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伝説の超ニート トロもず
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ドラクエ:disorder 歪みゆく英雄譚の交錯 第34話

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ロト「・・・・・・・ソロ。・・・・・・・・・お前まさか・・・・・・・・・・」

『・・ああ。俺は自分の体を分解した。そしてこの世界そのものも。・・・俺の手が届く範囲でな。
こうすれば負担を気にすることなくクリアを使えるから』

ロト「・・・・・・・・・・・なんてことを・・・・・それじゃお前・・・・!」

『俺はもう生き物じゃない。ただの物だ。みんなを守るためだけに存在する道具だ。
それだけを目的として、目標として存在する物。気に病むことはない』

・・・空間が歪みだし、世界が形と色を取り戻す。

やがて何もかもが元通りになった。



ソロ「そしていつしか、俺は“物”ですらなくなる。
・・・・・・“ロト”、お前と同じに」

ロト「・・・・?」

ソロは少し首を傾けた状態で目を細め、うっすらと微笑んだ。
あまりに整った人形のような顔のせいか、どこか冷たく・・不気味にすら思えた。

ロト「・・・・・・俺は生き物ではなく物でもないと言ってるように聞こえるが」

ソロ「俺なんかよりとっくの昔に、お前はそうなっているよ。
まあいい、いずれわかるさ。そしてお前の存在も俺が守る」

ソロの表情はどこか恍惚としていた。
ゆっくりとした動作で顔の前に垂れた髪をかき上げると、視線を落とし・・・
微笑みをさらに深くした。

今までよくやっていた、片頬だけを上げるあの笑み方とは違った。

これ以上ないほどに唇は半円に近い形になり、瞳が目の大半を占めるほどに目を細めて。

ロト「・・・・っ」

ぞく、と背中に悪寒が走った。

ソロ「ああ、すまん。怖がらせるつもりじゃなかったんだ。
ただ・・・注意して欲しい。俺が伝えたことでこれからより多くの事柄を忘れていくだろうが、それを怖いと思ってはいけない」

ソロは自分の右手を眺め、一本一本の指を左手でなぞった。

そして薬指の付け根を指先で掴み・・・

ソロ「そうなるべくして、なっている。すべてに理由がある。それを忘れてはいけない。
大丈夫だ」

引っ張る。

・・・指が手から外れた。

断面からは真っ白なさらさらとした砂のようなものが溢れ、下に落ち・・・空気に溶けて消えた。

俺が何も言えずにいると、ソロは外した薬指を顔の前まで上げ、口の中に放り込んだ。
そのままそれを飲み込むと、無表情に戻り――・・・・


ソロ「もうすぐだ。もうすぐで第一のゲームが終わる。
・・明日、鍵を探しに行こう、全員で。全ての条件が揃うまでは・・・」

ロト「!!」

いつの間にか、ソロは俺の真後ろにいた。

ソロ「お前の力が頼りってところもある。・・頼んだぜ」

俺に背を向けたまま、廊下を歩き出す。

ロト「・・どこに行くんだ?」

ソロ「外だ。少し調べたいことがある」

ロト「・・・・・・いいんだな」

ソロ「ああ」

ソロはそのまま向こうへ歩いて行った。
・・俺はしばらく、その場から動くことができなかった。















9日目 08時30分 ―エイト―


エイト「・・・・・・・・・」

ナイン「・・性質を変えた・・・・彼はそう言ったのですね?」

サマル「うん。だから違う人のように思えるのは仕方ないって。レックさんもそのせいで精神的に辛くなっちゃったみたい・・・」


・・・サマル君がソロさんと何を話していたのか。それが少し気がかりだった。


エックス「つくづくわかりにくい言い方するよなあ、あいつ。理解させたいのかさせたくないのかどっちなんだよ・・・」

アベル「あえて抽象的に表現することで、“情報を与える”という行為に直接該当しないようにしているんだろうね。ヒントが増えれば増えるほど、それを与える側も受け取る側も追い込まれていく仕組みになっているそうだから」

アルス「そうなの?じゃあ今までソロさんがずっと曖昧なことしか言わなかったのも・・・」

アベル「うん。・・・文学的な話になっちゃうけど・・・主部や述部を明らかにしなかったり、文章を成り立たせるのに必要な補語などを抜くと、客観的かつ厳密に見るとそれは“意味を成さない文章”になるんだ。

意味を成さないということはつまり、ばっさり括ると他者に何ら影響を与えることもない言葉・・・したがって、“独り言”としてみなされる」


・・なるほど。

普段は言葉が単語のみだったり、主部や述部が抜けていたとしても、それまでの会話の流れや身振り手振りで意味が伝わることが多く、特に支障はない。
でもこの世界の観測基準から見ると、完全ではないにせよある一定の基準を満たす程度の“文章”でなければ会話とはならない・・・そういうことか。


アベル「ソロ君はそれを利用して、意図的に“文章ではない言葉”を使っていた。そして僕らの非思考的意識・・・つまり無意識の中に影響や暗示を染み込ませることで指示を出していたんだ。

でも、その方法を使ってもやっぱり限界がある。できる限り言葉に出さずと言っても、“文章”の基準がはっきりと分かるわけじゃないからね。
そこでソロ君が次に考えたのはおそらく、こういうことじゃないかな」



――――――――――

―――――

――



アルス「・・・じゃあ、性質を変えたっていうのは・・・」

アベル「そうだねえ。指示の仕方を変えるという意味か・・・あるいは・・・」


ロト「それはたった今、本人から説明を受けた」





サマル「ロト様・・・・・説明、って・・・・?」

話が終わったのだろう。リビング入口の扉の前に、ロトさんが立っていた。

エックス「え、ソロは?」

ロト「少し外の様子を見に行くそうだ。調べたいことがあるらしい」

エックス「調べるって・・1人で行かせて大丈夫なのかよ」

ロト「大丈夫だ」


・・・ロトさんのその言葉には一切の迷いがなく、明確な根拠をもとにした結果を語っているかのようだった。


アベル「・・何かとても大事なことを聞いたみたいだね。それを僕らにも話すことを、彼は許してくれたかい?」

ロト「ああ。ただ、実際に見せることはできないらしいが・・」

ロトさんは扉を閉め、空いた席に腰を下ろした。
なんとなく視線を宙に泳がせていて・・話しながらも何か考えているように見える。

・・・確認のために、一応訊いておいたほうがいいんだろうか。


エイト「・・・レックさんが言っていたこと・・・僕は、間違ってはいないと思うんです」

ロト「・・それは、ソロがソロではない別の人物になったということか?」

エイト「はい。でもそれは彼自身が望んでしたことで・・・そしてそれは必ず、僕たちを守るという目的に基づいているはず」

アベル「・・そうだね」

エイト「つまりそれは、僕たちを守る方法を根底から完全に変え、そしてそれは自分の存在そのものさえも変えることに等しい変化・・・・」

ナイン「・・・・と、言いますと・・?」


アベル「・・それで想定できる変化の種類の中で、最も最悪なものを挙げるとすれば。

・・・・彼が僕たちを皆殺しにする、といったところかな?」


・・・僕は目を伏せた。