ドラクエ:disorder 歪みゆく英雄譚の交錯 第12話
だからあの筆談が10年前のものだということにも筋が通る。
そして、あと1つのピース。
絵が完成するために必要なあと1つのピースは・・・・・・
ループしていないはずのソロに変化がないという謎の答えだ。
レック「ロベルタ、お前たちはどのくらいの間ここにいたんだ?」
ロベルタ「どうだろう・・・多分80年くらいじゃないかな」
レック「・・・・・・・・・。」
やっぱりおかしい。ソロの外見はどう見ても10代後半か、いって20代前半だ。
まるでここに来てから時間が止まってるみたいだ。
ロベルタ「・・・・信じられない?」
レック「いや。信じてる。こんなところで嘘を言っても仕様がないだろ」
このゲームの展開が仕組まれたものであるなら、きっとこの謎の答えが近くにあるはずだ。
オレは部屋の中を見回し、あるものに目を止めた。
レック「・・あの本は?」
ロベルタ「さあ。お兄ちゃんが持ってきたんじゃない?生物学の本なんだって」
机にぽつりと置かれた紺色の、辞書のような厚さの本。
ソロはあれを読んでいたのだろうか?
ロベルタ「気になるなら、あとで読んでみれば?」
レック「ああ・・。・・・・・・そう言えば、天空人ってのは怪我とか痛みに耐性があるのか?銃で頭を撃たれたのに痛くもかゆくもないような顔して・・・自分で言うものなんだけど、オレのギガデインを食らってケロッとしてられるなんてありえねえ」
ロベルタ「それは僕じゃなくて、お兄ちゃんが平気だからだよ。拷問のおかげで慣れたみたい」
痛覚が鈍っているということか・・許容値を超えた苦痛が続いた影響で神経系統に異常があるのかも知れない。
ロベルタ「そうそう、なんか大きな怪我の跡って魔法じゃ治らないんだね。ケロイドとか、縫合とか植皮の跡とか」
レック「え・・・そうなのか?」
ロベルタ「何十年も待てば少しずつは薄くなってくけど」
レック「オレたちは普通に元通りになるぞ?」
ロベルタ「ああ、じゃあ多分天空人の血のせいかな?時間の流れ方が違うんだろうな」
レック「・・・・跡が残ってるのか」
ロベルタ「うん。中身が抜かれたせいで体が軽くなっちゃったくらいだよ。
・・・・・・見る?」
レック「・・・・・・・・・・・・・・・・。」
ロベルタはベルトを外し、上着を脱いでいく。
肩や腕に残る生々しい傷跡・・・その時点で既にオレは目をそらしたかったんだが、本当に見るべきでなかったのは白い服の中だった。
レック「・・・・・・・・・・・・・・・――!!」
見た瞬間、胃液が喉まで上がってくる。
オレはたまらず部屋を飛び出し洗面台に向かって走った。
レック「・・・・―っげほッ、げほっ・・かは・・・っふ、ぅうえ・・・・・ッ」
いくらか胃の内容物を吐き出した。
喉がヒリヒリする。
・・もう無理だ。これ以上あいつの話を聞いてたら気が狂ってしまう。
今日はもう、やめよう。
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――――――
ロベルタ「・・・・僕もう眠いよ・・お兄さんもそろそろ休んだら?」
レック「ああ・・」
後頭部に鈍い痛みを感じる。そう言えばこれまで、あまりゆっくり眠った記憶がない。
廊下に出てみると明かりは消えており、耳が聞こえなくなったのではと心配になるほど静かだった。
ロベルタ「お兄ちゃんには特に何も言わないであげてね。ああいう性格だから」
ベッドに横になり、天井を見つめながらそう言うと、ロベルタは目を閉じた。
レック「ああ、おやすみ」
・・オレも部屋に戻ろう。
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――――――
5日目 03時30分 ―エイト―
・・・・・・・・?
レックさんが、何故かソロさんの部屋から出てきた。
こんな時間に何をやっていたんだろう?
僕には気付いていないみたいだ。・・声をかけようかとも思ったけど、何だか・・・
エイト「・・・・・・・・・・・・・。」
レックさんの手には、1冊の本があった。紺色の・・・
あれは・・・僕が読んでいた本?
「見捨てられた異端児たち」確かソロさんが持っていったはずだ。
なぜレックさんに渡したんだ?
・・・こんな時間まで一体何を話していたんだろう?
明日はトライアングルの中心に挑まなければならない。体力もできる限り回復させておかなければいけないというのに。
・・かく言う僕もまだ眠らずに廊下を徘徊している。
でもそれはただ眠れないからだ。多分無意識のうちに緊張していて、眠れる精神状態ではないんだろう。
・・・・レックさんは・・・・・・・・・
僕達に何か隠しているんじゃないのか?あの屋敷を離れた時からどこか、落ち着かない感じだ。
それを言えばロトさんだってそうだ。もともとそんなに喋る方ではないと思うけど、あれからさらに無口になった。
声をかければ応えてはくれるけど、自分からはほぼ何も話そうとしない。
ソロさんは相変わらずだが・・・・・・
・・・・待て。
やっぱりおかしい。
2人とも絶対に何か隠している。だって、そもそもあの屋敷で何があったのか知っているのはあの3人だけだ。
ソロさんが明日の話をした時も特に驚く様子はなかったし、2人ともまるで・・・・
・・・・・・・そうか。
あの2人も・・・加担してるのか。だとしたら説明がつく。
そうだ・・・・ソロさんは、あんなことがあったというのに、悲しむ様子を見せたのはほんの一瞬だけで、まるで何事もなかったかのように振舞っている。
そしてレックさんはこんな真夜中に、人目を避けるようにしてソロさんと会っていた。
さらにあの本。「見捨てられた異端児たち」・・・・・・・・・。
それらが意味するものは一体何か?
そんなの決まっている。
ソロさんがムーンさんを殺したんだ・・・。
そうに違いない。
だからなにか他の驚異によってムーンさんが死んだと僕らに思い込ませるため、銃を用意し、屋敷内を警戒するふりをして・・・そして僕たちを外に出し、3人で何をしていたか?
おそらく死体の処理。それと口裏合わせ・・・そして、その何かと戦って負傷したように見せるため怪我をした状態で出てきた。
そうかわかった。
ロトさんとレックさんが無口になり、何かを隠しているように見えるのも、そもそもが演技なんだ。
そうすれば何があったのか話そうとしないことにも僕らは自然と頷ける。
ムーンさんを殺した“他の何か”が恐ろしくあまりにも強大すぎて、勝てる見込みがないからまだ話せないと思い込ませたい。
そんなところだろう。
だとしたら、ムーンさんの死は端から仕組まれていたのだと考えるのが妥当だ。
そうに決まっている、そうとしか考えられない。
最初から殺すつもりでいたんだ・・・あの3人は繋がっていた。
そしていずれは他の誰かを、また1人、また1人と・・・
いや、そうすると明日は絶好の機会なんじゃないのか?やり方はどうであれ、助けられなかったふりでして、一度に何人も殺せるかも知れない・・・そうかだからソロさんは僕らに何も言わないんだ。何があるのか、トライアングルの中心が一体何なのか。
第一「今教えても意味がない」なんて、まだ行ってもいないのにどうしてわかるんだ。