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伝説の超ニート トロもず
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ドラクエ:disorder 歪みゆく英雄譚の交錯 第5話

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思念体には実体化するものとそうでないものがある。
簡単に言うと目に見えるものと見えないものってことだけど・・・
笑い声・・・?

一体何を伝えたかったというのだろう。

―――――――
―――――
―――



・・・・・・・・・・・・。
・・・ここは・・・・?

気がつくとオレは、真っ暗な空間にぽつんと佇んでいた。
あ、そうか。夢を見ているのか。
考えているうちに眠ってしまったらしい。

なぜこれが夢なのかすぐにわかったのかというと、オレは慣れているからだ。
オレは今まで夢と現実の世界を自由に行き来し、旅をしてきた。
夢に関しては知らないことはないと自負してるくらいだが・・・ここは何だ?

オレ自身の夢にしては、殺風景すぎやしないだろうか?
まぁ自分の機嫌や考えてることに必ずしも適応するってわけでもないけど。

でもオレにはわかるんだ。
この夢に込められてる思い、感情、それらが作り上げたこの世界の意味。
わかりやすく言うと雰囲気ってやつだ。
それがオレのそれとは、明らかに違う。

まず夢っていうのは、人の記憶や感情などが視覚化してできた、れっきとした思念体の一種だ。
本来なら言葉にして伝えられるはずの思いが夢となって、眠りについたその人の脳に幻影を見せるというケースが多い。

そして今更なんだが、オレにはちょっとした特殊能力がある。
それは、自分以外の人の夢を見たり、そこに干渉できることだ。
たとえ相手やオレが眠っていなかったとしても。

話す必要がないのでみんなには言ってないけど、まぁ便利といえば便利・・・なのかな。
でもオレが望んでいなくても、無意識のうちに他人の夢に入ってしまうこともあるから厄介だ。
そう、ちょうど今みたいに。

レック(・・・・・・どうしたものか)

今オレは眠っている状態。
でもこの夢の主はどうだかわからないのが難点だ。

眠っているなら、そいつが起きるまでオレはここから抜け出すことができない。
目を覚ますように促すことも出来なくはないけど、かなり面倒だ。

起きてるなら・・・オレ自身が起きればすぐに抜け出すことができる。
でもそれをすると、もう二度とこの夢には来られないかもしれない。

オレの意志じゃないとしても、オレがここに呼ばれたのには必ず何かの意味がある。
だからその意味を何も知ろうとせずに逃げるなんて、オレは嫌だ。

・・オレは歩き始めた。
どこまでも、どこまでも続く真っ暗闇。
何も見えないが、空間の中に物体が何もないことは感覚でわかった。

聞こえるのはオレの足音と、時折水が水面に落ちた時のように響く音だけ。

しばらく歩く。
・・すると向こうのほうに一筋の光が見えたかと思うと、一瞬にしてそれがブワっと広がりオレの目の前まで迫ってきた。

あまりの眩しさに腕で顔を覆うと、今度は周りの黒い空間がピシピシと音を立ててひび割れ始めた。その亀裂はどんどん広がっていき、やがてガラスが割れるような音があちこちから聞こえ始め、空間がまさにガラスのように割れ、崩れ、落ちていく。

キラキラと光りながら真っ暗な虚空に落下していく黒い破片たちを、オレはただただ唖然としながら見ていた。


・・・黒い空間が割れてできた新たな空間は、目を見張るほど美しい青色をしていた。
時折波打つように蠢き、角度によって紫や緑色にも見える幻想的な・・・
・・・・この色は見覚えがある。

そうだ、血の池で見たあの扉だ。
・・ということは、この夢の主はあの時オレと一緒にあの青い扉を見た奴である可能性が高い。
深く印象に残っているから、夢に出るのだから。

再び、歩き始める。
すると。


・・・・・・くすくすくすくす。・・・・・ふふふふ・・・・



・・・・・・・はははははは・・・・・・・あははは・・・・



また、あの笑い声が聞こえだした。
幼い子供の笑い声。
空間に反響し、流れるように繰り返し響く。

レック(・・・・・・?・・・)

しばらくするとその笑い声は小さくなっていき、・・・・消えた。

レック(夢の中でも聞こえるのか・・・いや、待てよ。もともとあの笑い声はこの夢の中のものだったんじゃないか?)

思念体なのだから、そうだったとしても何ら疑問はない。
むしろそう考えたほうが自然だ。

また少し歩いていくと、なんとそこにはもっとも意外な人物がいた。

レック「・・・・・・・・・・・・サマル・・・・・?」

遠くの方でオレに背を向け、走っている。
もちろん、夢だから誰がいたって不思議ではない。
だけど・・・一番予想してなかった奴だ。この夢はあいつの夢なのだろうか?

レック「サマル!!」

オレは大きな声で呼びかけた。

するとサマルはくるっと振り返り、オレを見た。
だがそこから微動だにせず、じっとオレを見つめている。

レック「何やってんだ!?ここがどこなのか知ってるのか!?」

サマルは答えない。

レック「どこに行くんだ!?」

何も声を発しないが、首を横に振ったのがわかった。
そしてまたくるりと前を向き、走り出す。

サマルの姿はどんどん小さくなっていき、やがて見えなくなってしまった。

レック(・・・・なんでだ?なんであいつが・・・・)

あいつの夢、・・・なのか・・・・・・?

何かおかしい・・・。あいつもこの夢の一部だという可能性だって充分ある。
だったら、以前からサマルと知り合いだった奴・・・アレンか、ムーン。
加えてオレと一緒にあの青い扉を見た奴。

・・アレンだ。

これはアレンの夢なのか?
・・・・・・やっぱり何かが引っかかる。

何なんだ、この感じは・・・・・。
わからない・・・・わからない・・・・・何を伝えたくて、オレをここに呼んだんだ?


お前は・・・・・・誰なんだ・・・・・・・・・?


――――――
――――
――


その時。
ふわり、と体が浮く。景色が一瞬で飛び、そこは見たことのない洞窟のような場所になっていた。
壁や地面は青い光を放つねずみ色の石で出来ていて、なんとも幻想的だ。そしてものすごく広い。天井は見上げるほど高い。どこだ、ここは?

再び、ザアっと景色が変わる。だが場所は変わらず、洞窟の中だ。
しかし、そこにいるのはオレだけではなくなっていた。

・・ロト、アレン、サマル、アレフ、ムーン、アベル、アルス、ナイン、エイト、エックス。
しっかりともう1人、オレもいる。

そしてみんなが険しい表情で見つめているのは。

大きな4枚の漆黒の羽。同じく漆黒の金属質なものに覆われた巨体。顔と思われるものはなく、しかし背中の部分から伸びる無数の黒い触手の先端にはそれぞれ、真っ赤に血走った眼球がついている。

2つずつの手足を持ち、巨大なヒトのような形状をしてはいる。だが頭があるはずのところには代わりにぽっかりと大きな穴が開いていた。
しかしよく見るとその穴の内側には、淵に沿ってびっしりと細かい歯が何重にもなって生えている。それらはどれも鋭く尖っていて、あの中に放り込まれたら間違いなく一瞬でミンチにされるであろうことが想像できた。

異常な長さをした両腕はだらりと地についており、地面と擦れるたびに金属を引っ掻いたような嫌な音を出す。