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伝説の超ニート トロもず
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ドラクエ:disorder 歪みゆく英雄譚の交錯 第32話

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―そうさせてもらうわ。・・まあ、そう言うあんたも結構おかしいとこあるわよ?
至って安定した性質、綺麗すぎるほど通った概念発生理由・・・・・・正直同じ破壊神とは思えないわぁ

―どちらかといえばバルタエンクに近い性質だよねえ。そういえば、どうして君はこっちに来たんだい?はっきり言って僕たちみたいな問題児ばっかりじゃ居心地が悪いだろ?

―・・そうかも知れん。だがそれをお前たちが知ったところで何になるというのだ

―それよ、それ。その性質・・・・私たちとは全くの別物だわ。あんた、一体何したのよ。相当なことじゃないといきなり飛ばされて序列4位なんてありえないわ

―僕も気になるなあ。ねえねえ、教えてよ

―・・・・知りたければ早く奴のところへ行って説教を聞いてくることだな。
話はそれからだ

―むう。・・はいはい、わかったよー

―行ってらっしゃい。次のループに入るまでに戻って来れられるといいわね

―――――――――――
―――――――












9日目 05時09分 ―レック―


ソロ「ああ、わかった。そういうことか。
やっぱり何も説明しないでいなくなったんだな?いくらなんでもそりゃレックが可哀想だ」

レック「・・・いなくなった・・・・・・・?・・ソロは・・・ソロはどこに・・・」

ソロ「それも言われてないのか?彼はもういない。厳密に言えば存在はしているが自我と意識はない」

レック「な・・・何だよそれ。どういうことだよ・・・!?お前は誰なんだよ!?
一体何が起きたって言うんだ!!?」

ソロ「落ち着けって。心配ないよ。
・・・・混乱してるだろうな。大丈夫だ、全部説明してやるから」

錯乱しかけ息を荒くするオレの肩を持ち、ゆっくりと目線を合わせた。

ソロ「いいか?
・・ソロは仲間をできるだけ多く長く生かすために必要なのは、絶対的な計算能力と判断力であって、感情は不必要だと考えた。感情に邪魔されてそれらの能力が鈍ってしまったり誤りがあったりすると、取り返しのつかないことになるからだ。それがどんなに些細であっても」

・・・・優しい声。オレを嗜めるように、そしてしっかりと理解できるように。

ソロ「だからソロは感情の全てを、自分が自分であるという意識ごとリセットした。
つまり、自我を無くしたということだ。それはすなわち“ソロ”という人間としての人格そのものを捨てたことを意味する。ただ記憶は情報として残ってはいるがな」

幼い子供に星の名前を教えるかのようだった。

・・・オレは何も言えず、次から次へと出てくる言葉を頭の中で整理する作業に追われていた。
つまり・・・ソロは自分の感情の全てを捨て、人格を忘れ去った。
だったら今のソロは・・・

ソロ「そう、お前が考えている通り。今ここにいる俺はソロとは違う、全くの別人。
だから彼はもういないと言ったんだ」

・・・・・・・・・・・・・・・・!!

レック「・・・・・・・・っ・・・・・・・・・う、そだ・・・・・・・・・・・・」

ソロ「嘘なわけないだろう。本当に何も言われてないのか?最後に別れの挨拶ぐらいしそうなものだがなあ」

レック「・・・・・・ッ」



――ありがとう、レック。・・・・大好きだ。永遠に



レック「・・・・・・・ぁ・・・・・・・・・・・」

ソロ「でも心配するな。全くの別人といっても記憶は受け継いでいるし、成すべきことも心得ている。言動や思考の傾向もすべて以前と同じように設定されているしな。
別人というよりは・・・そうだな、生まれたばかりの状態に戻ったと言うべきか」

レック「・・・・・生まれたばかり・・・・・・?」

ソロ「赤ん坊には自我も意識もないだろう。明確な感情というものもないに等しい。
その状態に、全ての思考と言動に適応される方程式を与え、擬似的な人格のようなものを作り出してあるのさ。だから一見、自我があるように見える。1人の人間のように見える」

レック「ソロが・・・・そうしたんだな」

ソロ「ああ。彼自身の生まれた原理もそれだった・・・何とも皮肉なものだな。
今彼は自分の体に、自分に限りなく近い擬似人格を植えつけた。それまでの記憶はあるから大雑把に見れば変化はないわけだ。ただ、俺には自我がないから心も感情もない。全て、俺の核にある方程式に当てはめて計算で割り出している」

レック「・・・自分以外には、自分がいなくなったことなどわからない・・・。
・・だったらどうして、ソロは・・・オレに・・・・・・・・」

ソロ「・・きっと、自分という存在のことを覚えていて欲しかったんだろう。誰にも知られずに消えてしまえば、それは誰からも忘れられたということに等しい。今までの努力も生きてきた意味も何もかも無に還る。それはさすがに耐え難いものがあったんだと思うぞ」

レック「・・・・・そう・・・・だ・・・ソロは、オレに・・・覚えていて欲しいって・・・」

そう、言っていた。

ソロ「そしてお前もそうだが、彼はこのゲームの法則を知った。
絶対に逆らえない法則を。“ソロ”は“犠牲者”としてゲームの進行を促さなければならないが、・・そのまま法則に従ってゲームを引っ張っていくにはソロは優しすぎた。
きっと途中で耐えられなくなり自分の精神が崩壊してしまうだろうと悟った時、彼は目標のために自分の感情を捨てることを選んだ。

・・・・・・彼は必死だったんだよ、レック。同じ状況に置かれているお前を顧みずに、自分だけで逃げ出すほどにな。仲間を守りたいその一心で、自分の行く末をこれっぽっちも考えていなかった。そしてレック、残されたお前がどんな思いをするのかも」

レック「・・・・・違うっ・・・・・・・・」

・・・ソロは・・・・・・オレを悲しませてしまうと、失望させてしまうと言っていた。
深く傷付けてしまうけど、こうするより他ないのだと。
ソロは自分のせいで他人が悲しんだり、傷付いたりすることが何より怖かったはずなのに。

ソロ「いや。それでも無理だったんだ。自分には、不可能。それが彼の出した結論だ。
その結果今ここに俺がいる。そして彼が戻ってくることは永遠にない。
彼の弟・・・ロベルタと同じに。消された人格という概念は、もう二度と肉体に復元されることはないからだ」

レック「・・・・・・・・・・・・・・そんな・・・・・・」

・・・もう二度と会うことも話すこともない。消えてなくなる。どこにも行かない。
ソロの言っていた言葉の意味が、ようやくわかった。

レック「・・・・こんなこと・・・・・・あっていいわけがない・・・・
・・・・・・っこんな・・・・・・・こんなことって・・・・・・・・・!!」

・・・涙というものは一度箍が外れると、心が吹っ切れて次から次へと溢れ出てくる。
それは知っていた。

でも。・・・・・・こんな短い時間で溢れ出し、ここまでとめどなく流れ続けるものだとは思っていなかった。


・・・・・ソロが、いなくなった。消えてしまった。そしてもう二度と戻ってこない。

それじゃあもうソロは、死んでしまったようなものじゃないか。

・・死んでしまったことと・・・・何が違うって言うんだ。