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伝説の超ニート トロもず
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ドラクエ:disorder 歪みゆく英雄譚の交錯 第22話

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足から力が抜けて、その場にへたり込んでしまった。

サマル「・・・みんな・・・どうして・・・・・・」

自分でも計り知れないような安心感だった。

ナイン「本当によかったです・・・っ」

アベル「大丈夫?立てるかい?」

アベルさんが手を貸してくれた。
ボクは震える足で立ち上がり、・・・レックさんたちの方を見た。

エックス「・・・レックたち・・・何やってんだ・・・・・・?」

その時だった。

絶叫していたソロさんが、突然右手を大きく振り払う。

レックさんは同時に何かの魔法でそれを受け止め、地面を削りながらジリジリと後ろに下がり始める。

ロト様も意識を取り戻し、防御の姿勢をとって吹き飛ばされるのを防いだ。

アベル「っ!?」

レックさんがソロさんに向かって、見たこともないような稲妻の魔法を打つ。
ソロさんはそれを、右手を前に突き出すだけで防いでいた。
でもその体の前には、まるで見えないシールドか何かがあるようにも見える。

アルス「ど・・・どういうこと・・?なんで・・・」

サマル「・・・・・っ」

なんと説明すればいいのかわからない、という以前に、声が喉に詰まって出なかった。

何しろみんなはソロさんのことをよく知らない。
突然本当のことを言っても・・・という考えが頭をよぎった。

サマル「・・・みんな・・・あれは・・・・・・・ッ・・」

その時、爆音とともに周りの壁や天井が一斉に音を立てて崩壊した。
地面も揺れ、砂埃が舞う。

アレン「・・・・・・!?」

そしてそれが沈んだあと、ボクらの目に映ったのは・・・・・

まるで竜巻のように風と共に巻き上がる壊れた壁の残骸、
その渦の中心で、上空にとどまったままボクたちを見下ろすソロさんだった。

アルス「・・・・・・・・・・浮いてる・・・・」

エックス「なんだあれっ・・・どうしちゃったんだ・・・!?」

サマル「・・・・・!」

ソロさんがボクたちの方を見た。

サマル「みんな危ない!!走って!!」

ボクが叫ぶと同時に、ソロさんの周りを飛んでいた壁や天井の破片が、すごい速さで一斉に飛んできた。

アレフ「!!」

みんな走り出し、間一髪のところで避けた。
けど・・・この洞窟への入口だった扉は瓦礫で埋まってしまった。

崩れた壁と天井の向こうには、ひたすら闇が続いている・・・・

レック「みんな・・・!!どうしてっ・・・」

レックさんとロト様が駆け寄ってくる。

ロト「どうやってここに・・・
・・・・いや、今はそんなことはどうでもいい。みんな、協力してくれ」

アレン「ロト様っ・・・一体、どうしたというのですか・・・!?何が・・・」

ロト「説明は後だ、とにかく・・・・」

その時、ロト様は言葉を途中で切って、隣にいたアレンの腕を掴んで引っ張った。
ほぼ同時にアレンがいた場所の地面が、轟音と共にへこみ砕け散る。

そしてその直後、アレンとロト様以外の全員が突如、血を噴き出しながらバラバラの方向に飛び散った。
ボクも。

サマル「うぐ・・・・ッ」

体のいたるところが切り裂かれていた。

痛みをこらえながら立ち上がり、回復する。

エックス「な・・・んだっつうんだよ・・・!
戦うのか・・・!?」

レック「待て・・・っあいつは・・・!!」

レックさんが立ち上がり、そう言いかけた時。
エックスさんの体が突然上空に跳ね上げられた。

受身を取る暇すら与えず、そのまま頭から地面に叩きつけられる。

エックス「がぁ・・・!!」

レック「エックス!!」

レックさんは走りだし、でも途中で地面を蹴って横に移動する。
その瞬間レックさんのすぐ背後の地面が轟音と共に砕け散った。

レックさんは体勢を立て直し、気絶してしまったエックスさんのもとに駆け寄って、抱き上げる。

その時レックさんを見たソロさんが、ハッとしたように動きを止めた。
そして両手で頭を抱え、悲鳴に近いような呻き声を上げた。

レック「・・・ソロ・・・・・・・」



2日目 09時42分(8日目 00時00分) ―レック―


ソロがオレを見て動きを止めた・・・だがすぐに押し寄せる本能の波によって、それはかき消されようとしていた。

うああああああああああ、ぎゃああああああああああっと耳を塞ぎたくなるような絶叫が木霊する。
ソロの周りの辛うじてまだ残っていた壁も、弾け飛ぶようにして崩壊した。

・・ソロはオレの方に右手を突き出した。

衝撃か斬撃を覚悟し、ぐっと体に力を入れたが・・・またしてもそれは意味を成さなくなった。

ソロはオレの方に向けた右手を、引き戻すようにして左手で掴み・・・自らへし折ったのだ。

レック「!!」

そしてソロは、動かせる方の左手をオレの方へ伸ばした。
・・・・・だが・・・・・それは攻撃をしようとしているわけではないことに、オレはすぐに気付く。

オレが目を覚ましてから今まで、限界まで見開かれ、理性などひとかけらも感じさせなかったソロの目が。
落ち着きを取り戻していた。

が・・・その表情は苦しみに歪んでいた。オレを見つめている。

・・・・その時、世界が無音になった気がした。

オレの方に手を伸ばし、泣き出しそうな顔で・・・オレの目を懸命に見ようとしながら。

何か、言葉を口にした。

聞こえはしなかった。が、・・オレには自然と、何と言ったのかわかった。


―――――――「た す け て」―――――――


レック「――・・・・・・ッ」

世界に音が戻る。

しかし、妙に静かだ。

自分の息遣いと、身悶えるソロの叫び声以外、何も聞こえなかった。

・・・・・・・振り返ると・・誰も、立ってはいなかった。

誰もが地面に倒れ、血を流して動かなくなっている。

腕の中のエックスも、まだ目を覚まさない。

・・・・・・オレは呆然と、地面を見つめ・・・・・徐々に早くなっていく自分の呼吸を落ち着かせようと努力した。

胸の中で暴れまわる焦燥と恐怖、絶望。

意識の中で、全てが飽和していく。

オレは乱れて不規則になった呼吸を噛み殺すようにして、エックスを地面に横たわらせ、ふらつきながら立ち上がった。
涙が溢れてくる。

息が苦しい・・・。

ひどい立ちくらみのようなものに襲われ、前後感覚がなくなる。

・・・エックスが持っていたスナイパーライフルを拾い上げ、世界がグラグラ揺れる中、歩き出す。

オレの頭の中にあったのは・・・いつかソロの部屋で読んだ本に書いてあったことだった。

クリアは本人の利き腕が使用可能な状態にあるときにしか使えない。

どうしてもっと早く思い出せなかったのだろう。
もっと早く思い出せていたら、・・・・・・・きっと・・・

オレが歩いている間にも、そこかしこの地面が次々と・・まるで砂糖菓子のように粉々になり、陥没し、衝撃で地面が揺れる。

オレはソロの背後に回るつもりでいた。

今なら回り込める。
そして一発で決めなければならない。

ソロの腕を、右腕を使用不能にしなければならない。

既にあいつ自身が折って、肘から下を動かせなくなってはいる。
だが・・・きっと切断するか潰すかしなければ。感覚を殺さなければいけないんだろう。