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伝説の超ニート トロもず
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ドラクエ:disorder 歪みゆく英雄譚の交錯 第31話

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サマル「・・・・・・・・・・・・。」

自然とボクもアレンも、目線が下がってしまった。

ロト「彼を・・・・・・ソロを、憎いとは思わないのか」

え、と2人して顔を上げる。
・・・ロト様の口からそんな言葉が出るとは思わなかった。

アレン「・・思いません。彼は、・・・彼が本当の犠牲者なのだと俺は思います。
憎いのは・・・悪いのは全て、この状況ですから」

サマル「ボクもそう思います・・・」

脳裏に、子供っぽい微笑みを浮かべたソロさんの弟の顔が浮かんだ。

ロト「そうか。・・・そうか、よかった。ならいいんだ」

ロト様は心底安心したように表情を緩め、ため息をついた。

ロト「ごめんな、変なこと聞いて」

アレン「いえ」

返事をしながら、やっぱり気になるのかアレンはエイトさんの方を見ていた。

アレン「・・・・・ロト様、彼は」

ロト「・・ああ。こんな状況が続いて少し心が参ってしまってるみたいなんだ。
・・・無理もない」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
エイトさんは下を向いて忙しなく深い呼吸を繰り返すだけだった。
その肩は震えていて、弱々しかった。

ロト「いくら勇者だって、人間だ。怖いとか不安だとかそういう思いはあって当然だし、自信をなくすことや何もかもが嫌になる時もある。
・・俺だって、こう見えてけっこうギリギリなんだぜ」

アレン「・・・・・・・ロト様・・・」

サマル「・・・・・・・・・・」

少し笑いながらおどけるように言ったロト様は、いつもと変わらず頼もしく見えた。
今までと同じに、優しくて強い、憧れの・・・伝説の勇者様。

その心にはボクらと同じ弱さがあるのだと、・・・ロト様は言った。

ボクはこの時なぜか、その言葉がとても怖かった。なんだかボクらが頼れば頼るほど、ロト様が遠くに行ってしまうような気がして。

・・・どうしてそんなふうに思うんだろう?












8日目 15時13分 ―レック―



レック「・・・・・意外と時間経ってたな・・・」

時計を見てつぶやいた。

いつの間に眠ってしまったのだろうか。頭が少し重い。
ため息をついて体を起こすと、ベッドが揺れて軋んだ音を立てた。

すると横に寝ていたソロが少し肩をすくめ、薄く目を開けた。

レック「・・あ、すまん。起こしちまったか?」

ソロ「・・・・ん・・・・・・あれ・・・・」

横向きの状態から仰向けになると、やっぱり時計を見た。

ソロ「・・・・・寝てたのか」

レック「・・んん。・・・・・えっと、・・・あのさ」

ソロ「・・・・?」

レック「・・・その・・・・体・・・・大丈夫か・・・?」

顔が熱くなった。うわ、ぜってえ今赤くなってるオレ。

ソロ「・・・・・・ああ。ありがとう」

クスッと笑って、ソロも体を起こした。
ちょっとだけ恥ずかしがっているようにも見えた。

レック「・・・なんかごめん」

ソロ「何が?」

レック「いや、なんてーか、・・・勢い余って」

ソロ「勢いだったのかよ。俺はなんて反応したらいいんだ」

レック「ちがっ。・・その・・・トラウマ的にアレだったら・・・」

ソロ「言ったろ、もう大丈夫だって。それに駄目だったらそもそもできなかったと思うぞ」

レック「あ・・・それもそうか。んん」

ソロ「・・・・・・・・・・・・。・・・俺さ・・・・・」







8日目 15時15分 ―ソロ―


ソロ「・・・・・・・・・・・・。・・・俺さ・・・・・」

レック「・・ん?」

ソロ「ずっと怖かったんだ。他の世界の俺みたいになるのが。
・・・記憶が、混ざってくるんだ・・・」

レック「・・・・」

ソロ「・・裏切ったんだと思われて、仲間に殺されるとか。
逆に疑心暗鬼になって殺してしまったとか。助けられるはずの人を助けられなかったとか・・・そんなことになってしまうかも知れないと思うと、怖くて震えが止まらなかった」

レックを殺した俺の記憶はついさっき見た。
トライアングルの中心。
みんなが俺を殺そうとしてるのだと思い込んでいて、錯乱状態のままレックを酸の海に突き落とした。

断末魔の悲鳴。血で濁っていく液体。酸の匂い。
恐ろしくなって駆け出し、出会った仲間を次々に殺していった。

俺はその記憶を振り払って頭の中から消した。
その時レックは俺の前にいてくれた。体に触れていた。温もりを感じられた。

思わず涙が出た。

レックは生きている。ここにいてくれる。ちゃんと俺のそばにいてくれている。
よかった。よかった。
ここにいる。生きている。
ただそれだけで、どれだけ俺の心が安らいだことか。

レック「・・・・え、ちょ。・・なんで泣いてんだよ」

ソロ「・・・今までずっと怖かったけど・・・もうそんな心配しなくていいんだって思うと、嬉しくてさ。
一緒にいるだけでこんなに安心できる人は今までいなかった」

少し照れくさくて、うつむいたままレックの肩に頭を乗せた。

レック「・・・・あ」

ソロ「ごめん。今までたくさん怖い思いとか、悲しい思いとかさせて。
俺のせいで不安にさせたりして。
それでも俺を見捨てないでくれてありがとう。本当にありがとう」

涙が止まらない。

レック「・・・・・・・・お前さ、前にも思ったけど相当泣き虫だよな」

ソロ「うん。・・・・レックといると涙脆くなるんだ。
俺の弱さを知ってくれてる。なんか、取り繕う気がなくなるんだ」

レック「はは、ありがとな。・・よかった。オレの前では泣いてくれるようになって」

背中を優しくさすられる。レックに触られると少しくすぐったくて、体が軽くなる。
胸が温かくなって肩から力が抜ける。時にはそれだけで涙が溢れてくることもある。
何かそういう魔法でも使えるんじゃないかと思うくらいに。レックは俺の心を包んで、癒してくれた。


俺を“助ける”ことは、・・・すなわち俺の運命を変えること。
つまり俺の最後の時を知り、俺の全てを完全に理解することを指す。

それは不可能だ。レックにも誰にも、もちろん俺自身にもできはしない。

誰にも俺を助けることはできない。

でも、それでいい。完全に理解などされなくても、俺には大切な仲間がいてくれる。
涙を見せられる、そして傷を癒してくれる友がいる。

それだけでいい。充分だ。

もう何も恐れることなんてない。怖くない。

もう独りじゃない。


ソロ「・・・ありがとう。・・・・大好きだ」

レック「・・・・うん。オレも」

・・・温かい。なんていい気持ちなんだろう。
このままずっと眠ってしまいたい。

このまま、この気持ちのまま、溶けてなくなってしまいたい。

そっと手を回して抱きしめた。




――その時、つきんと胸に痛みが走った。



ソロ「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・レック」

レック「・・・ん?」

ソロ「・・・・・・みんなの声が聞きたい。一緒に行こう」

手を繋いだまま立ち上がると、微笑んだ。
レックも笑って、そうだな、とつぶやいた。


・・・・・・思い出してしまうと、どうしようもなく切なかった。

今日が終われば、・・レックにも、みんなにも、二度と会えなくなるんだ。