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伝説の超ニート トロもず
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ドラクエ:disorder 歪みゆく英雄譚の交錯 第17話

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レック「オレたちが一緒にいてやる。それなら怖くないだろ?」

ソロさんはこくりとうなずいて、再び視線を落とした。

ソロ「でも・・・・・お兄ちゃんは・・・・・・・?
・・みんな、は・・・・?」

レック「みんなって、ロトやエックスたちか?」

ソロ「うん。・・どこにも、誰もいなかった・・・・・」

・・・・・・・・・・!?・・・・・・

レック「・・・・・・・・・・・・・サマル、すまん。ちょっとここでこいつと待っててくれ。
オレはリビングの方を見てくる」

ボクは頷いて、足早に走り去るレックさんの背中を見送った。

・・床に座ったまま、レックさんの走っていった廊下の奥を見つめたままのソロさんに、そっと声をかけた。

サマル「・・・・・そんなところにずっと座ってたら、体が冷えちゃうよ・・?」

ソロ「・・・・・・・・・・・・・・・・・ん、・・・・・・・・」

少し下を向いて、視線を横に向けている。
ボクは近づいていって、手を差し伸べた。

サマル「大丈夫だよ。・・レックさんが戻ってくるまで、何かお話しよう?」

ソロ「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

ソロさんはうつむいたまま、突然すっと立ち上がった。そして壁際まで歩いていくと、手を後ろで組んで壁にもたれた。

・・初めて話すんだから当たり前の反応なんだろうけど、ソロさんの時とのあまりのギャップに、わかっているはずなのにいちいち動揺してしまう。

何を言えばいいのか迷っていると、ソロさんが小さな声で言った。

ソロ「・・・・・・・・・・・・ごめんなさい」

サマル「え・・」

何のことかわからなかったのに、胸の奥がちくりと痛んだ気がした。
そう言えばさっきソロさんにも謝られた・・・・

ソロさんが顔を上げて、ボクを見た。
・・ボクが小さく首をかしげると、首を左右に振ってまた下を向いた。

言葉はなかったけど、「なんでもない」と言いたかったんだろう。

サマル「・・・・今まで寂しかったよね」

突然、ボクはこう言った。自分で驚いた。
でも何か、自然に言葉が浮かんできたんだ。

サマル「ずっと・・・辛かったんだよね。なんで自分だけこんな目に、って思うよね・・。
・・・・・誰かに、・・わかって欲しかったんでしょ・・・・・?」

・・・・ソロさんは答えなかった。

でも、それでいいんだと思った。
きっとソロさんでも答えないだろうから。

不思議と、怒りは湧いてこなかった。
憎いとも、恨めしいとも思わなかった。

大好きだった人を殺した人が、目の前にいるのに。

心はいつになく落ち着いていて、穏やかだった。
ただただ目の前にいる人を、可哀想だと思った。

ソロ「・・・・・・・いい人、だね」

サマル「?」

やっぱり下を向いたままだったけど、ソロさんが口を開いた。

ソロ「お兄ちゃんが言ってたよ。弱そうに見えるけど、すごく強い心を持ってるって。
本当にそうなんだね」

サマル「・・・ソロさんが・・・・・?」

ソロ「うん。だから、いい人なんだ。・・僕、いい人と悪い人を見分けるの、うまいんだよ」

そう言ってほんの少し顔を上げ、ほんの少しだけ微笑んだ。

サマル「・・・・・・・・・・うん」

ボクはなんとなく、安心した。それと同時に、なんだか照れくさくもあった。
他に何かもう少し話そうと思って、息を吸ったその時・・・・・

ソロ「・・・う、あぁあああぁぁ・・!?」

突然ソロさんが頭を抱えて苦しみ始めた。

サマル「・・・・!」

ソロ「うがああああああああっ・・・・・痛い・・痛い・・・!!」

床に手をついて、もう片方の手で肩を押さえている。

サマル「・・まさか・・・・・・」

これって、レックさんが言ってた・・・・・・・・

突然目を見開いて弾かれたように立ち上がり、後ずさった。
まるで何かにひどく怯えるみたいに・・・前方の壁を凝視している。

・・・違う。
・・・・・何か・・・・・・・・・いる・・・。
ソロさんにしか見えてない何かが・・・

サマル「・・どうし・・・・」

ソロ「うわぁああぁぁああぁぁあああああああああああ!!!」

絶叫しながら走り出し、廊下の奥へと消えていったソロさんを慌てて追いかける。
すると彼は壁に背中をつけ、ずるずると座り込んでいる途中だった。

その視線は、自分より少し上の・・まさに目の前に向けられていた。

ソロ「・・・・・・嫌だ・・・・・・・来ないで・・・来ないでよ・・・・!!」

ボクがそっちに走っていこうとした瞬間、

ソロ「・・・・・・・・・・・」

まるで魂が抜けたみたいにすうっと首の力が抜け、そのまま倒れてしまった。

サマル「・・!」

ボクは急いで駆け寄って、その体を揺すりながら名前を呼ぼうとして・・・・・
はっと、動きを止めた。

何と呼べばいいのかわからなかった。

どっちの名前で呼んでも、違和感があった。
それぞれ別の違和感が。

サマル「・・・・・・・・・・・・・どうして・・・・・・・・・・・」

こんなことになってるんだろう。

ボクは下を向いて、下唇をかんだ。
そして一度深呼吸をして・・・・・・・・・顔を上げた。

サマル「・・・・・・・しっかりして・・・ソロさん・・・」

呼びかけても、何も反応はなかった。

でもボクはそのまま立ち上がった。どうして自分がそうしたのか、うっすらとしかわからなかった。

立って、倒れたソロさんを見下ろすと、すごく不思議な感じがした。

上から下を見ていることにひどく違和感を覚えた。

ソロさんにとって上から見下ろされることが苦痛なのと同じだ。
ボクは上から見下ろすのが苦痛なんだ。納得できない、というか。

劣等感の塊・・・なんてものじゃあ、もうない。

自分より劣っている人がいることが苦痛?
自分でわけがわからない。

だったら何を望めばいいんだろう。人より劣っているからいつだって自信が出なくて。
いつだってそれが痛みだった。
なのにそうじゃない状況を想像してみると、痛みが増す。

だったら、ボクは何を望めばいいというのだろう。

このままずっと最下層の底辺の、最も要らない存在でい続けること?
そしてみんなから要らない要らないと蔑まれ、疎まれること?

でもそれを想像すると、さらにボクの心はキリキリと痛むんだ。
張り裂けんばかりに。

・・一体ボクは何がしたくて、何になりたいんだろう?

ソロ「・・・・・・・・・・・・・サマ・・ル・・・・・・・?」

かすれた声で名前を呼ばれる。

ボクは特に驚きもせず、うっすらと開いたソロさんの目を見た。
ソロさんもボクの目を見ている。
・・・そして悲しげに微笑んで、

ソロ「・・・・・・・・・・ひでえツラだな・・・・・・・・。
昔の俺とそっくりだ・・・・・・・・・・・・・なんにも、見てない目だ・・・・・・・・」

体を起こして、立ち上がりながら小さく笑った。

サマル「・・・・・・大丈夫?」

ソロ「ああ。・・・一体何があったんだ?」

サマル「・・・・・・・・・・それは・・・その・・・・・・・・」

ソロ「・・・・・・。・・・・・・・静かだな」

リビングの方を向いて、ソロさんがつぶやいた。