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伝説の超ニート トロもず
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ドラクエ:disorder 歪みゆく英雄譚の交錯 第22話

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エヴィギラヴィットの学習能力は並大抵のものではない。
失敗したら、絶対に次はない。

間違いなく殺される。

チャンスは・・・一度きりだ。


「助けて」という言葉の意味を・・・オレは、今の状況で、こういう意味だと受け取った。
それ以上はもう・・・
今のオレには無理だ・・・・・・・・。


オレは地面に片膝をつけ、銃をソロに向ける。
心臓がズキン、ズキンと音を立てて痛み出す。

手が震える。

・・助けてやらなければ。
あいつを。
みんなを。

オレがやるしか、ないんだ。

トリガーに指を当て、狙いを定める。

当然、ソロは動いていないわけではない。
頭を押さえてふらつくように揺れ、時折上を向いて苦しげに肩を上下させる。

ある一瞬を・・・・狙わなければならない。

ぐちゃぐちゃになった心に浮かぶのは、あの夢だった。

手を差し伸べているつもりが、逆にソロを傷つけただけの自己満足だったこと。
だから今度は本当に、本当に、あいつの心を救ってやらなければ、と思った。

なのにどうだ、オレは今何してる?

あいつに・・・・・・銃を向けているじゃないか・・・・・・・・・。


・・・・・・・・それは一瞬のことだった。

あてがった指に力を入れる。
銃を持つ腕に衝撃が走り。

ソロの体ががくんと揺れる。

オレは銃を降ろし、立ち上がった。

血がボタボタと地面に落ちるのが見える。

弾は確かに、ソロの右腕の付け根に当たり、貫いた。


・・・・・・だが。

骨に軌道をずらされたか。
大きなダメージを与えはしたが・・・・・・神経を切断するには至らなかった。
ソロはまだ宙に浮いている。

かなりの速さで赤い染みがソロの腕に広がっていき、手を伝って地面に雫が落ちていく。

オレはどうすることもできず、その場に立ち尽くした。

確かに狙った場所に当たったが。
・・・・・・至らなかった。

目的を果たせなかった。

・・・・・・失敗、した・・・・・・・・・。

ソロが振り返る。
下を向いているため顔が見えない。

オレは足の力を抜いて、膝立ちになった。
もう、腕を上げる気力すらなかった。

ソロの血まみれになった右腕が、不自然な勢いで肩から上がり、ぶら下がるように肘から下が折れ曲がっている。

空中にとどまっていた大量の潰れた血の滴がすうっと動く。

クリアについたソロの血だった。

ゆっくりとオレに近づいてくる。

つう・・・とその血が見えない何かを伝って、それぞれ下向きに赤い直線を描き・・・
次の瞬間、できた赤い線が全てぐにゃりと曲がった。

クリアの形が変わったのだ。おそらくは、刃。

・・・・・・・・・・・殺される。

オレは無表情のまま、ぼうっとそれを眺めた。
何も考えられなかった。


・・・・・・・その時。



・・パカンッ・・・・・・


乾いた音が洞窟内に響き渡った。

その瞬間、ソロの右腕がブシっと血を噴き出し、吹っ飛んだ。

どさりと音を立てて、腕が地面に転がる。

レック「・・・・・・・・・え・・・・・・・・?」

ソロはハッと目を見開いて。

・・・ごく自然に、ふっとその体が落下した。

さっきよりも重々しく鈍い音を響かせ、ソロは地面に落ちた。


ソロ「・・・・・・・・・ぅう・・・・・・」

ほんの少し体を縮めたが、・・・・すぐに動かなくなった。


レック「・・・・・・・・・・・・・・・・・」


無音。

静寂の中、オレはひとり立ち尽くしていた。

・・・・体が熱くなってくる。
頭痛は徐々に治まり、前後感覚も戻ってきた。

・・オレはそのまま何もできず、呆然としていた。
手にはまだライフルを持ったままだが、もうそのトリガーに指を当てる気はない。

やがてソロは意識を取り戻し、苦しそうに咳き込みながら何度か吐血した。
そして震えながら顔を上げ・・・オレを見た。

レック「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

オレはすぐに確信した、ソロが元に戻っていることを。
目を見ればわかった。

オレはソロに歩み寄った。

・・・・・歩み寄った、のに・・・・・・なぜだ?

ちっともソロに近づかない。

・・・しばらくしてからオレは、自分の足が少しも動いていないことに気づいた。
進んでない。

・・オレはソロに歩み寄ることができなかったのだ。

ただ苦しそうなソロを見下ろしているだけだった。それ以上、何もできなかった。

ソロ「がっ、ァぐ・・・!はっ、はっ、はぁっ、げはッ・・・!」

ソロの手に赤い斑点のようなものができ始めた。それは少しずつ大きくなっていく。

そして・・・・赤くなった部分が、溶け出した。
崩れるようにドロドロになって、糸を引きながら地面に落ちていく。

・・・・・・・・・液状化・・・・・・・・。

どうしてだ。抗体は確かに打ったのに。

地面に流れ出す、血と溶け出した皮膚や肉が混じった液体の量は、どんどん増えていく。

やがて骨が顕になる。

ソロ「あ゛っ・・・ぅげ・・・で・・・ぐ、ぎゃ・・・・・っ」

奇妙な音・・・何かが砕けるような音が聞こえた。

ソロの悲鳴に水気が混じり始める。

レック(・・・・何も・・・・・・・)

ソロ「ごぽっ・・・・ひ、ぐ・・・っごあああああああ!!うぐぅぅうううぅぅうううううううううううッ!?」

レック(何もできない・・・・・・・)

ソロ「がはっ、ごぷ・・・ごぼぼぼっ・・!ぐ・・・オっ・・・げぁあああああ・・・
がぐぇがあああっふぐあぁああああああ・・・!!」

見てられるような光景じゃなかった。

凄まじい苦悶の表情、形を失っていく体、聞いたこともないような悲鳴。
オレは微動だにせず、いや・・できず、それを見ているしかなかった。

だがオレはすぐに、手放しかけていた意識を大慌てで手繰り寄せることになる。

ソロ「・・・・・・ごっ・・・・・・ろ・・て・・・・・・・」

我に返ると、そう、言葉が聞こえたのだ。

ソロ「ろして・・・・殺して・・・・・・・っ」

レック「!!」

止まっていた思考が回転を始めた。

ソロは確かに言った。「殺して」と。
聞き間違いなんかじゃない。なんでそう分かるのかなんて自分自身に問うのも馬鹿馬鹿しいくらいに、オレの心に訴えかけてきた。

ソロは自分のせいでオレたちを傷つけたり危険に晒すことを何よりも恐れていた。
それこそ、自分の命を賭して守ることに何の疑問も感じないと。

だが自分が“犠牲者”である以上、それは許されず、だから守らなければならない状況を極力作らないようにしたいのだと言っていた。

それがソロの願いであったなら、この状況はソロを苦しめる地獄でしかなかった。

守るべき仲間を傷つけ、命を奪おうとしたのが、自分であるということ。

自らの意思でなかったとしてもソロには耐え難いことなのだ。
仲間を傷つけるわけにはいかないとか、人としてのなんたらとか言う以前に、ソロの個人的な・・・ある意味狂気的なまでの意志の高さからそれは伺える。

自分が仲間を守るのは当たり前。
必要なら死なないにしても、腕なり足なり差し出すことも当たり前。
厭わない。何の疑問も持たない。