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伝説の超ニート トロもず
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ドラクエ:disorder 歪みゆく英雄譚の交錯 第13話

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サマル「・・・ねえ、この部屋・・・床に小さい穴がたくさんあるんだけど何・・?」

ソロ「ああ、それか・・・・・」

・・・・あれ?あの液体の水溜り、さっきより大きくなってる?

ソロ「それは液体中の血液を吸い込むためのものだ。あの容器に送るための管に続いてる」

・・・・・・・・・・・・・・え?

ソロ「もう始まってるから手短に話すぞ、どこかに手をいれる穴があるはずだ。両手が終わればそこから出られる。だいたい1時間半くらいでHFが天井まで溜まる」

え?・・え?・・・何?

どういうこと?

それって・・・・・・

ソロ「大丈夫だ、うまくいけば膝から上は無傷で済む。まあ十中八九歩けなくはなるだろうが・・・それくらいなら我慢できるな?」

まるで子供に怪我の消毒を施す父親のような言い方だった、信じられない。

サマル「ま、待ってよ・・・どういうこと・・・!?」

アレン「おい、何をしてるんだ!出られる方法があるならそれを教えろよ・・!」

ソロ「今教えてるじゃないか」

アレン「サマルが無事に出られる方法を教えろって言ってるんだ!!」

ソロ「できるだけ無事で済むよう言ってやってるだろ」

アレンとソロさんの声がだんだん言い合いじみてくる。
振り返ると、黄色い液体はもう水溜りではなくなっていた。片方の部屋の角までいってる。

サマル「・・た、助けて!どうすればいいの・・・!?」

ソロ「壁のどこかに穴があるからそこに腕を入れるんだ」

サマル「入れたら出られるの?」

ソロ「いや」

・・どういう意味!?

ソロ「途中で引き抜いたりしなければすぐに終わる。いいから早くしろ、上半身だけになりたいか?」

突然、ソロさんが脅すような声色になった。
びくりと体が震える。

ボクは絶望的な気分で銀色の部屋の中を見渡した。
鼻と口を押さえながら液体が溜まっている近くにも行った。目を皿にして壁を探したけど見つからない。

サマル「ない・・ないよ・・・」

液体はもう壁の端から端を埋めて少しずつこっちに近付いて来ている。
泣きたくなってきて、ボクは視線を落とした。

すると向こうの壁、床から40センチくらいの高さのところに、ぽっかりと黒い穴があいているのが見えた。
ボクはそれに駆け寄って、必死の思いで手を差し出した。
でもなかなか入れることができない。だって・・・何があるかわからないんだから・・・

けど横を見れば、異臭を放つ液体がブクブクと音を立てながら迫ってきている。
嫌だ、死にたくない・・・・・・・

ボクは自分の中で暴れまわる恐怖心を無理やり押さえつけ、左手を壁に捩じ込んだ。

ソロ「・・アレン、アルス」

アルス「?」

ソロ「耳ふさいでろ」

カチ、と音がした。次の瞬間

メキメキッ

・・・え?何、今の音・・・

ぐしゃっ


サマル「ぎゃああああああぁぁぁぁぁああぁああああぁぁああぁぁ!!?」

少ししてから自分でもびっくりするくらい大きな声が出た。

・・手首から先が、手の甲が手首にぴったりとくっついた状態で万力のようなものに挟み込まれている、その力はどんどん強くなっていく。

手の平側の手首の皮が引きちぎられ、中から何か飛び出しているのがわかった、つぶれた指先は肘より少し下あたりにめり込んで、容赦なく圧迫されて・・・

サマル「あ゛あ゛ああ゛あぁぁぁぁぁぁぁぁあ゛ああああぁぁ痛いいたいイタイいいいいいぃぃぃいい!!!うあああああああああああ゛ぁぁぁぁぁあああ・・・・!!」

目の前がチカチカする。
視界が赤く染まっていく。
痛み以外何も感じない。

サマル「うわぁぁぁぁぁああぁぁあああ・・・っや・・あ゛・・・」

ズルッと、引き裂かれた手首の裂け目から中身が引きずり出されるおぞましい感覚。
その直後、がっちりと挟み込まれていた手がするりと穴から抜けた。ボクはそれと同時に床に倒れ込んだ。

サマル「う・・っうう・・ああ・・・痛い・・・痛いよ・・・うううう・・・・・・・っ」

まだ、気が狂いそうなほどの激痛が左腕全体から肩を支配している。

その時あの異臭が一層強くボクの鼻をついた。
あの液体がもうすぐそこまで迫ってきてる、ああ、足がついてしまう・・・・・

サマル「っく・・・ひぐ・・・・ぅ・・・・・・」

引っ込めようと思ったけど痛みでそれどころじゃなくて足が言う事を聞かない。

そしてついに靴の先が液体に浸かった。5秒間くらいはなんともなかったけど、だんだんチリチリとした焼けるような熱さ、少ししてから小さな針を一斉に突き立てられたかのような激痛が襲う。

サマル「嫌・・・・」

やがてそれは直接炎を当てられているかのような休みない痛みに変わる。
黄色い液体の中に、赤い血がまるで立ち上る煙のようにボクの足から・・・・

サマル「嫌だ・・・助けて・・・助けて・・・・!」

気が付くと、嗚咽混じりにボクはそう呟いていた。
終わったはずなのに、どうしてボクはまだここにいるの・・・?

ソロ「サマル、もう片方の手も入れるんだ。そっちが終わればそこから出られる、さあ早く!」

・・そんな・・・・・・・・・・・・・

・・・・こ、こんなに痛いのに・・・こんな・・・こんなこと・・・
またやらなきゃいけないの・・・・・・・・・?

嫌だ・・・もう嫌だ・・・・・・・・痛い・・・・・・・こんなの嫌だ・・・・・・!

サマル「嫌ぁああ・・・・もうやだ、やだ・・・助けてよぉ・・・・・!」

ソロ「サマル!」

サマル「嫌だよ・・こんなのもうやだ・・・本当に、本当に痛いんだよ・・・助けて・・お願い・・・・・・」

ソロ「痛いのはわかってる、でもどうしようもないんだ。お前が自分の力で終わらせるしかない」

サマル「ひ・・っぅ・・・・く・・・・うぅ・・・・」

黄色い液体がくるぶしまで来た。指先の方はもう感覚がない。
このままじゃ本当に上半身だけになってしまう・・・・

やらなきゃ・・・・・やらなきゃ・・・・・・・・!

ボクはぐしゃぐしゃになった左手で必死に体を起こし、死んだような気持ちで泣きながら右手を穴に挿し入れた。


5日目 07時45分 ―ソロ―

思ったよりも早くできたな。この調子でいけば足首から下が駄目になるくらいで済むかも知れない。
まあ一番楽な最初のステージで死ぬことはないだろうから、端からそんなに心配はしていなかった。
しかし・・・・

アルス「も、もうやめてあげてよ・・・!」

ソロ「?・・やめろって俺に言われてもな・・・」

アルス「違うよ、それであの液体止められるんでしょ!?なんで止めてあげないの!?」

・・・・・・・・・・・・・。

アルスは俺の手元にあるレバーを指差した。
ああ・・・電気コードが向かっている方向で気付いたか。いや、そもそも横にHFと書いてあるんだった。

ソロ「止めたらあいつはこっちに戻ってこないぞ。この装置はステージを易しくしてくれてるんだ、わかるだろ?」

アルス「・・・!」

ソロ「手があの状態じゃ自然に歩くのは無理だ。足が溶けたって変わりゃしない」

俺がそう言うと、下の方から再びサマルの泣き叫ぶ声が聞こえてきた。