ドラクエ:disorder 歪みゆく英雄譚の交錯 第10話
・・・・・・・・・・ムーン・・・・・・・・・・・・・・。
何故・・・・・・何故だ・・・・・・・どうしてこんなことに・・・・・・・・・・・・
ロト「・・・・・赤い目をした影・・・・・・・・おいレック、アレじゃないのか?」
レック「・・・・・・・・・。」
ロト「赤い目をした影っていうのが、そのコピー能力を持った魔物で・・・ソロと入れ替わってたんじゃないのか」
そうとしか考えられない。そう考えれば、今までのことの辻褄が合うのだ。
「次に会うのは、たぶんかなり後になるだろうな・・・」
ソロは確かにそう言っていた。
つまり、ソロはじきに自分とコピーが入れ替わることを知っていた・・・
だから俺たち以外の仲間を外に出したのだ。
あの時アイツはムーンを殺したあと、俺とレックしか見ていない。
だからうまくいけば・・・他の仲間たちには遭わせずにおける。今は俺たち2人のことしか頭にないはずだ。
レック「・・いいや、あれはコピーなんかじゃない・・・」
ロト「?」
レック「あ・・・・あれは・・・体だけ」
ドガァァァン!!!
レック「!!」
ロト「・・レック!」
俺たちは2階へ続く階段の後ろに身を隠した。見ると、休憩室の廊下から血だらけのソロが歩いて出てきている。
キョロキョロとあたりを見回して、俺たちの姿がないことを確かめると、近くにある扉に向かって手を振りかざした。
豪音と共に、扉が粉砕される。今のはイオラだ・・・
そして部屋の中に入っていき、しかしすぐに出てきた。そりゃそうだ、魔法で吹っ飛ばしちまえば中には何も残らない。
レック「あいつ・・・」
2階には行かないほうがいいな・・・今はむこうを向いてるが、階段を上ってる途中で振り向かれたらアウトだ。
どこかやり過ごせる場所を探さないと・・・
・・・・そうだ、武器庫!
あそこの扉は金属製でかなりの厚さがあった。ああ・・・でも、それだと逆に見つかりやすいか。安全そうに見える場所に隠れるだろうと踏んでいるなら・・・
まあ、アイツが人間の心理を理解してるならの話だが。
・・だがしばらく観察を続けていると、どうやらアイツは何も考えずに、ただただ並んでいる順番に扉を破壊していっているようだった。
ロト「・・レック、武器庫に行こう」
レック「え?」
ロト「あいつは順番に扉を壊していってる・・・様子を見てやり過ごしながら、解決策を考えよう」
レックはソロのほうを一瞥すると、俺を見て頷いた。
────────
────
アイツが背を向けた瞬間を見計らって、俺たちはその場から移動した。
決して足音を立てないよう、しかしできる限り素早く。
・・・そしてもう少しで武器庫のある廊下にたどり着けると思ったその時・・・
ぱき
ロト「!?」
足元で物音がした。
見ると、一帯の床が他と違う材質になっている。薄いガラスのようだ。
なんだこれは、昨日まではただの床だったのに・・・!?
まるで・・・この状況になることを知っていた何者かが、床をすり替えたかのようだ。
レックが青ざめた顔で床を見つめている。
俺は後ろを振り返る・・・そして目を見開いた。
遠くの壁際に扉のほうを向いて立っているソロが、顔だけこっちを向けて笑っている。
・・・・・・・・・・気付かれた・・・・・・!!
俺は全身がさあっと冷たくなるのを感じ、レックの腕を掴んで全速力で駆け出した。
そして武器庫の重い扉を開けると、大急ぎで中に入り鍵を閉めた。
・・ゆっくりと、扉から後ずさる。
ロト「・・はぁ・・・・・はぁ・・・」
レック「・・・・・・・ゆ、床まで変わってるなんて・・」
レックが小声でつぶやく。するとその直後、玄関ホールのほうからコツン、コツンと近づいてくる足音が聞こえ始めた。
・・・・・・・・・・来る・・・・・・・
レック「・・・・ロト、どうする・・・!?」
ロト「・・・・・・・・隙を見て逃げて・・・撒くしかない」
足音はどんどん近づいてきて、・・・・・・この部屋の前で止まった。
入ったところを見られていたのか・・・・・・?
俺たちは銃を構えて、じっとしていた。
・・・・・・・コン、コン
扉がノックされるかすかな音・・・
次にガチャガチャ、と扉を開けようと取っ手を傾ける音が聞こえる。
しかし開かないのがわかると、再びノック音が一定のリズムで繰り返され、やがて扉の向こうから声が聞こえた。
「・・・・おい、レック・・・ロト?
そこにいるのか?」
・・・・・・・・!?
レック「・・・!」
「・・・・・・・・いるんだろ、開けてくれよ。どうしたんだ?」
口調が戻ってる・・・・・
俺たちは押し黙った。
・・ドン、ドン、ドン。
ノック音が少し強くなる。
「なあ、開けてくれよ。なんでみんないないんだ?」
・・・・・・・・・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ダァンッ!!
ロト「っ!!」
レック「・・・ッ」
びくりと体が跳ねた。
・・・・・ドンッ、ドン・・
「・・・おい、・・・・開けろっての」
・・ドン、ドンッ、・・・ガチャガチャガチャッ・・・ドン、ガン、ダンッ!
・・ガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャ
ロト(・・・・・・・・・・・・――!)
「聞こえないのか?開けろって言ってるだろ。鍵を。聞いてるのか?
・・・・・・・開けろって言ってるだろおおおおおおおおおおおおお!!!!」
ガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガ
バキッ。
・・・・・・・・・・鍵が壊れた。
レック「・・・・・・・・・・・・・・・っ」
ぎいいっ、と音を立てて扉が開いた。
そして・・・・・・・・・・・ゆっくりと。
ソイツは部屋の中に入ってくる・・・・・・・・・・・。
うつむいたまま近づいてきて、・・ある程度来ると顔を上げて・・・にこりと笑った。
ソロ「・・・・・・みいつけた」
ロト「ッ!!」
俺は銃を振り上げ、ソイツに向けた。
ソロ「・・・それ、なに?・・・さっきはびっくりしたよ・・・でも」
ソイツは後ろ手に隠していた右手を、ゆらりと体の側面に出した。
その手には、乾きかけた血で黒光りする鋸が・・・・・・
ソロ「もう効かないよ」
子供のように無邪気だった笑顔が、ニイィ・・・と歪み異様な雰囲気を醸し出す。
・・・・・殺される。
気付いたときには発砲していた・・しかしソイツは俺よりも早くそれを察知し素早くしゃがむ。