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伝説の超ニート トロもず
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ドラクエ:disorder 歪みゆく英雄譚の交錯 第4話

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エックスさんが目線で示す方を、ちかちかと視界が点滅する中目を凝らして見てみる。
・・・・・・・あれ?

エイト「・・・あの化け物は・・・」

アレン「ああ。アレだ」

いつの間にか戻ってきていたアレンさんが言う。
・・・そこには、ぐちゃぐちゃになった小さな肉塊が転がっているだけで・・・

ロト「・・・・凄まじい威力だな」

アルス「でしょ?まあその分疲れるんだけどねぇ」

・・・ああ、やっと分かった。

エイト「ミナデイン・・・すごいですね」

ふと左手の甲を見ると、数字はもとの23.6に戻っていた。
化け物が完全に息絶えたことを示しているのだろう。

エックス「・・・・・で、どうする?もうちょい先行ってみるか?」

アルス「時間はまだ少しあるみたいだよ」

レック「うん、いんじゃね?オレまだけっこー余裕ー♪」

ロト「死にかけておきながらそれだもんな、まったく頼もしいぜ」

僕らは先に進むことにした。
道と言えるほどの道でもないけどそれは一本道で、ずっと辿っていくと真っ暗な森に出るようだった。
でもその間に広い草原や血の池がある。

・・・気のせいかな、だいぶ冷えてきた気がする。

エイト「・・・なんだか寒くなってきましたね」

レック「え、そうかな。別にオレは平気だけど」

エイト「そうですか?・・・うーん」

アルス「さっきやられた時の影響じゃない?ほら、よくあるじゃん。毒食らった後すぐ回復すると血が薄くなって体温下がるらしいし」

ロト「そうなのか?初耳だな」

話しながら歩いていると、しばらくして、黙って先頭を行っていたアレンさんが口を開いた。

アレン「・・・どうやらここで一旦行き止まりみたいだ」



2日目 08時26分 ―レック―


着いたのは血の池だった。・・・近くで見るとデカイのなんの・・・
深さってどれくらいあんのかな。あーでも、こんな中で泳ぐのはゴメンだな・・・。

レック「・・・なー、なんか匂いがひどくなってきてないか?」

エイト「そうですね・・・この世界の空気が酷いのはこの池が原因かも知れませんね」

アルス「うえ~、この辺長くいたくないや・・・」

一本道から急に開けたかと思うと、だいぶ広い岸みたいなところに出た。
かなりの広さで、池というよりは湖だな。ここから向こう岸まで泳げって言われたらできないことはないかも知れないけど・・・かなり疲れそうな感じのデカさだ。

アルス「・・・うわ、ねぇ見てあれ・・・」

アルスがギョッとした様子で顔を顰めながら、オレの服を掴んだ。
その視線を追うとそこには・・・

レック「・・・・・げ」

赤茶色の土に打ち上げられ、真っ赤に濁った血の漣に揺られる・・・目玉・・・・。
普通の人間のものより一回り大きいくらいのものや小さいものなどが、幾つも幾つも浮かんでいる。どろどろのゼリーみたいな気持ち悪い物体を纏ったものもある。

レック「キモ・・・何だよこれ」

アルス「池の中に何かいるのかな・・・・・」

見ると、池はところどころ泡立っていたり波があったり、なんというか・・・
不自然だ。
それにこのデカさだもんな、何かいても全然不思議じゃない。

ロト「・・・・?あれは・・・」

エックス「どした?」

エックスとロトが小走りで、岸の端のほうへ向かっていく。
何事かと追いかけていくと、そこには・・・

アルス「すごい・・・なにこれ、扉・・・?」

エイト「そのようですね・・・」

あったのは、一枚の扉。
池を取り囲むようにして生えた木々の蔦で、隠されるようにぽつりと・・・だが、
見つけさえしてしまえばもう二度と見失わない気がした。
なぜならその扉は、思わず見入ってしまうほど鮮やかな青色をしていたからだ。

角度によっては紫、水色、緑にも見える不思議な・・・
光を放つように波打つように、淡く鮮やかな蒼碧。

アレン「開くか?」

エックス「んー、ダメだ。鍵がかかってる」

レック「鍵ぃ?マジかよ・・・」

見ると取っ手の下に、小さな鍵穴がある。
探してこい・・・ってことか。

エイト「この扉を開けないと池より向こうには行けないみたいですね。
・・・どうします、引き返しますか?」

ロト「そう・・・・・だな」

仕方なく、オレたちは道を引き返すことにした。
・・・まあ収獲ゼロってわけじゃないからいいか。

――――――――――
――――――
―――

屋敷に戻ると、ホールにアレフたちがいた。
ちょうど休憩室に戻るところだったらしく、オレたちは10人揃って廊下を進んでいった。

アレフ「鍵・・・ですか。残念ながらそのようなものは見つかりませんでした」

ロト「そうか・・・まあ、屋敷内にあるとも限らないしな」

アレフ「お力になれず申し訳ございません・・・」

ロト「いやいや。事前に探す予定もなかったんだし気にすることないさ」

アルス「そうそう!これからみんなで探せばいいんだから」

そうこうしているうちに休憩室の前まで来た。
・・・オレはさりげなく早足になって先頭に来ると、さっそく扉に手をかけた。


2日目 09時04分 ―サマル―

ロト様たちが帰ってきてから色んな話を聞いた。
血の池にあったきれいな青い扉とその鍵のこと、大きな花の魔物やすっごく強い3本足のモンスターと戦ったことも聞いた。

武器庫に案内して、ロト様たちにも銃を渡した。
アレン以外は喜んでたけど、レックさんは「武器があるなら先に出せよな」って苦笑してた。

改めて外に出なくてよかった、って思ったけど、なんでだろう。
なんだか・・・・・・寂しい。
置いていかれちゃうんじゃないか・・・って、不安になる。
・・・どうしてこんな気持ちになるんだろう。
みんなの強さを知ったからかな。
外にいる魔物の強さがわかったからかな。

ロト様やアレンたちががんばって戦っている。
ボクたちはまだ戦いに参加してはいないけど、・・・アレフ様やムーン、アベルさん、ナインさんがもし外に行ってたとしても結果は同じだっただろう。
でも・・・もしもボクが外に行っていたら。
怖がって、怖気づいて、足手まといになってたに違いない。
みんなの足を引っ張っちゃってたに違いない。

・・ボクは自分の弱さを知ってる。
戦闘技術や魔法の強さとかだけじゃなく、どれだけ心が弱いかも知ってる。
でも今までアレンたちと3人で旅してた時には、それを理由に負い目を感じることなんてなかった。
だって、楽しかったから。
2人はボクの友達だから。
必要としてくれた。
戦いではあんまり役に立たなくても、2人は友達としてボクを必要としてくれた。
だからボクは、そこにいる意味を見失わずに済んだんだ。

ロト様は強くて優しいし、アレフ様もすごく頼りになる。
レックさんたちやナインさんたちも話してみるとすごく楽しくて、いい人なんだなって思った。
それは嬉しいことだ。
なのに、なんでだろう。
みんなのいいところを見るたび、見つけるたび、ボクは邪魔なんじゃないか、いてもいなくても一緒なんじゃないかって思ってしまう。
このままじゃ・・・
いつかアレンやムーンにも、見捨てられちゃうんじゃないかって。