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伝説の超ニート トロもず
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ドラクエ:disorder 歪みゆく英雄譚の交錯 第9話

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レック「休憩室に戻ろう・・・みんなに知らせないと」

ロト「ああ、そうだな」

エックス「・・・・・・・・・・。」

その時。けほっ、とソロが小さく咳き込んだ。まだ意識はないみたいだが、少しずつ息遣いが聞こえるようになってきた。呼吸器官が完全に回復したんだろう。
表情は少し苦しげなものに変わっていたが・・・生きているのかどうかもわからないような、さっきみたいな眠り顔よりは安心する。

最悪の事態を防ぐことができた安心感で胸がいっぱいになり、オレはあの暗号や自分の魔法だけが効いたことの謎を、無意識のうちに脳から切り離していた。

――――――
――――

ソファにソロを寝かせ、血で汚れた髪や口元をタオルで拭いてやった。手の爪と肉の間や首すじには茶色く変色した血がこびりついており、生皮を剥がされたようなひどい状態になっていた。
ソロは苦しそうに浅い呼吸を繰り返していたが、時間が経つうちに表情は穏やかになり、呼吸も落ち着いていった。

アレフ「いやはや・・心臓が止まるかと思いましたよ」

サマル「ほ、本当に大丈夫なの?」

アベル「ベホマがかかってるから命に別状はないよ。ただ、出血が多かったからね・・・」

みんなが話してる間、オレはソロが持っていたあの青い扉の鍵を眺めながら考えていた。
・・・・・オレの魔法だけが効いた。
それはすなわち、あのメンバーの中でオレだけが条件を満たしていたということだろう。
目は確かに見えてる・・・だが問題はあとの2つだ。

それを理解していること。
真実を知る者であること。

・・・・わからない・・・でも魔法が効いたってことは、オレは「それ」を理解しており、かつ「真実」を知っているということになる。・・それとも意味を勘違いしているんだろうか?

「それ」が何なのかも、「真実」が何の「真実」なのかもわかってないのに、一体・・・どういうことなんだろう。

・・・・・・・。・・・・・・・だめだ、さっぱりわからない。

エックス「・・・よ。また考え事か?」

レック「エックス。・・・ごめんな、ほんとに・・・いろいろ迷惑かけちゃって」

エックス「気にすんなよ。・・こんな状況じゃ、誰だって参っちまうもんさ。今日は早いとこ休もうぜ」

そう言って、エックスはオレの肩にポンと手を置き、そのままオレの横に腰掛けた。

エックス「まあ、あいつが助かっただけでもよかったじゃないか。・・・ほら、そんな顔すんな」

・・・あ、オレ・・・きっと今すげえ落ち込んだ顔してんだろうな。

レック「・・・なあ、なんで・・・オレのベホマだけ効いたんだろうな」

エックス「あの条件に当てはまってたんだろ?多分。真実がなんたらってやつ」

レック「・・それがさ、全然わかんねえんだ。それを理解してるとか、真実を知る者とか・・・見当もつかないし・・」

エックス「・・・・まあそんなことだろうと思ったぜ、正直。何なんだろうな。あれ・・・」

まあそのうちわかるだろ、とエックスは席を立った。

無自覚に条件を満たしているということ・・・でも、オレってほぼみんなと一緒に行動してたはずじゃないか?なんか、みんながしてないこと・・・したっけかな・・・。

・・・・・・あ。
ソロに、ロベルタの話を聞いたんだ。もしかして・・・「それ」って、ロベルタのことか?
そうか。あの壁の落書きとか、笑い声のことも確証はないけど、一応理解はした。

それと・・・真実ってのは。・・・なんだろう?
待てよ、あの後確か「違うよ」・・・って・・・聞こえたような気が・・・・・・

??

違うっていうのは、オレの解釈が間違ってるって意味・・・なのか?・・・あの落書きは自分がやったんじゃないってことを言いたかったのか。
じゃあ誰が?・・いや、待てよ。そうじゃなくて、他の何かが間違ってるってことは・・・


・・・・・・・・・・・・・・・・・・くそ・・・・・結局堂々巡りだ。

一体何が間違ってるんだ?やっぱり、落書きをした人物と笑い声の主は別だということなのか?

・・オレはため息をつき、何気なくテーブルに目をやった。すると、・・・・・・注意書きが、あった・・。

レック(・・・・・・またか・・・・・・・・・・)

もはや注意書きがいきなり現れることにも、あまり驚きを感じなくなった。
・・オレがテーブルを見るタイミングも操作されてるような気がしてならない。

『答えが出てこないか?頭脳明晰の君にしては珍しいな。
まあ心配することはない。じきに分かる。
それよりも、友人の心配をしてやったらどうだ?』

――・・・。

・・オレは立ち上がり、歩み寄ってソロの髪を撫でた。

ソロ「・・・・・・・・・。」

だいぶ落ち着いたようで、穏やかに静かな寝息を立てている。

レック「―――・・・・・・・・・・・・・・。」

胸の奥に、自分たちのためにここまでさせてしまった申し訳なさと、どうしてこんなになるまで戻ってこなかったんだという複雑な気持ちが同じ大きさで膨らみ、滲んだ。

レック「なんで・・・ここまで」

声が掠れた。
すると、

ソロ「・・・・・・・・・。」

頭を撫でていたからか、それとも声をかけたからか。ゆっくりと力なく、ソロが目を開いた。

レック「・・・大丈夫か?」

ソロはまぶしそうに目を細め、深呼吸をして視線を左右に泳がせた。
それから状況を把握すると、消えそうなほど小さな声で言った。

ソロ「・・・・・寒い・・・・・・・・・・」

レック「え?」

ソロ「・・・血ィ出しすぎたっぽい」

ロト「ああ、待ってろ。今何か持ってきてやるから」

近くにいたロトが寝室からブランケットを持ってきて、なぜかオレに手渡した。
とりあえずソロの体にそっとかけてやる。その時、手が僅かに首元に当たった。
・・・氷のように冷たかった。

顔色も悪く、肌は血の気を失い白を通り越して灰色になっている。

ソロはすぐ横にいるオレがなんとか聞き取れる程度の大きさの声で話すのがやっとのようで、
時折思い出したように慌ただしく深呼吸をする。まだ体内の血が足りないらしく、自力で体を動かすことはできないようだった。

ソロ「・・・・・・・・・ごめんな、迷惑かけて」

アレフ「何を仰います、貴方は体を張って私どもの手助けをして下さっているではございませんか」

ムーン「ええ、当分は休んでいらっしゃったほうが良いですわ・・・」

ソロはそうさせてもらうよ、と申し訳なさそうに言うと、・・・オレのほうを少しだけを見て

ソロ「・・・次に会うのは、多分かなり後になるだろうな・・・」

レック「・・・・・・・・・・・・・・・それ、どういう意味だ?」

ソロ「俺は動けるようになったら、・・・まだもう少し準備をしなくちゃならない。
・・・・・・・・それが終わったら・・・いや・・・・・それまでに・・・」

ソロは途切れ途切れに息をつきながら、押し出すような声で言った。

ソロ「あいつを・・・・・。・・・・・・・・・ろさないと・・・」

え?

レック「ソロ・・・今、何て」

ソロ「・・・・はぁ・・・・・・・・・はぁ・・・・・」

突然顔を歪ませ、悪夢に苛まれるかのように苦しみだした。