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伝説の超ニート トロもず
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ドラクエ:disorder 歪みゆく英雄譚の交錯 第7話

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・・・・てか、ソロは?」

エックス「ああ、あいつならまだシャワー浴びてるよ」

レック「マジで?もう1時間以上経ってるぞ」

エックス「のぼせてなきゃいいけどな。よっぽど虫が嫌いだったんだろ」

ため息をついて、オレはテーブルの上でやけにデカい本を広げているエックスの横に腰かけた。

レック「・・・なぁ、その本何だ?」

エックス「ん。なんかそこの本棚で見つけたんだけど、世界中の破壊神にまつわる伝説なんだってさ。とくにすることもないから、なんとなく」

レック「ふーん・・・・・」

あんまり興味はなかったが、どうせ待ってるだけなので覗いてみた。

古そうだけどかなりいい材質の黒い表紙と、刻印のような装飾、血のように真っ赤な・・・それでいて、傾けると金色に見える不思議な色の文字。
いかにも、って感じだな。

何ページか捲っていくと、見覚えのある名前が出てきた。

レック「・・・ん?あれ、この・・・シドー・・・ってさ、なんか聞き覚えあるな。
・・・何だったかな」

エックス「アレンたちが倒したやつだよ。話聞いただろ」

レック「あぁあぁ!それだ。破壊神シドーな」

下に挿絵があった。
・・・なんかすごいな。大きな羽と、腕なのか足なのかわからないのが6本生えてて、いかにも邪神!って感じの顔してやがる。

・・・・ん?

レック「なあ、この・・・シドーの後ろにいるのって何だ?誰?」

エックス「んん?・・ちょい待って、えーっと・・」

エックスは、細かくてオレにはとても読む気がしないような文字列を目で追い始めた。

エックス「・・・・あ、あった。この、シドーを後ろで見下ろしてる感じのやつだろ?
コイツの名前は・・・破壊神、リトセラ」

レック「リ・・トセラ?聞いたことないなぁ」

羽を広げて口を大きく開け、6本の腕を大きく広げたシドーの後ろに、それよりも少し大きな姿でヒトのようなものが両手を広げて立っている。

・・・いや、両手を広げていると言うよりは・・・なんだろう、シドーを両手で・・・
糸人形を操るみたいに、上から見下ろしていた。

その姿は一見、細身の若い青年のように見える。だが・・・よく見ると、顔が異様だった。
笑みの形に釣り上がり裂けた口と、まるで蜘蛛のような縦に並んだ無数の目。

・・そして、そいつの背後からは巨大な蜘蛛の形をした影が、すべての脚を大きく広げ、数十個の目をぎらつかせてシドーを見下ろしているのだ。

レック「破壊神リトセラ・・・」

エックス「ああ。・・これによると、シドーはこいつに生み出された実験体みたいなものらしい。でもこいつは、シドーが初めに人間世界に召喚されるより何千年も前に姿を消してる。
美しい少年の姿をしているが、その正体は黄金色の巨大な毒蜘蛛で、彼が現れた世界はあらゆる希望と愛を失う。人々は最後の一滴までも残さず生命を搾り取られ、絶望と悪意の地獄で破滅の炎に焼かれ続ける・・・」

レック「・・・・・・。・・・アレンたちはコイツのこと知ってんのかな」

エックス「さぁ・・・」

サマル「うーん・・・知らないなー」

!?

レック「うおわ!ってびっくりした、お前かよ!」

エックス「い・・・いきなり後ろから来るんじゃねえよ・・・」

サマル「えっ・・・ひ、ひどいな、ボクずっと2人の後ろにいたよ?」

オロオロするサマル。・・・コイツいつから・・・

エックス「・・どのへんからいた?」

サマル「えっとね、レックさんが「シドーの後ろにいるのって何だ?」って言ったところから」

レック「そうか・・あーびっくりした。心臓に悪ぃぜ」

えへへ、とサマルは困ったように苦笑した。

エックス「・・・そうか、破壊神か・・・」

レック「ん?なんだ、何かわかったのか?」

エックス「俺たちがこのゲームに呼ばれた一番最初、真っ暗な空間に出てきたあのでっかい目玉。もしかしたらアレもそういう類のものなんじゃないかって思ってさ」

レック「あー、ありえるな」

そんなことを話していると、背後で扉が開く音がした。


3日目 11時02分 ―サマル―

・・・・破壊神リトセラ・・・。
ボクらが倒した破壊神シドーを、生み出したという存在。
初めて聞く名前だったけど、なぜか今知ったような気がしない。
なんでだろう?
前に本か何かで見たことがあるのだろうか。

向こうの方で本を読んでるアレンとムーンに聞いてみようかとも思ったんだけど、多分2人とも知らないんだろうな。

その時後ろの方でドアが開く音がして、振り返ると・・・

ソロ「・・・最悪だ・・・・・」

絞り出すような声で呟いて、ぼすん、とソファに倒れ込んだ。

エックス「大袈裟だなあ、虫の体液がかかったくらいでよ。何時間シャワー浴びてんだよ」

ソロ「うっせえ、虫嫌いなんだよ悪いか。あーあテンション下がった」

エックス「攻撃力落ちたか?まあドンマイ」

ソロ「は?」

レック「あーそうだ、ソロ。いきなりだけど破壊神リトセラって知ってるか?」

ソロ「え、何もう1回言って」

レック「リトセラ。破壊神。聞いたことある?」

ソロ「・・知らん。俺別に破壊神とか詳しくないし・・・なんでだ?」

レック「ん、いや、特に深い意味はないんだけどな・・・つかいつまで寝てんだ」

ソロ「なんだよ悪いかよ」

ソロさんはソファにうつ伏せたまま顔を上げようとしない。
・・・・・・あれ。もしかして・・・

サマル「・・・・・ソロさん、泣いてる?」

ソロ「はぁあ!?んなわけねえだ・・・ろ・・・ってお前いたのかよ!!」

ガバッと顔を上げて、あからさまに驚く仕草をする。

レック「アハハハハ、そりゃあねえよ!」

エックス「完璧に見える位置にいただろ・・・・」

笑顔で言うエックスさんとレックさんに、ソロさんもおどけるように笑った。

レック「あーサマル、わかってるだろうけど冗談だからな!」

サマル「そっ・・・そんなこと言われなくたって」

ソロ「ははは」

と、その時。

ロト「・・・・・お前ら、戻ってたのか」

鍵と扉を開ける音がして、屋敷の探索をしていたみんなが帰ってきた。
・・・・・その瞬間、ボクにはわかった。
みんなの表情が、硬い。
何かあったんだ。

アベル「ごめんみんな。少し話がある」

そう言ってボクらの前に出てきたのは、アベルさんだった。
アベルさんは、ソファの上で膝を立てて座っているソロさんに向かってこう言った。

アベル「何も聞かずに答えて欲しい。君は屋敷に戻ってきてから、今までどこで何をしていた?」

・・・・・・・?

ソロ「・・・俺に答える義務があるとでも?」

その瞬間、ソロさんはさっきまでの暖かい表情から一変し、びっくりするくらい冷たい目でアベルさんを見上げた。

アベル「質問に質問で返すのは良くないよ。・・いいかい、もう一度聞くから答えてくれ。
今までどこで何をしていた」

最後の一文を言う時のアベルさんの声はまるで別人みたいに低くて、上から押さえ込むような、逃げるのを許さないような、そんな声色だった。

するとソロさんはため息をついて、

ソロ「寝室で寝てた」

・・え?

アベル「・・・・・・・・・・。」