ドラクエ:disorder 歪みゆく英雄譚の交錯 第32話
一体何が違うって言うんだ・・・・・・・・。
レック「・・・・・・・・・・・・・・・・・う・・・ぁ・・・・っ・・・・・・」
・・・・・・・・・・こんなの・・・・・・・あんまりだ。
酷すぎる。酷すぎる。
オレは・・・・・・オレは一体どうすればいい?
お前がもういないということを、一人だけ知っている。オレだけが。
一体どんな顔をしてみんなと一緒にいればいいと言うんだ。
お前がもういないのに、オレはこの果たされなかった約束をいつまで持ち続けてればいい?
レック「・・・・っ・・・・う・・・・・・・うぁああぁぁ・・・・・・・・・・・!」
もういない。
消えて、しまった。
二度と会えない。顔を見ることも声を聞くこともできない。
なのに・・・それなのにここには、お前がいるんだ。
お前にひどく似ていて、全く違うお前が。
ソロ「・・・・・・・・・・・・・・」
・・・・・・手が目の前に伸びてきて、目の下を親指で拭われた。
そして顔を上げる前に、抱きしめられた。
ゆっくりとした動作だった。
ソロ「・・・・・・・ごめんな。突然いなくなったりして。・・悲しませてしまって。
本当に悪かったと思ってる。
でも、こうするしかなかったんだ」
レック「・・・・・っ・・・・やめろ・・・・・よ・・・・」
・・・・・・駄目だ。
ソロはもういない。いないんだ。
・・・・・勘違いしてしまう。
目の前にいるのがソロだと。いなくなってなんかいないんだと思ってしまう。
ソロがオレのそばにいるのだと・・・思ってしまう・・・。
レック「・・・・・嫌だ・・・・・・優しくするな・・・・・・!」
ソロ「いいや。今お前はこうされることを望んでる。
ソロからの謝罪と、こうしてそばにいてくれることを求めてる」
・・・・背中に手を置かれ、優しくさすられる。
胸にずきんと痛みが走った。・・・甘い、痛み。
余計に涙が出た。
ソロ「・・・・・今は俺をソロだと思っていいよ。
大丈夫、今だけはここにいるから」
レック「・・・・・う・・・・・・・・・・・・く・・・・・」
・・・・・・・・・・・ソロ。・・・ソロ・・・・・・
・・・・・・・どうして・・・・・・・・・・・・・・こんなことに・・・・・・・・・
レック「・・・・・・・・・うぅぁ・・・っ・・・・・・ぁ・・・・・・」
息が苦しい。頭が痛い。
ソロ。どうして。約束したのに。
・・・・・・・酷いじゃねえかよ・・・・・・・・こんなの・・・・・・
・・・・・寒い。体に力が入らない。
視界がぼやける・・・。
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9日目 05時29分 ―サマル―
・・・・ちょっとだけ早く目が覚めてしまった。仕方ないから何か本でも読んでいよう。
そう思って部屋の扉を開け、廊下に出た時。
サマル「・・・・あ」
・・・・ソロさんだ。・・・・でも・・・?
・・ぐったりしたレックさんを両手で抱きかかえてる。どうしたんだろう。
サマル「・・・・・・・ソロさん。どうしたの・・?」
ソロ「・・サマルか。いや・・・レックが少し体調を崩してしまったみたいでな」
・・・ボクはレックさんが心配で、ソロさんについていった。
あと・・それから少し、気になったことがあったから。
ソロ「・・・・・こいつには個人的なことでだいぶ心労をかけてしまったからな。
俺のせいで・・・・・随分と傷を負わせてしまった」
そう言うと、レックさんをベッドに寝かせその隣に座って、鏡を見た。
・・・ソロさんは無表情だったけれど、なんだかいつもとは違った。
なんて言うんだろう・・・ソロさんはいつも、色んなものを背負って、それでも決めたことのために突き進む覚悟を持っていて・・・それでいてすごく悲しそうで疲れたような、そんな目をしていた。
でも今はそれが全部抜け落ちて、なんにもすることがなくなっちゃったみたいな・・・いや、それも違う・・・・・・・・・まるで・・・・・・・・・・・・・
ソロ「・・・・・悪いことをした。自分を見紛えず生きてきた人間に、俺のことを理解できるはずがなかったんだ。無理にしようとするとこうなる。
何事もなくできたとしたら・・・・・・・そいつはイカれてる」
サマル「・・・理解して欲しかったの?」
ソロ「・・・・・・できればな。でもやっぱり無理だった。
もう諦めたさ。誰に理解されなくても、誰に許されなくても俺は自分のやるべきことをやる」
・・・・・・・・・・・そんなに、悲しいことなんだろうか。
理解したい人のことを、理解できないというのは。
レックさんは少し苦しそうに浅い呼吸をしながら、閉じた目の端から涙をこぼしていた。
サマル「・・・・・・・・ねえ、ソロさん。
ボクがもし・・・もしだよ?ソロさんのこと・・・ソロさんの気持ちが理解できたら、ボクは頭がおかしいってことになるのかな」
ソロ「・・安心しろ。お前が俺を理解できる日は永遠に来ない」
ソロさんは無表情でレックさんを見つめたまま答えた。
・・・そうだよね。
でも、そんなに心は痛まなかった。試すほどでもなかったかな。
やっぱりソロさんとレックさんの間には何か、ボクらの知らない繋がりがあるんだろう。
ソロ「・・・・・・・・・。・・・何か俺に言いたいことがあるんだろ」
サマル「・・・・・・やっぱりわかっちゃうよね」
ふふ、と笑いを漏らしたところで、部屋のドアがノックされた。
ソロ「・・・。入っていいぞ」
・・・・・・・・・・最初に姿が見えたのはロト様だった。その後ろにはアレンと、エイトさん。
その時ソロさんは鏡を一瞥すると、ロト様を見た。・・こめかみに何か細いものが刺さったような痛みが走った。
ロト「少し確認したいことがあってな。・・・・何かあったのか?」
ロト様はベッドに寝ているレックさんを見て、・・・次にボクを見た。
アレンはその視線を追って、目を見張った。
アレン「・・サマル。なんで・・・」
サマル「ちょっと個人的な相談があったんだ。レックさんも体調崩しちゃって、心配だったから」
エイトさんは何も言わずに、レックさんを見ていた。どこか申し訳なさそうに。
ソロ「・・何を確認したいって?」
ロト「・・・・ああ。この際単刀直入に言うが、・・このゲームにおいてのお前の目的は今までと同じか?」
ソロ「・・・・・・・・・・・・話が見えてこないが」
アレン「お前に限ってそれはないだろ。・・以前お前は俺たちに言った。“犠牲者”は他のプレイヤーに生き死にを左右されるが、“犠牲者”もまた他のプレイヤーの生き死にを決めることができると」
ソロ「・・言ったかも知れないな」
アレン「今までのお前の目的は俺たちと同じで、仲間同士で殺し合いなどせずゲームに立ち向かい、全員で生き残ることだった。・・・今もそれは同じかと聞いている」
ソロ「・・・・・・一部誤りがあるがそうだ。そのために俺は生きている」
アレン「・・本当にそうか?今お前が目標としているのは、また別のことなんじゃないのか?」
ロト「・・・・・」
ソロ「・・・・と言うと?」