくは既に回復済みなのか。
どちらにしろ、あのアレンさんがこんなダメージを受けるなんてただ事じゃない。
おそらく、劣勢か・・・・。
エイト「大丈夫なんですか?」
アレン「あぁ、これか。見た目よりは浅い。
それよりエイト、やっぱりお前の言ったことは間違ってなかった・・・
あの化け物、さっきのでかい花とはケタ違いだ」
やっとのことで地面を踏みしめ、立ち上がる。
その瞬間グォアアッと巨大な炎が舞い、空まで巻き上がる。
同時に腹の底に響きわたる、あの咆哮。
炎の中に浮かび上がる、異形。
ぬらぬらと血で黒光りする両前足を地面に突き立て、無数の眼は自らを包囲する戦士たちをしっかりと捉えている。
アレン「よっぽどのダメージを一気に喰らわなきゃ、怯みもしない。
かなり厄介な相手だ」
エイト「・・・ええ、すぐに加勢します」
立ち上がったせいで後頭部に鈍痛が走ったが、その程度の痛みを気にしていられないことは十分に把握した。
アレンさんとともに走り出す。
すると、僕を見たアルスさんが真っ先に駆け寄ってきた。
・・・やっぱり血だらけで、左半身には焦げたような酷い火傷があった。
アルス「エイトさん!大丈夫だった!?」
エイト「ええ、すみませんでした・・・。それより、その傷は」
アルス「ボクのは大したことないよ。でも、確実に押されてきてる・・・」
アレン「・・・不本意だが認めるしかないな」
ロトさんたちも気づいたようで、レックさんが大声で呼びかけてきた。
レック「おーい、手伝ってくれ!こいつ滅茶苦茶強えんだよ!!」
アルス「うん、今行く!!」
状況は極めて劣勢のようだった。相手も傷を負ってこそいるが、その攻撃力や見た目に反した素早さは全く衰えていないように見える。
むしろ攻撃を受けるにつれ、どんどん興奮していっているような・・・
エイト(・・・このままじゃこっちの体力がもたない)
レックさんもエックスさんもロトさんも、表情は疲れきっている。・・・このメンバーでこれほどまでに苦戦する魔物がいようとは・・・仕方がない、MPを惜しんでる場合じゃないな。
僕は両手を翳し、魔力を集めて意識を集中させ始める。
魔法が届く距離に全員がいるか確認してから、集めた魔力を弾けさせた。
エイト「・・・ベホマズン!!」
光が広がり、僕たちの体の周りを魔法陣が囲む。
ふわりと体が浮くような感じがして、同時に暖かく包み込むように傷が癒えていくのを感じた。
アルス「・・・!」
ロト「これは・・・」
エックス「おっしゃ、サンキューエイト!!」
完全回復治療呪文。
仲間全員の体力・生命力ともに全快させるかわりに、術者のMPと精神力の消費は激しい。
アルス「わあ、ありがとう!助かったよ」
エイト「・・・っ・・・ええ」
さっきまで気絶してたせいか、いつもよりどっと疲れた気がする。
・・・でも、今はそれどころじゃないんだ。
レック「なあ、物は相談なんだけどさ。これで魔法が使える奴が5人になったわけだよな?」
エイト「あ・・・そうですね」
エックス「何かやるのか?」
アルス「・・・あ、もしかしてあれ!?」
あれ・・・って、・・・何だろう。
アレン「何だ?」
レック「決まってるだろ、ミナデインだよ!」
ロト「・・・何だそれ?」
アルス「え、知らないの!?」
ミナ・・・デイン?
ライデインやギガデインなら知ってるけど、なんだろう・・・本当に僕の知らない呪文って沢山あるんだな・・・。
レック「んじゃ教えてやるよ、とりあえずオレらで同じところに魔力を集めて・・・・って
うぅお!!?」
大地を砕くような轟音。
怪物がその大きな足を、なぎ払うようにして僕たちの真ん中に振り下ろしてきたのだ。
咄嗟にそれを避け、体勢を整えながら会話を続ける。
エイト「・・・それからどうするんですか!?」
レック「ギガデインやる時と同じように言葉だけ変えりゃいんだ、あーついでになんだっけかな、神の裁きが雷となってうんたらかんたら、なんやかんやってのをイメージしながらだ!」
アルス「テキトーすぎて説明になってないよレックさん!!」
ロト「まあだいたい分かった!だけどアレンは魔法を使えないぞ」
アレン「ロト様、それなら俺は囮になります!
俺がヤツの注意を引きつけておきますっ」
エックス「ナイスアイデア!」
話しながら、僕たちは既に魔力を集め始めている。
少しずつ・・・でも確実に。
アレンさんが怪物の足の下をくぐり、向こう側に移動する。回し蹴りを叩き込み、敵の注意を自分に向けさせる。
そして怪物がその巨体を反転させ、僕たちに背を向ける。
それが合図だ。
レック「・・・っくぜみんな!せえぇのォッ」
キィン・・・っと赤い空に一筋の光が走り、聖なる雷雲が現れる。
同時に怪物を取り囲むようにして、金色の魔法陣が浮かび上がり――
「「「「「ミ ナ デ イ ン !!!」」」」」
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アルス「・・・うー、あー。・・・耳がキーンていってる・・・」
レック「いでででっ。あーくそ、頭痛え」
ロト「っ・・・やったか?」
エックス「おう、・・・見ろよあれ」