ドラクエ:disorder 歪みゆく英雄譚の交錯 第6話
サマル「・・・・・・・・・・・・・・・・。」
レック「・・・・・・・・・・あーーーーもうっ、また黙る!」
オレはしばらく黙って口を開くのを待ってたが、痺れを切らして言った。
レック「今ならあの時のソロの気持ちがわかるぜ。お前さあ、言わせてもらうけど、見ててイライラすんだよ」
言ってからしまったと思い後ろを振り返る。
・・・アレンはムーンと一緒に、ソロとエックスのテンションを下げる作業で手一杯のようだった。
ほっとして、でもなんだかずるいことをしてるような罪悪感を少し感じながらも、オレはなるべくサマルを傷つけないよう優しく言った。
レック「・・・あのな?お前には酷なこと言うようだけどさ、思ってることとかは隠さないで素直に言ったほうがいいんだぜ。あんまり自信なさそうにしてると見てる方も・・・なんていうか・・・元気なくなってくるんだよな。もうちょいポジティブに行こうぜ、なっ?」
サマルは相変わらず黙ったまま、困ったように目を伏せた。
サマル「・・・でも・・・ボクは・・・」
レック「ああほらほら、さっきソロに言われたろ?もっと自信持てって」
サマル「・・・ん」
サマルはふと顔を上げて、ソロとエックスたちのほうを見た。
レック「?」
サマル「・・・ボクもあの人たちみたいになれたらなって、思ったんだ」
レック「あいつらみたいにか?・・・どうかな」
サマル「こんなこと思うのは勇者として良くない。それはわかってるけど、気づいたらいつもそんなこと考えてるんだ。あんなふうになりたいなって少しでも思うと、それがどんどん・・・あの人みたいになれたらな、ボクがあの人で、あの人がボクだったらいいのにななんて、・・・最低だよね」
レック「・・・は?」
サマル「ごめんなさい。・・レックさんにはわからないよね。ううん、これを言って誰かに許してもらおうとしてるんだ、ボクは。ボクは弱いからこんなふうに思ってもいいんだって、許されるんだって。そんなわけないのに。弱いからってそれを主張してばっかりで、自分が何もしようとしないことを棚に上げて・・・」
レック「・・・・サマル・・・・?」
サマル「ボクは・・ボクはみんなみたいに強くない・・・みんなみたいに誰かを惹きつける魅力を持ってるわけでもない・・・。なのになんでこんなボクが、勇者に・・・
・・・こんなボクが・・・・・・・・・・」
サマルは無表情でソロたちを見つめたまま、ぶつぶつと呟くように言った。
・・その目に光は、なかった。
レック「・・・・・・・・・・・・・・。」
・・・・・・こいつ、もしかして・・・。
・・そうこうしているうちに、あの血の池に着いた。
相変わらずむせ返りそうになるこの匂い。
エックス「・・で、どうすればいいんだ?」
見ると、ソロは貼り付けたような顔で微動だにせず、血の池を見下ろしていた。
そしてこっちを見ると、からかうように突然へらっと笑った。
ソロ「・・・さあ、バトル開始だ。みんな準備は出来てるか?」
・・・・・・・・え?
ドオオオオオオオオオオオオオン!!!
爆発にも似た音と同時に、血の池の水面が物凄い勢いで山なりにせり上がる。
そして弾け、水しぶき――いや、血しぶきだった――が舞い上がり・・・
レック「!?!?」
ムーン「きゃああああっ!?」
・・その中から現れたのは、2つの黒い山?
いや違う。
これは・・・・・・・・
レック(・・・・・虫・・・ッ・・・!?)
見上げるほどに巨大な、・・蛆虫・・・違うな。
2体とも個数や色は違うが目があるし、腹の部分に申し訳程度の足が何十本か付いているのが見えた。
強いて似ているものをあげるなら、カブトムシの幼虫だ。
エックス「・・・んだよこいつら・・・!おいソロ説明しろッ!!」
ソロ「右の赤いほうがドルーガ、黒いほうがギーヴァだ!当然だがただの虫じゃないぞ、それぞれに異なる特性がある・・・!!」
ソロはBARにマガジンを装填しながら、虫たちの咆哮にかき消されないよう声を張り上げていた。
ソロ「2体とも火炎系の魔法もしくは属性攻撃が最も有効、次に電撃に弱い!
ヒャド系は効かない!特殊攻撃で怖いのはギーヴァが使ってくる毒攻撃だ、まともに食らうと少なくとも昏倒、運が悪ければ即死する!弱点は共に頭にある目と背中側にある斑点模様の中心!!以上ッ!!」
そう叫ぶと目の前に手をかざして、銀色の大きな魔法陣の壁を作った。
それと同時に、赤くて目が3つあるほう・・・ドルーガの目が、カッと見開かれた。
すると真っ赤な魔法陣がその背後に現れ、そこから巨大な炎の波がまるで生き物のようにソロめがけて降り注いでゆく。
ソロ「マホステ!!!」
ソロの前方にある銀魔法陣の壁が、回転しながら光の網のようなものを周囲に散りばめる。
それらは向かってきた炎の波を包み込み、まばゆい光を放ちながら炎もろとも消えた。
あんな魔法見たことがない。
ソロ「何突っ立ってんだ、お前ら!?早く加勢しろよ!!」
・・ここでオレが一番違和感を感じたのは、叫ぶのと同時に高く飛び上がってドルーガの口から放たれた黒い粘着質のものを避けたソロが、ヤツらが現れた時から変わらず笑顔だったことだ。
エックス「ああ、フバーハ!!」
サマル「スクルト!!」
呪文で強化しながら、オレたちも戦闘モードに入る。
レック(・・・・あーもう、なんなんだよっ)
なんで言ってくれねえんだよ・・・あいつもしかしてわざとか?わざとなのか?
そうこうしているうちに、虫が吐く炎で辺りは瞬く間に火の海となった。
自動的にオレたちはだんだんと、湖のまわりに点々とせり立つ大きな岩場に追いやられる。
こんな不安定な足場で戦えって言うのか・・・・・・。
エックスが足場を利用して高く飛び上がり、マシンガンの連射をドルーガの目にお見舞いした。
ヤツはグギャアアっといかにも虫らしい金切り声のような奇声をあげ、巨体を揺らしてもがいた。
しかし同時にその頭部がグチャグチャと嫌な音を発しながら開き、その中から小さな――と言ってもこのバカでかい体の割にはというだけで実際にはオレの頭より大きいんだが――燃え盛る隕石のようなものが無数に飛び出し、オレたちの上に降り注いだ。
レック「うおあああああ!?」
ムーン「・・あ、危ない・・・・っ!!」
ほぼ逃げ場がない。・・・・っくそ、フバーハしてなかったら大火傷じゃ済まなかったな。
その時、近くにいたムーンが落ちてくる岩を打ち砕こうとイオナズンを放った。
まばゆい光が走ったあと大爆発。
岩は砕け散り、欠片が弾け飛ぶようにして周囲に散らばる。
・・・・・・・それで安心したのがいけなかった。
アレン「!!ムーン!?」
ムーン「きゃあああああああああああっ!!?」
なんと今度は、ドルーガの背中から赤黒く光る細い触手のようなものが何本も突き出ている。
それがムーンの体に巻き付き、宙吊り状態にしているのだ。
レック「あいつ・・・っ」
オレが武器を構えた瞬間、
アレン「うぉぉぉおおおおおおおおおおおおッ!!!」