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伝説の超ニート トロもず
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ドラクエ:disorder 歪みゆく英雄譚の交錯 第10話

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そのまま立ち上がりながら信じられない速さで俺の目の前まで来ると、銃を持っているほうの手をがしっと掴んだ。

ロト「な・・・・・・・っ!?」

・・銃弾を避けるなんて・・・・・・・・

そしてまた無邪気な子供の笑顔に戻って、

ソロ「捕まえたー」

次の瞬間ぐいっ、と凄まじい力で腕を引っ張られた。
 
ロト「ッ!?!?」

視界が横に弾け飛び、背中から壁に叩きつけられる!
衝撃、一歩遅れて激痛が走り――

ロト「・・・・かは・・・っ」

こんな不意打ちを食らっては、なかなか立ち上がることもできない。
崩れた壁の破片が頭上からパラパラと降ってくる・・・

ソロ「ふふ・・さっきのお返し。じゃあ次は―・・・」

ギラリと照明の光を反射する刃が、俺の頭上に振り上げられる。

ソロ「逃げられないようにしておこう」

ロト「・・・・――――――ッ!!!」

ソイツが目を見開いてニタァ、と笑った瞬間――

ぱっ、と目の前に白い閃光が走った。
爆発にも似た音と共に、壁際に積まれた武器群にソイツの体が打ち付けられる。
壁が破壊され、電撃魔法特有のパチパチという空気が収縮される音が聞こえた。
レックが魔力のオーラを纏ったまま、俺の手を引いて立ち上がらせてくれた。
・・・ギガデインを撃ったんだ。

レック「早く逃げよう!」

ロト「っ・・・ああ」

しかし。
俺が立ち上がった時には同時に、アイツも立ち上がっていた。

レック「・・・・マジかよ・・・!」

・・こいつ、レックの本気のギガデインを食らって立ち上がってみせたぞ・・・

ソロ「・・・・・痛い」

だが顔の左半分が焼け焦げ、肉がただれている。
左目も潰れて血が滴っていた。

ソロ「・・・また逃げるの・・・?
せっかくお兄ちゃんに・・」

・・お兄ちゃん?

レック「ロト!!」

レックが早く逃げるぞ、と目で言う。
アイツが痛みで怯んでいる隙に撒いてしまわないと。

俺たちは振り返らずに、2階への階段を駆け上った。
すると下からアイツの声が聞こえた。

「・・無駄だよ、逃げたって。もうこのお家からは出られないんだから」

・・・・・・・・何だって・・・・?

レックと俺は2階の西廊下を進んでいった。あてがあるわけじゃないが、アイツの視界に入らないよう移動しないと危険だ。

2階の造りは一見1階と同じように見えるが、西側と東側の廊下が突き当りになっておらず繋がっている。また1階ではただの部屋である位置の扉の中が隠し通路になっていたりと、身を隠すには最適だ。

・・・・♪~・・・♫~~♫~・・・~♪~・・・・・・・・

・・・廊下の奥から足音と・・・よくわからない言葉の歌が聞こえた。アイツももう2階に来てるようだ・・・このままだと鉢合わせになる。
俺とレックは見つからないように、廊下を順々に回っていった。

そしてうまく1週して、アイツが奥にいるうちに急いで階段を下り、1階のホールに戻ってくると、玄関扉を開けて外に出ようとした。

が・・・・・・

ロト「な・・・・・・・・あ、開かない・・・・・・!?」

鍵がかかっているわけでもないのに、扉は固く閉ざされていた。
それなら魔法で、とライデインを放つが、見えないシールドのようなもので弾かれ扉はびくともしない。

レック「嘘だろ、閉じ込められてる・・・」

さっきアイツが言っていたことは本当だったんだ。
他にも残っている扉は全て調べたが、どこも、何をしても、開くことはなかった。
・・全ての扉が、閉ざされた・・・・・・・・。

ロト「・・・・・・どうすれば・・・・・・・・・・・」

俺は困り果てて辺りを見回した。
・・・・・・・・・・・・?

ホールの真ん中に、紙切れのようなものが落ちている。
レックも気付いているようで、それを見ていた。

レック「・・・またアレか・・・・・・」

ロト「・・・・・・・取りに行こう」

・・・・・・・・・・・・手に取ってみると、それは今までに何度か見た注意書きの紙だった。

『追跡者から逃れるための手順↓
          ①それを理解している者が単独になること
          ②目が見えるようにしてやること
          ③正しい名で呼んでやること』

ロト「・・・・・・???」

・・・だめだ、意味がわからない。
・・・レックを見ると、・・目を瞠って硬直している。

・・・・・・そしてこうつぶやいた。

レック「・・・・・やっぱりそうだったのか・・・・・・・・・・・」

レックは注意書きを戻すと、俺を見て言った。

レック「ロト、オレたちは別れて・・・どうにかしてあいつをオレのほうに来させなくちゃならない。お前はどこかに隠れていてくれ」

ロト「はぁ!?何を言ってるんだ、そんなこと・・」

レック「そうじゃないと助からないんだ、オレたちも・・・・ソロも」

確信めいた目と声。
・・・・・・俺は・・・レックを信じることにした。

ロト「・・・・・・・・わかった・・・。・・考えがあるんだろうな?」

レック「ああ、もちろんだ」

俺は一度下を向いて床を見つめる。少しして顔を上げ、頷いた。
────────
────

4日目 09時00分 ―レック―

ロトは2階へ続く階段の下に隠れた。
危険そうに見えるが、オレもロトもそこが一番見つかりにくいと踏んでいる。

ソロはその階段から降りてくるから、ホールの真ん中にいるオレが目に入らないことはまずない。そうすればあいつのことだ、他のことなどそっちのけで向かってくるだろう。

・・・・・・・そうだ、大丈夫だ。みんな助かる。
もうあいつの体に人殺しなんて・・・させない。

オレは銃を上着の中に隠し、見えないようにした。

ムーンのあの変わり果てた姿が脳裏に浮かんだが、オレは目を硬く瞑ってそれを打ち消した。
今は嘆いている時じゃない、涙なら後で流すべきだ。

だが・・・意思とは裏腹に、目頭が熱くなってきた。
同時に、驚きと危機の連続で一時的に麻痺していた悲しみが押し寄せてきた。

ムーンは生き返らない。亡骸が生前の姿に戻ることもない。
オレたちがあの休憩室に戻ることはできない・・・。閉ざされた扉たちがそれを語っている。

ムーンは・・・・・・・・・・あのままの姿でたった1人、そこに残るのだ。
永遠に。


あまりにも・・・・・・・・
あまりにも無慈悲な・・・・・・・・・・運命・・・・・・・・・・・・・・・・。

・・・・♪~・・・♫~~♫~・・・~♪~・・・・・・・・

・・・・・・・・・
ソロの声が聞こえた。何かの歌を口ずさんでいるようだ。これは・・・この言葉には聞き覚えがあるな。

・・・天空語か・・・・・・。

顔を上げると、ソロが階段を下りてきていた。
呪文で治したのか、顔の火傷はなくなっていた。

ソロ「・・・・・あれ、逃げないの?知らないお兄さん」

・・・・・・。さっきはオレの名前をはっきり言っていたくせに・・・

ソロ「でもちょうどいいや、お兄ちゃんに邪魔もされないし。
一緒にお人形さん遊びしようよ」

鋸を構えて笑顔で近づいてくる。
・・・オレは目を背けずに、相手の目を見て言った。